乾ヤスタカ|コアなバイクブログ

20歳で3年連続チャンピオン 女性バイクレーサー ベアトリス・ネイラ

女性バイクレーサー ベアトリス・ネイラ

9月18日、イタリアのムジェロサーキットで開催されたWoman European Cup SS300で、ベアトリス・ネイラ選手が2022年のタイトルを獲得しました。

女性レーサー チャンピオン

Woman European Cup SS300において、2020年、2021年、2022年と3年連続シリーズチャンピオンとなった。

日本語サイトが存在しないため、筆者が独自に翻訳(意訳)しています。できる限り正確性を求めて書いているつもりですが、見落としや、誤りがある可能性があります。その節はご容赦ください。

目次

Woman European Cup SS300とは?

日本語に訳すと「女子ヨーロッパカップ スーパースポーツ300」。

2020年から新設されたレースカテゴリのようです。

イタリアロードレース選手権(Campionato Italiano Velocità 通称CIV)の中で開催され、女性のみでおこなわれるロードレース選手権としては、ヨーロッパ初となります。

レースをご存じない方のために解説すると、日本も海外もレースは通常、男性・女性の混走です。

しかし体力的に不利なため、女性のみで競うレースが新設されることがあります。

女性ライダーの中には「男性も女性も関係ないことを証明したい。女性だけのレースで勝っても意味がない」と考える人もいます。

また日本のように競技人口が少ない場合、女性に限定すると参加者が足りず、レース運営が困難になるため、なにが最適化かの判断は参加するライダー自身に委ねられるでしょう。

2022年のエントリー数は21名。

開催国がイタリアのため、エントリーはイタリア人ライダーが中心ですが、スペインやアメリカなど、10カ国以上のライダーが参戦しています。

参加車両は300ccから、400ccまでの市販車(公道用バイク)。

レギュレーションは読んでいませんが、おそらく、イタリアロードレース選手権の「SuperSport 300」クラスに合わせているものと思われます。

実際にはYZF-R3(ヤマハ)、Ninja400(カワサキ)のほぼ一騎打ちで、ほかにはRC390(KTM)が参戦しています。

レースカテゴリの解説はこれぐらいにして、ネイラ選手の話に戻りましょう。

ベアトリス・ネイラ・サントス(Beatriz Neila Santos)

ベアトリス・ネイラ・サントス
2011年

ベアトリス・ネイラ選手は2002年4月15日生まれ、スペインのマドリード出身。

ネイラ選手の両親は、アマチュアとしてバイクに乗っていて、年に2,3回、友人と一緒にサーキットを走っていた。幼少のネイラ選手も一緒にサーキットで週末を過ごし、「楽しみだった」と振りかえっています。

スペインから世界へ

スペイン国内でレースキャリアを構築したネイラ選手は2016年、ついに世界選手権へと通じるキップを手にするチャンスを掴みます。

Red Bull MotoGP Rookies Cup(レッドブル MotoGP ルーキーズ カップ)2017年への参戦です。

ベアトリス・ネイラ・サントス KTM
KTM RC250RBR(4ストローク250cc単気筒)を駆るネイラ選手

レッドブル MotoGP ルーキーズ カップは、世界グランプリ経験のない新進気鋭の若手ライダーたちが競うロードレース。2007年に創設され、多くのルーキーが2輪世界最高峰ロードレースMotoGPの「Moto3」クラスに進出しています。

野球に例えると、プロ野球選手になるために甲子園野球の名門校へ入学するようなものでしょうか。

(Moto3に参戦中の佐々木 歩夢選手は、レッドブル MotoGP ルーキーズ カップ2016年チャンピオンです)

順調にレースキャリアを登っていくかに思えたネイラ選手ですが、2017年シーズン開始前に怪我を追います。

ベアトリス・ネイラ・サントス 怪我
2017年4月16日 Facebookより

復帰後も、怪我の影響によりシーズンを通してパフォーマンスが妨げられることになりました。その結果、翌年2018年のルーキーズカップのシートを失う事になります。

心機一転

2018年は、スペイン国内で開催される「Spanish National R3 bLU cRU Challenge」(詳細は不明ですがヤマハ YZF-R3のワンメイクレース)に、BCD YAMAHA MS RACINGから参戦。

ランキング2位という好成績を残します。

同じく、スペインで開催されたCEV RFME Supersport 300では、3回表彰台に上ってランキング4位。強敵カワサキの包囲網の中、ヤマハの総合トップとして活躍しました。

2019年はスーパーバイク世界選手権(市販車でおこなわれる世界最高峰レース)のWSSP300クラスに参戦。エントリーライダー41人中、ランキング21位でシーズンを終えます。

またこの年、ネイラ選手は世界で活躍できるライダーを養成するプログラム「Yamaha VR46 Master Camp」に参加。

このプログラムでは、バレンティーノ・ロッシみずから、若手ライダーたちを育成します。

バレンティーノ・ロッシ
イタリア出身。1996年-2021年(17歳-42歳)までロードレース世界選手権ライダーとして活躍し、複数のクラスで世界チャンピオンを獲得。2021年に引退して、現在は四輪レースに参戦している。

ロードレース世界選手権のタイトル 9回
MotoGP 2009年、2008年、2005年-2002年(4年連続)
500cc 2001年
250cc 1999年
125cc 1997年

以下、ネイラ選手のコメントです。

「VR46 Academyの強い選手たちと一緒に1週間を過ごすことができるなんて、私にとっては非常にすばらしい経験であり、また短期間で多くを学べる貴重なチャンスです。これからはじまるトレーニングの成果が、チャンピオンシップのなかで間違いなく生かされることになると信じています。ヤマハとVR46によるMaster Campは私たち若いライダーたちにとって、夢を実現するための大きな助けになります。この機会を与えてくれたヤマハに感謝し、チャンスを最大限に生かせるようベストを尽くし、次のレースで好成績を目指すべく、しっかり準備したいと思っています」

https://race.yamaha-motor.co.jp/sp/vr46ra/jp/

女子ヨーロッパカップSS300

くわしい経緯はわかりませんが、ネイラ選手は2020年に新設されたWoman European Cup SS300へとステージを変えて走ります。

Woman European Cup SS300最初のシーズンのエントリーライダーは19名、全5戦でタイトルが争われました。

ベアトリス・ネイラ・サントス Woman European Cup SS300 2020年

ネイラ選手は初戦からポールポジションを獲得、決勝では女子ヨーロッパカップSS300初の優勝者となりました。

YZF-R3 Woman European Cup SS300 2020年
ネイラ選手 36 YZF-R3
ベアトリス・ネイラ・サントス Woman European Cup SS300 チャンピオン

開幕から4連勝、最終戦は3位でフィニッシュ。Woman European Cup SS300最初のシリーズチャンピオン(18歳)として歴史に名を残しました。

法学生ライダー

ところでネイラ選手、レースだけでなく、学業にもしっかり取り組んでいます。

ベアトリス・ネイラ・サントス
2020年7月21日 Facebookより

「全てのテストに合格したので、大学に入学することを発表できます!!」と報告。フォロワーからの質問に対して、「大学では広告と法律を学びたい」と回答している。

Moto3参戦中のスペイン人ライダー アナ・カラスコ選手も、大学に進学していたと思います。今どきの若い世代は、リスクヘッジをするものなのでしょうかね。

ちなみにネイラ選手は2018年に

「一般的に、すべての科目は私にとって興味深いものですが、数学と英語の方が好きです。」

「スポーツを練習するために水泳が好きで、家族と特に兄弟と一緒にトレーニングに出かけます」

と話していました。

ベアトリス・ネイラ・サントス
ベアトリス・ネイラ・サントス フラットトラック

フラットトラック(ダートトラック)でのトレーニングは、もはやスタンダードと言っていいかもしれない。

ベアトリス・ネイラ・サントス

1ポイント差のライバル出現

2年目となる女子ヨーロッパカップSS300。

ディフェンディングチャンピオンのネイラ選手は追われる立場になります。ライダーのエントリー数は19名から26名に増え、レースは全5戦から全7戦に増えました。

激しいポイントランキング争いの結果、わずか1ポイント差でネイラ選手が2度目のシリーズチャンピオンに輝きました。

ベアトリス・ネイラ・サントス 2021年チャンピオン

2021年シーズン、1ポイント差の激戦を繰り広げた相手はサラ・サンチェス選手。

サンチェス選手はスペイン バルセロナ出身、1997年11月19日生まれ。

くわしいレースキャリアは不明ですが、サンチェス選手は2022年、メキシコシティで開催されたイベント「IBEROAMERICAN FEMALE CCR UNIBRAND CHAMPIONSHIP」(イベロ・アメリカン・スピード・チャンピオンシップ)に出場。

イベロ・アメリカン・スピード・チャンピオンシップ2022年
https://prensarfme.com/

参加者は女性のみとなり、エントリー数は23名、ワンメイクレース(全員が同じバイクで競争する)です。

サンチェス選手は走ったことのないサーキットで見事、優勝しています。

サラ・サンチェス イベロ・アメリカン・スピード・チャンピオンシップ2022年
サラ・サンチェス選手

Woman European Cup SS300 2022年

コロナ禍の影響もあったのだろうか、エントリー数は21名と若干ながら減少。

しかし、レースは全7戦から、さらに増えて全9戦に。

ネイラ選手は全9戦中4勝、201ポイント。2位との差9ポイントで、3年連続チャンピオンという偉業を成し遂げた。

Woman European Cup SS300 YZF-R3
最終戦 ムジェロ フィニッシュの瞬間
ベアトリス・ネイラ 女子ヨーロッパカップ2022
ベアトリス・ネイラ 女子ヨーロッパカップ スーパースポーツ300

2022年シーズン、最大のライバルとなったのがサラ・サンチェス選手。ポイントランキング上は、サンチェス選手とネイラ選手の一騎打ちとなりました。

最終戦ムジェロのレース1では、サンチェス選手が勝利して、ネイラ選手は2位。

Woman European Cup サンチェス・サラ NINJA400
KAWASAKI NINJA400
サンチェス・サラ Woman European Cup SS300
サラ・サンチェス選手

ムジェロ レース2で、ネイラ選手が1位フィニッシュでシリーズタイトルを獲得。サンチェス選手は2位でフィニッシュし、ポイントランキング2位でシーズンを終えました。

ベアトリス・ネイラ 女子ヨーロッパカップ スーパースポーツ300
ネイラ選手 36
ベアトリス・ネイラ YZF-R3
女子ヨーロッパカップ スーパースポーツ300 2022年

今後のネイラ選手と、Woman European Cupがどうなっていくのか、楽しみです。

ベアトリス・ネイラ選手 Facebook

ベアトリス・ネイラ選手 Instagram

参考・引用元

あの時の!

私が最初にベアトリス・ネイラ選手を知ったのは、Yamaha VR46 Master Campについて、調べていた時です。

その時はネイラ選手について、あまり詳しい情報が得られなかったので、単に女性ライダーの一人だという認識でした。現在進行系でどんなレースに出場しているとか、わからなかったんですね。

ところがつい先日、Instagramで「女性のチャンピオンが誕生した」「3年連続チャンピオン」という情報があって、よく見ると、ネイラ選手でした。

「あー、あの時の!」という感じでした。

3年続けてチャンピオンを獲るということはすごいことだし、あらためて調べてみると、これまでのネイラ選手のキャリアについて情報が得られたので、こうして私のブログで紹介することにしました。

日本人女性レーサーが世界選手権を走る日

日本でも女性ライダーが増えているし、女性レーサーも昔と比較して、増えていると思います。

いつの日か、日本人女性のレーサーが世界選手権を走る姿を見てみたいものです。

これは私の勝手な妄想ですが、日本にいると、どうしても国内だけに意識が向きがちだと思います。バイクレースだけに限らず、自分の周囲だけを見ていると、世界観が固まってしまうのです。

そうすると、人間の可能性ってどんどん小さくしぼんでいきます。

ところが海外に目を向けると、日本以上に活躍している人がいたり、なかなか日本だと出てこないような考え方が発見できたりします。

「こういうやり方があるのか」

「こういう人がいるんなら、自分にもできるんじゃないか」

そういう気づきが得られると、人って希望が見えてくるんですね。マインド(思考)が新たにセットし直されると、今までとはちがった成果が出るようになります。

思考→感情→行動・発言→結果の順番です。

逆にいうと、「どうせ無理だろうな」「無理かもしれない」と心のどこかで思っているうちは、自力で壁を突破するのは至難の業です。

「パンを小さな容器で焼くと小さく膨らむ。大きな容器だと大きく膨らむ。」
三谷幸喜(脚本家)

たとえば受験勉強で、親にも学校の先生にもバカにされてきて、自分でも「俺(私)は勉強が苦手」と信じ込んでいる子がいたとします。

結論から言って、どんなに有名な塾に通ったところで成績は上がりません。

しかし、親は「成績が上がらないのは原因は塾のせいだ」と考えるため、子どもを次々とほかの塾に通わせます。

子どもはどんどん自信を失い、やる気を失っていきます。

無気力状態の小学生、中学生もめずらしくないのです。

このような状態で「やる気を出せ」などとプレッシャーを与えたり、授業や宿題を出したところで、成績が上がるはずがありません。

まさにがっつりブレーキをかけた状態で、アクセルを開けているようなものです。(前に進まない)

ところが、まず「思考」を変えてあげると、たとえスマホゲーム中毒の子どもでも、勉強嫌いの子も、別人のように勉強するようになります。

信じられないかもしれませんが、親にガミガミ言われて、嫌々勉強するのとちがい、自ら積極的に勉強することが習慣になるため、自然と成績が上がります。

こどもたちの中で、優先順位がゲーム > 勉強から、ゲーム < 勉強に変わるので、親はスマホを取り上げる必要がなくなるのです。(勉強や成績で親子げんかしなくてすむ)

これは机上の話ではなくて、小学生低学年から高校生を対象に実践して、実際に成果として出ている現実の話です。

合格率100%

私自身はふだん成人した大人を対象にしているため、子どもたちを教えている人(教師・講師)に私のメソッドを指導して、試してもらいました。

さらに、このメソッドを学習塾の講師(アルバイトの大学生)たちに実践してもらったところ、同じように子どもたち全員の成績が上がりました。受験生に関しては合格率100%という結果になっています。

(どちらかといえば、もともと勉強嫌いで親に無理やり塾に通わされている子たちです)

年齢や性別、職種や業種は関係ないのだと、あらためて実感しました。

誤解のないように言っておくと、自分の身近にお手本となる人がいたら、日本人でも構いません。

遠くから見てあこがれる対象ではなく、自分も同じ領域まで到達しようと思える存在。

ただ、統計的に見て、なかなかそういった恵まれた環境にいない人のほうが多いと実感しています。なので、もし手詰まり感、行き詰まりを感じているなら、自分がふだん慣れ親しんでいる人・情報・場所から離れてみる。

ズームアウトして、ほかのことに触れたり、目を向ける。その一つの例が、世界だという話です。

バイクレース世界チャンピオンになるための入り口

バイクレースに話を戻しましょう。

先日、名阪スポーツランド(奈良県)でおこなわれた全日本モトクロス選手権シリーズに、AMA(全米)モトクロス選手権に参戦中の下田 丈選手が出場しました。

https://www.kawasaki-cp.khi.co.jp/msinfo/ama_sx_mx/index.html

筆者はたまたまYouTubeライブ配信でレース2を見ていたのですが、エントリーライダーの中で最年少(20歳)にもかかわらず、ほかのライダーとはまったく別次元の走りを披露していました。

スタート後、下田選手は1位を走っていたのですがコースアウトしてしまい、最下位の35位に転落。しかし、その後、猛烈な勢いで順位を上げ、わずか12分程度で1位を奪い返すと、そのままフィニッシュ。

「全日本と全米トップクラスの選手では、ここまで差があるのか・・」と驚いたものです。

ちなみに、下田選手は三重県鈴鹿市出身、家族で現在住んでいるアメリカ カルフォルニアに移住したそうです。

(くわしくはのちほど)

ほかにも、ロードレースだと、Moto3参戦中の佐々木 歩夢選手や、Moto2参戦中の小椋 藍選手が、ネイラ選手で紹介した「レッドブル MotoGP ルーキーズ カップ」に出場し、世界選手権への切符を手にしています。

一般的にスポーツは、おおまかに地方選手権→全日本選手権→世界選手権という流れがあると思いますが、現在のバイクレースは全日本選手権から世界選手権へ・・・という時代ではなくなってきています。

ヨーロッパ圏外で育ったライダーがヨーロッパに適応するためには何が必要ですか?

アジアとヨーロッパの文化は異なりますので、アジア出身のライダーには少し不利ですね。異なるサーキット、舗装、思考スタイルに適応する必要があります。ヨーロッパは全てが異なりますが、それを学ばなければいけませんし、適応するための時間も必要です。

だからこそ、私たちはアジア出身の若手ライダーを早くからスペイン選手権やMoto3に送り出すことを重要視しています。海外へ出る時期が早いほど、短時間で学べます。

青山博一(ロードレース世界選手権250cc 2009年チャンピオン)

https://www.redbull.com/jp-ja/how-to-make-it-as-a-pro-motorcycle-racer

もし、本気で世界を目指すのであれば、どうすれば世界選手権に出場できるのか、道筋をしっかり調べておくことが重要です。

さきほどの、下田丈選手のエピソードが良い例になると思います。

モトクロスで世界の頂点を目指して家族でアメリカへ移住

そんな下田ファミリーは、プロへの登竜門=ロレッタリンという流れを知り、モトクロスをするのに最適な南カルフォルニアに家を持ち、将来トップライダーとなる現地の少年たちと同じように暮らし、同じようにバイクを揃え、同じように練習やレースをする生活を選びました。

https://bike-news.jp/post/273865

「現実的にAMAでチャンピオンになるためには何が必要か?」

具体的なステップや、必要なリソースを知ることは重要です。何もわからなければ、戦略も立てられませんからね。

(戦略がイメージしにくい人は、作戦と読み換えてください)

がむしゃらに努力して、望ましい結果が得られれば美談になりますが・・・現実にはごくまれなケースです。実際は、やみくもに努力しても思うような成果が得られず、途中で挫折したり、軍資金が底をついてリタイヤすることがほとんどだからです。

もちろん99%のうち、1%ぐらいの人は、がむしゃらに努力してうまくいったのかもしれません。

ただ、そういった特殊なケースに自分を当てはめようとするのは、失敗するリスクのほうが高いと思います。

たとえば筆者の場合、自分の事を凡人以下だと思っているので(最終学歴は中卒。学校の成績が良かったことはなく、底辺の学校で成績も底辺だった)、「凡人の自分が非凡な成果を出すためにはどうすればいいか?」を常に探していました。

アメリカでは、ストッククラスとモディファイクラス(チューニング)という風に、同じ車種ごとにふたつのクラスがあるのが普通で、下田ファミリーは丈くんのために、バイクをストック本番車とスペア、モディファイ本番車とスペア、ストック練習車とスペア、モディファイ練習車とスペアという形で、8台用意したそうです。

 それが、アメリカのトップライダーを目指す子どもたちにとっては普通のことでした。

当然、そのバイクを整備するには専任のメカニックが必要ですし、さらに有名なレジェンドライダーのコーチもつけました。必要なものは全て揃えるとお金がかかるという話になりそうですが、それもすべて下田ファミリーと丈くんの「絶対にAMAのチャンピオンになる」という本気の覚悟を決めたことからスタートしており、感銘を受けます。

https://bike-news.jp/post/273865

下田選手一家のエピソードには、いくつかの大きなヒントがあります。

1:必要なプロセスを知る

さきほどお伝えしたように「AMAでチャンピオンを獲る」と決めたら、次にすべき事は「どうすればたどり着けるのか?」具体的なプロセス、道筋をリサーチすることです。

たとえば、もし私がバイク少年だったら、(英語が話せない場合、翻訳サイトを使って)AMAチャンピオンにコンタクトをとり、アドバイスがもらえるようアプローチします。

ほかにもAMAに直接、質問するとか、MFJに聞くとか、日本人でAMAに参戦しているライダーを探して教えてもらうとか、インターネットがある現代なら、いくらでも方法はあると思います。

ヒント:どんな手順か? どんなリソース(資源)が必要か? 知っていそうな人はだれか?

たとえば初めて料理を作る場合、調理方法も材料もわからないわけですから、レシピを見たり、動画を見て調べると思います。我流で作ると、多くの場合、似て非なる謎の料理が完成します。

多くの人が、これと同じ失敗をしてしまいがちです。

必要なプロセスを知るというのは、勉強や資格取得、仕事など何をするにも重要です。

よくわからないまま自己流でやるんじゃなくて、まずリサーチする。ひととおり概要をつかんだら、次に逆算して、いますぐやるべき事に取り組む。

相川七瀬さんのインタビュー記事が参考になると思います。

2:エキスパートを雇う

ここではとくに、日本ではほとんど理解されていないコーチの役割について説明します。

スポーツ選手、とくに世界トップアスリートや、オリンピック金メダリストには世界トップクラスのコーチがいます。


教育現場で起きているリアルな話

私の言うコーチとは、たんなる肩書きや、技術やノウハウを教えるコーチではなく、選手が本番で100%のパフォーマンスを発揮し、自らの目標や夢を実現するスキルを習得できるよう指導するコーチのことを指します。

(というのも世界トッププレイヤーである選手に対して、コーチが教えられる技術などほぼ、無いからです)

学習塾で例えると、数学や英語など教科を教えるスキルと、生徒さんの才能を引き出し、自然と成績が上がるようにするスキルはまったくの別物です。

実際、学習塾の現場でも、高学歴の先生や、講師(多くがアルバイトの大学生)ほど、生徒さんに教えるスキルが低い傾向にあります。なぜなら、高学歴の講師自身はそれほど苦もなく勉強ができるため、勉強のできない生徒さんの気持ちが、理解できないのです。

よくあるのは、講師自身がうまくいったやり方を生徒さんにやらせる→
うまくいかない(成績が上がらない)→
お手上げ状態になる→
生徒さんのせいにする(ディスったり、怒ったりする)というパターン。

いずれも複数の大手有名塾で、実際に起きている話です。

一般的に「高学歴の先生に教わったほうが成績が上がりそう」というイメージがあると思いますし、塾側も講師の高学歴を売りにして、宣伝します。

ただ、現実とは大きくかけ離れているという事です。

スポーツも同じで、優れた名プレイヤーが、優れたコーチになるとは限らないですし、天才ピアニストが、天才ピアノコーチになるとは限らないのです。

世界的に見て、教え方(伝え方ではない)は100年前とほとんど変化していないと言われるほど遅れています。

スポーツに限らず、AmazonやGoogle、アップルなど、世界的な大企業の経営者にもコーチがいます。

つまり、非凡な成果を出し続ける人には理由があって、人より能力が優れているというより、早い段階から自分の才能を見抜き、能力を引き出してくれるコーチをつけていた、という事があげられます。

(コーチじゃなくても、コーチと同じような関係性の人物が周囲に存在したというエピソードは数え切れないほどあります)

成長するスピードが早くなるし、成果もついてきますから、自分に対する自信も持てるようになります。

逆にいうと、完全に一人ぼっちで、並み外れた成果の出せる人は1000人に1人とか、1万人に1人以下の超天才だと思います。たしかにすごいし、尊敬しますが、すごすぎて参考にならないと思います。

筆者は自分を凡人以下だと思ってるので、その分野でトップの先生から学ぶようにしています。

優秀なエキスパートのえらびかた

・最低10年はその分野で成功し続けている
・「専門知識×相手のポテンシャルを引き出す技術」両方のバランスを見る
・現在進行系で進化し続けている
・誠実であること
・人間性とスキルの両方を兼ね備えている(いい人だけじゃダメ)
・思考、感情、行動、発言が一致しているかどうか

すべてを満たす先生を見つけるのはむずかしいですが、できるだけバランスの取れた人物を見つけるといいです。

3:100%コミットメント

下田選手一家のエピソードにあったように、いろいろとリサーチを進めるうちに、壁に当たることがあります。

アメリカに移住するとか、バイクが複数台必要とか、メカニックやコーチを雇わないといけないとか、当初は想像していなかった事が、次から次へと出てきます。

一般的に大きな成果を得ようとするほど、大きな犠牲が必要になります。

現状の自分のレベルで実現可能なことではなく、さらなる高みに自分を近づけようとするわけですから、そう簡単にいかないのは自然なことです。

「それでも続けるか? それとも辞めるか?」

これは試練のようなもので、私たちは常に試されています。

大きな怪我や、病気をしたときや、自分よりも優れたライバルの実力を見せつけられた時、めいっぱいやれることは全てやったけど、散々な結果に終わった時・・・バイクに限らず、日常的にあると思います。

たとえばビジネスなら、家族が起業に反対しているとか、応援してくれないとか、従業員がいう事を聞いてくれないとか、挙げればキリがないほど、いろんな壁、問題が出てきます。

逆に無限に軍資金があるとか、時間があるとか、何もかもそろってる人のほうが少数派というか、うまくいかない事の方が多いです。

なにかしら不利なこと、ハンディがあったとしても、どうにかしてそれを乗り越える。

全てを受け入れた上で、「どうすれば可能になるか?」を考える。

そういう覚悟や執念がないと、アイデアも生まれないし、工夫もしない。待ちの姿勢、受け身になりがちで、自分から積極的に動こうとしなくなります。

筆者はこれまで1万人ぐらいの人をウォッチしていますが、いまのところ例外はありません。

目の前にチャンスが転がっていても、チャンスを逃してしまう。たとえ優秀なコーチをつけたとしても、自分のコミットメントが100%でなければ、望ましい結果は得られないと実感しています。

「なにごとも厭(いと)わずに100%取り組む」

「言い訳をしない」

理屈でわかったつもりでも、いざ実践するとなると、自分ではできない人のほうが多いようです。

これは「がんばろう」と唱えたり、一時的にモチベーションを上げてどうにかなるレベルの話ではないので、やはり根底の思考を変えていくほかありません。

ある意味、コミットメントを引き出すのもコーチ(広い意味では指導者)の役割のひとつです。

事例1:受験生と親

学習塾でせっかく成績が向上しても、家庭でぶちこわしになる事がけっこうあります。

というのは、親が子どもの受験に対して、コミットメントしていないからです。

「勉強するのは本人で、成績を上げるのは塾の仕事。自分たち(親)には関係ない」このような考え方を親が持っていると、意図せず子どものやる気を失わせ、結果として足を引っぱることになります。

下田丈選手の話ではありませんが、受験生には両親はもちろん、兄弟がいる場合は兄弟ふくめて、家族全員の協力が必要です。

逆にいうと、親が食事に気を遣い、掃除、身の回りのことをサポートして、子どもは家でひたすら勉強するだけという環境だと、めざましい成果を上げることができます。

ある意味、受験はチームプレイであり、チーム全員がコミットしている必要があります。

余計なアドバイス

学習塾業界でも近年、受験コーチや、学習コーチといった名称を使うことが増えてきた。しかし、実態は名ばかりのコーチで、従来型の指導方法となんら変わらない事がめずらしくない。

本当に優秀なコーチを見つけることは困難だが、もし、運良く良いコーチ(あるいは先生)を発見できた場合、子どもへの指導方法について、親が口を出さないほうがいい。私の知るかぎり、100%うまくいかないからだ。

もし、親の言う指導方法が的を射てるなら、自宅学習で子どもの成績が上がっているはずだ。そうじゃないから、プロに依頼する。だったらプロに任せて、余計な口をはさまないこと。

数万人の子どもを教えているプロコーチいわく「親が出てくると決まってうまくいかない」そうだ。

(学習塾にかぎらず、スポーツなど習い事全般に言えること)

事例2:中卒が1ヶ月半で国家資格に合格

現代ではインターネットや、学習をサポートしてくれるアプリが存在します。そういったものが一切ない世界をイメージしてください。

ググることも、LINEやSNSで人に聞くこともできません。

「もし、自分だったらどうするか?」想像しながら読んでいただくと、ヒントが得られると思います。

ある20歳の男性が、会社の業務で宅建(宅地建物取引士)の資格を取ることになりました。

決断したのは8月の中旬、試験は10月の第3日曜日。試験まで約1ヶ月半しか時間がありません。

宅建合格に必要な学習期間は平均で6ヶ月、最短3ヶ月と言われています。実際には1年以上勉強して、何年も不合格になっている人もいました。

それまでろくに勉強したことがない男性は、勉強方法もわからないし、アドバイスしてくれる人は一人もいません。

もし、あなただったらどうしますか?

「合格するためにもっとも重要なことは何か?」

男性は良いテキスト(参考書)を見つけることだと考えました。学校の教科書のような難解でつまらない内容では到底、自分には理解できないと思っていたからです。

住んでいた地域のすべての大型書店に足を運び、全ての参考書を吟味しました。

結果、合格するために必要な考え方が書いてある参考書を発見しました。

選んだ参考書には、学習方法や、過去問や模試を得場合のポイント、試験当日や、試験間近の心構えなど、男性にとって必要な情報がわかりやすく網羅されていました。

(著者は毎年、みずからも宅建試験を受験し続けている実務家でした)

準備が整ったところで、受験勉強がスタート。

ただ、通常のペース配分では試験に間に合わないので、仕事をしている時間、睡眠時間、食事、シャワーを浴びる時間をのぞいて、全ての時間を勉強にあてました。

せっかく購入した大型バイクも、受験に専念するため売却。

天気予報以外でテレビを見ることもやめました。

いかに効率よく仕事をするか、睡眠のとりかた、食事、勉強時間のタイミング・・・あらゆることを毎日、試行錯誤しながら、もっとも効果的な生活サイクルを求めていきました。

すべてが受験勉強中心の生活になっていたのです。

進展のないまま迫る試験日

大の苦手だった暗記で壁に当たり、なんの成果も得られないまま、一週間、二週間が過ぎていきました。

一週間後には試験本番です。

男性は諦めそうになりましたが、会社の先輩や上司は応援してくれているし、自分から投げ出したくないと考えました。好きなアスリートの言葉を思い出し、冷静さを取り戻しました。

試験本番。結果は37点で合格。

自己採点では皮肉なことに、最も苦手だった暗記の分野で高得点を取っていたことがわかりました。

ネタばらしすると、この男性はむかしの私。もちろん実話です。

当時は、現在のように体系立てて物事を理解していませんでした。それでも、プロセスを調べたり、その道のエキスパートを見つけたり、マインドの使い方を身につけることが重要だと、直観的にとらえていました。

自分の中で受験はゴールではなく、通過点であり、目的はもっと先にありました。100%コミットメントは、べつの角度から言うと、明確な目的意識を持つことでもあるのです。

目的が明確だと、日々の勉強に対しても目的を持って取り組むようになります。だから消化試合のようにはなりませんし、「どうすればもっと良くなるか」自分で考え、工夫するようになります。

それを毎日毎日、繰り返すわけですから、成果が出ないはずがないのです。

(これは子どもの勉強意欲を自発的に上げる場合にも、全く同じことが言えます)

ちなみに、同じアプローチをコーチがオリンピック選手に対しておこなっていて、まず最初に「金メダルが獲りたかったら金メダルをゴールにするな」と指導します。

当時はトップアスリートや、トップミュージシャンから学んだ事を応用して、自分なりに実践していました。

振りかえると、こうした様々な経験が、現在の実務に役立っていると実感しています。

(まだまだ話は尽きませんが、長くなったのでこれぐらいにしておきます)

さいごに

バイク乗りの方も、そうでない方も、若年層から親御さん世代まで、いろんな方々が応用して活用できるよう書いたつもりです。

すこしでもヒントが得られたら、ぜひ日常生活に取り入れて、試してみてください。

読んで、知っただけでは3日も経てば忘れてしまいます。読む時間がもったいないだけです。ですが、自分が経験したことは忘れなくなります。

1ヶ月で1つマスターしたとしても、12ヶ月あれば12個も新しい事をマスターすることができます。

焦らず、取り組んでみてください。

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