乾ヤスタカ|コアなバイクブログ

CBR250RR MC22 エンジンオーバーホール

CBR250RR MC22 エンジンオーバーホール

有限会社ガレージ湘南でおこなったCBR250RR MC22のエンジンフルオーバーホール。

その様子を撮影した記事です。

目次

本記事の目的

「エンジンのOHってどんなことをするんだろう」という方や、「自分では分解できないけど、自分のバイクのエンジンの中を見てみたい」といった方向けの記事です。

私のスケジュールの合間をぬって撮影したため、ダイジェスト版になりますが、参考になればうれしいです。

概要

CBR250シリーズは、初期型はCBR250Four(MC14)で、1986年に発売されました。

まさにバイクブームのまっただ中に登場し、翌1987年にはCBR250R(MC17)となり、1988年にもモデルチェンジされ、MC19となりました。

1990年に直4CBR250RRの最終型となる「MC22」にモデルチェンジされ、2000年をもって生産終了を迎えました。

今回、エンジンをオーバーホールしたのは最終型のMC22です。

1,エンジン分解

では、早速スタート。

まずはカウル、シート、ガソリンタンクなどを取り外し、エンジンを降ろします。

その後、分解し、シリンダーから上(いわゆる腰上)と、トランスミッションなどがある腰下に分けます。

CBR250RR MC22 シリンダーヘッド
シリンダーヘッド
CBR250RR MC22 シリンダー 燃焼室

シリンダーヘッド。いわゆる燃焼室です。写真では取り外してありますが本来、真ん中の丸い部分にプラグがあります。

プラグの火花で混合気(ガソリンと空気)に着火して、爆発が起きて、バルブが開閉します。

バルブの色が違ったり、1番と2番はバルブに凸凹があるのがわかるでしょうか。

バルブの凹凸はカーボン(燃焼不良によるスス)です。少々のカーボンは問題ありませんが、写真のように層になっていると、あまり燃焼状態が良くないという事になります。

筆者は原付からリッターバイクまで、30基超のエンジンオーバーホールに立ち会ってきました。

よくあるケースとしては、ふだんあまりエンジンを高回転まで回さない方、あるいはリッターバイクなど、高回転まで回すことが困難なバイクだと、比較的、カーボンが溜まっていることが多いです。

50ccのカブでも、マフラーがカーボンで詰まっていた事がありました。

また、使用しているエンジンオイルや、エンジンオイルの交換頻度もエンジン内のコンディションに関係してきます。

通常、シリンダーヘッドを面研しますが、カムギアトレイン車のためおこなわず。

2,洗浄

分解した後は、各部の洗浄をおこないます。

エンジンOHにかかる時間のうち、シリンダーに費やす時間の次に手間がかかるのが、洗浄です。

CBR250RR MC22 ピストン カーボン
CBR250RR MC22 ピストン
どの気筒かわかるように印を付けてあります
CBR250RR MC22 ピストン ブラスト
MC22のピストンは純正廃盤。再利用可能でしたので、ピストンリングのみ交換です。
CBR250RR MC22 バルブ

バルブの周囲にカーボンがこびりついています。

カーボンなどの異物があると、バルブがしっかり閉まらず、燃焼不良になります。(カーボンが噛む、と言います)

検証したところ、サラサラの砂ぐらいの大きさのものが、ほんの少しバルブとバルブシートの間に入っただけで、バルブが密閉されず、圧縮が抜けてパワーダウンしてしまいます。とてもシビアです。

カーボンを綺麗に落とすと同時に、エンジンカバーなどに付着したガスケットも綺麗に取り除きます。

ここで手を抜いてしまうと、せっかくのオーバーホールが台無しです。

日向社長いわく、現ヨシムラ・ジャパンの創業者 ポップ吉村氏も「(ガスケット剥がしは)手を抜いちゃダメだぞ!」とよく仰っていたそうです。

吉村 秀雄(よしむら ひでお、1922年10月7日 – 1995年3月29日)は、オートバイ部品・用品メーカーヨシムラジャパン創業者。オートバイチューニング技術者。「おやじ」を意味する「POP(ポップ)」あるいは「ポップ吉村」の愛称でも知られる。

車両の製造・販売でなく、性能向上のための加工を行うチューニングをいち早く始め、世界で初めて集合管を開発した三菱重工業。大手メーカーでない事業規模の小さいプライベーターとして活躍し、1970年代の耐久レースで「無敵艦隊」と謳われる程の成績を収めていた本田技研工業を相手に勝利するなど、1960年代から1980年代の日本のモーターサイクル発展期において様々な実績を残し、日本人として本田宗一郎と並びAMA殿堂入りを果たした。

Wikipedia

3,各部チェック

部品を総取っ替えするオーバーホールなら、話は簡単なのですが、廃番部品が多かったり、予算をおさえてOHする場合は、部品の再利用が可能かどうか、慎重に見極めなければなりません。

そのため、サービスマニュアルなどを参考に、基準値の範囲内かどうかを測定します。

CBR250RR_MC22 クランクシャフト
コンロッド(上)とクランクシャフト(下)

また同時に、分解した各部品の状態もチェックします。

CBR250RR MC22 シリンダー錆
シリンダー内に錆がありました。4ストではめずらしいことです。
CBR250RR MC22 シリンダー
下からシリンダーをのぞいた状態。幸い使用上、問題ないレベルの錆でした。
CBR250RR MC22 シリンダー
シリンダー。溝のような部分にクーラント(冷却水)が通ります。
ギア部分はとくに、偏摩耗や異常はみられませんでした。
CBR250RR MC22 トランスミッション
トランスミッション(変速機)
CBR250RR MC22 トランスミッション シャフト
CBR250RR MC22 トランスミッション ベアリング

気づきましたか?

CBR250RR MC22 エンジン組み立て5

やたらと、ケースにひび割れみたいなシワが入っています。

CBR250RR MC22 エンジン組み立て3
CBR250RR MC22 クランクメタル
CBR250RR MC22 クランクシャフト
(上)トランスミッションと(下)クランクシャフト
CBR250RR MC22 コンロッド
(上)コンロッドと(下)トランスミッション

隅々までMC22のエンジンを見てわかったことですが、全体的にエンジンのケースがザラザラしています。

わかりやすく例えるなら、紙やすりみたいな手触り。

素手で触ると怪我をしそうなぐらいです。

また、あちこちにヒビのようなシワが見られるのは、「砂型の劣化によるものではないか」と日向社長。

1992年のホンダの広報資料によれば、MC22の年間販売計画台数は4000台。

MC22は、1990年から2000年まで生産されていましたから、トータルでかなりの販売台数になっているはず。そう考えると、とくに後期モデルは砂型が痛んでいても、不思議はありません。

見た目的にはちょっと心配になりますが、強度的にはとくに問題ないそうです。

カムギアトレインの動く様子

4,部品交換

ガスケットやシール類は当然、交換しますが、それ以外の交換部品を紹介します。

セルモーター

CBR250RR MC22 純正セルモーター
純正のセルは不発弾状態。浸水したのか錆がひどい状態。回す力も弱く、再利用不可でした。
CBR250RR MC22 社外セルモーター
純正のセルは3万円ほどなので、数千円の社外部品を使う事になりました。

日向社長いわく「(セルが回ると)ちょっと熱を持つなぁ」と。純正より若干、回す力が弱いかもしれないとの事でした。

予算に余裕があれば、純正のセルモーターを使用したほうが無難かもしれません。

水回り

CBR250RR MC22 ウォーターポンプ内部
ウォータポンプ
CBR250RR MC22 ウォーターポンプガスケット
髪留めのゴム・・・ではなく、ウォーターポンプのガスケット。経年劣化で、冷却水が漏れてきたので交換。
CBR250RR MC22 ウォーターポンプ

水冷の場合、ラジエーター回りのパーツ(ゴムホースやガスケット類)が劣化していて、そのまま部品を再利用すると高確率で冷却水が漏れます。

また、今回のセルモーターのように、入庫した時は動いていても、再びエンジンを搭載して使用するタイミングで壊れることもよくあります。

エンジン自体は分解して、各部をチェックすれば要交換部品・再利用可能部品が判断できますが、電気系統など、ほかの箇所でトラブルが発生し、手間がかかることが多いです。

エンジンだけをやっているショップとは違い、バイクショップは「安全に走れてなんぼ」です。エンジンが完調なのは当然ですが、「ほかはどうでもいい」というわけにいきません。

「(エンジンを含めて)ちゃんと走れる状態じゃないと納車しない」

というのが日向社長の方針。

なので、MC22に限らず、納得がいかなければ、必要に応じてエンジン以外も修理して、納車されています。

もちろんお客さんの予算の範囲内で、できるだけという事になりますが。

MC22に限った話ではないが、旧車の場合、セルモーターやイグニッションコイルなど電気系統のトラブルが多い。いざエンジンを始動しようと思っても電気系の不具合を探したり、修理を余儀なくされることは日常茶飯事。

5,エンジン組み立て

腰下、腰上、それぞれ終わったところでエンジンを組み立てます。

部品が全て揃っている場合、エンジンそのものはあっという間に組み終わります。

CBR250RR MC22 エンジン組み立て2
CBR250RR MC22 エンジン組み立て
CBR250RR MC22 バルブクリアランス調整
シリンダーヘッド

バルブクリアランスもしっかり調整。(いわゆるタペット調整)

カムを取り付けたシリンダーヘッド。

カムギアトレイン採用車はコツが必要で、下手をするとカムシャフトがへし折れてしまうそうです。

6,エンジン搭載

CBR250RR MC22 エンジン搭載

エンジンを搭載して、シリンダーの圧縮計測をおこないます。

キャブレター オーバーホール

順番が前後しますが、キャブレターのオーバーホールもおこないます。

といっても、キャブレターのオーバーホールは、ほぼ内部洗浄です。

オーバーホール(英語: Overhaul)とは、機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業のことである。

Wikipedia

ここまでやる人って、レースを除けば見た事がありません。

放置車両でガソリンが腐っているなど、よっぽどのことがない限り、シールやガスケットを除いて、キャブレターの部品を交換する事はありませんので基本、キャブレターのOH=内部洗浄と理解しておけばいいと思います。

余談になりますが、「オーバーホール」の定義はショップによってバラバラです。

ブレーキやフロントフォークのOHだって、よく聞くとただオイルを交換するだけだったり、ブレーキ液やパッド交換だったりします。

エンジンも然り。腰上だけを「エンジンOH済み」というショップもありますし、ガレージ湘南のようにエンジンOH=腰上腰下オーバーホールというショップもあります。

エンジンを分解して、ただ組み立てるだけのショップもあれば、きちんとバルブシート研磨や、バルブガイドボーリング、ガイド交換などをおこなった上で、エンジンを組むショップもあります。

当然、おなじオーバーホールでも完成度が違ってきます。

ホンダの車に例えると、タイプRとそれ以外のエンジン、といったところでしょうか。(新車のバイクでも、ごく一部の車両を除いて、エンジンを組む際、バランス取りなどはおこなわれていません)

「どの範囲を」「どこまでやるのか」ショップに確認したほうがいいと思います。

ガソリンタンク下にあるエアクリーナーボックスを取り外します。

CBR250RR_MC22 エアクリーナー
CBR250RR_MC22 エアフィルター
リアサスを純正からYSS製 ME302モデルに交換

エアフィルターはちゃんと交換されている形跡がありました。

CBR250RR_MC22 エアクリーナーボックス内部

写真では判別しにくいですが、ファンネル(筒状の金属)はセンター2つが高く、両サイド2つが低くなっています。吸気する際、ほかのシリンダーと競合しないようにするためです。

CBR250RR MC22 キャブレター オーバーホール
キャブレター本体

この年代のバイクはジェット類の詰まりが多いです。キャブクリーナーでは完全に取り除けないので、分解します。

7,いざ、始動!

始動とアイドリング
~6000rpmまでの咆哮

キャブレターの同調、エンジンオイルや冷却水の漏れがないかどうかチェックをおこなった後、日向社長みずからテスト走行をおこないます。

エンジンオーバーホールの詳細

以下、ざっくりですが、ガレージ湘南でおこなっているエンジンオーバーホール(標準コース)の詳細です。

エンジンオーバーホール バーチャル見学会

※今回オーバーホールしたMC22は、予算重視のため、いくつかの工程を省いた内容になっています。

シリンダーヘッドに関しては、バルブガイドは交換せず、バルブ擦り合わせや、タペット調整を実施。塗装は必要ないので、おこなっていません。

ガスケット・シール類、ピストンリング、プラグ、セルモーターは新品交換。

納車して1ヶ月以上になりますが、始動性が良くなり、スロットルを開けたときのレスポンスがまるで違うので、オーナーさんはとても喜んでいらっしゃるようです。

現在、MC22に乗っている方はぜひ、今後も大切に乗ってください。

CBR250RR MC22 注意点

気になっている人が多いようなので、追記しておきます。

なんと言っても注意すべき点は、純正部品が手に入らないことです。

もちろん、全ての部品が手に入らないわけではありませんが、本記事で紹介したようにピストンは出ませんし、クランクシャフトも出ないでしょう。

つまり、壊れたら修理不可能という事になります。

MC22が特別というより、旧車は基本的にこうした部品の問題が付きまといます。たとえば今日、純正部品が出ていても、明日には無くなっていることも、めずらしくないからです。

「だったら中古で探せば・・・」

と多くの人が考えますが、中古パーツ(オーバーホール済み、動作確認済みとされているもの)も、個人売買では詐欺同然のケースが横行していますし、そもそも使えない部品が多いです。

(もし、本当に使えるパーツなら自分で使うか、高く売りに出すでしょう?)

旧車修理の現場では、日常的にこういうことが起きてます

もう一つ、旧車(というかキャブ車)は、修理してくれる(きちんと修理できる)ショップを探すのがむずかしかったり、すぐ修理してもらえないことがあります。

買ったあとで気づいても遅いので、修理難民になりたくない人は読んでおいた方がいいです。

参考:外車と国内メーカーのちがい、よくあるトラブル

CBR250RR MC22 エンジンオーバーホール

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