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井上ボーリング工場見学

井上ボーリング工場見学

井上ボーリング(以下iB)さんの工場を見学してきました。

井上ボーリング見学会

iBは内燃機のパイオニアとして非常に有名な会社です。

株式会社 井上ボーリング

埼玉県川越市下赤坂671
電話 049-261-5833 FAX : 049-263-1425
http://www.ibg.co.jp/

旧車好き、とくに2スト好きの間で知らない人はいないのではないでしょうか。

HRC(株式会社ホンダ・レーシング)が発足するよりも以前から、2スト市販ロードレーシングマシンRS125/RS250のシリンダーを手がけ、その後ホンダの2ストシリンダー製作を一手に引き受けられてきたそうです。

近年では「減らないシリンダーをつくる」をコンセプトに、ICBMという新技術を用いたメッキシリンダーの加工を手がけていらっしゃいます。

メッキシリンダーは、ホンダのNSシリンダーやニカジルメッキが知られています。ちなみにNSシリンダーはホンダの商標。(ニカジルもくわしく知りませんがどこかの会社の商標だと思います)

iBのメッキシリンダーだからICBM(商標)だそうです。

「名前付けただけじゃん!」

と思うかもしれませんが、同じメッキでも千差万別なのです…。

目次

アルミメッキシリンダーのメリットは?

iBの代表 井上社長によれば、当初はRSのシリンダーは鉄製で、しばらくしてアルミメッキに変わったとか。

シリンダーをアルミ製にする事で金属の膨張を減らすことができます。

風船を想像するとわかりやすいですが、エンジンが冷えているとしぼんだ状態。

エンジンに熱が加わると、だんだん風船(金属)が膨らんでいきます。

これが熱膨張です。

熱膨張とは

膨張すると、ピストンとシリンダーの隙間が狭くなります。要は、エンジンが完全に暖まった状態の時、鉄よりもアルミ製のほうが膨張しにくいんですね。アルミ製にする事で、クリアランス(隙間)を狭くできます。

(もちろんアルミ化による軽量化のメリットもあります)

エンジンのクリアランスが狭い方がパワーが出ますが、狭すぎると熱膨張で焼き付いてしまいます。

レースの世界は勝負事ですから、壊れるか壊れないかギリギリのところを狙います。

実際、壊れることは多々あるわけですが、レースだと排気量の上限が決まっているためボーリングができません。

ボーリングとは?

シリンダーの口径を広げて再利用する加工技術。ボアを広げるため排気量がUPする。レースでは多くの場合、レギュレーションによって排気量の変更ができない。

こうした背景もあって、アルミ製メッキシリンダーが開発されたようです。

当初ロードレースから誕生した技術が、後にモトクロッサーや市販車に採用されたわけです。

…メッキシリンダーの話だけで長くなってしまいましたが、

年々、部品の入手が困難になるZ系など4スト絶版車はもちろん、2スト車にとって減らないシリンダーはまさに夢です。ICBMの発表以来、わがCB150Tへの加工も秘かに考えています。

(中華製142ccシリンダーの10倍以上の価格になりそうですが…)

内燃機ってなんですか?

一応、説明します。

内燃機屋さんは、簡単に言うとエンジンに加工を施す作業をするところです。

一般的に、エンジンのオーバーホールをバイクショップに依頼した場合、必要に応じてバイクショップが内燃機屋さんに加工の依頼をおこないます。

「これこれ、こういう仕様で加工をお願いします」

具体的な仕様を指示して依頼します。

井上ボーリングには有名各社から加工依頼が来るそうですが当然、どういう加工をするのか具体的な
仕様が決まっています。つまり、仕様に基づいてエンジンの加工をおこなうわけです。

「なんとなく、こんな感じでやっといてよ」

では作業のやりようがないからです。

そういった意味で、一般のライダーが内燃機屋さんと直接、関わることは少ないと思います。私も20年近く前から内燃機屋さんの存在は知っていましたが、発注したり直接、関わった事がありませんでした。

「そろそろ中華142ccエンジンも3.5万㎞を迎えるのでまた腰上OHしようかな」

「どうせやるなら加工してみようか」

と思っていた矢先、iBが工場見学募集の告知をされていたのです。

というわけで、午後の部にお邪魔してきました。

訪れる人は2ストが多いのかと思えばそうでもなく、けっこうバリエーションに富んでいました。中には井上ボーリングのすぐ近所に住んでいらっしゃる参加者の方も。

入り口で受付を済ませて、いざ工場内へ…

iB工場見学ツアー

出迎えてくださったのは、井上ボーリングの社長 井上壯太郎氏。

井上ボーリング社長

ブログやフェイスブックは以前から拝見していますが、実際にお目にかかるのは初めてです。

熱弁をふるって案内してくださいました。

井上社長だけでなく、各セクションの技師さんたちによる解説や実演もありました。

井上ボーリング工場

井上ボーリング工場見学

井上ボーリング加工

写真ではわかりにくいかもしれませんが加工の様子を間近で見ることができました。

iB工場見学

5分も経たずして加工終了。H2(750SS)のシリンダーヘッドです。

さて、お次は・・・

フランス製の工作機械

この機械自体をOHしたそうです。NC旋盤が登場する前に、NC旋盤に近い工作機械としてつくられたそう。

KAWASAKI車のディスクローターでしょうか。

事業継承問題・・・

従業員の高齢化や技術継承の問題が取りざたされる昨今ですが、井上社長いわく継承問題も見事に乗り越えられたそうです。すばらしいですね。

私も10年以上、知識やノウハウを相手に伝える仕事をしていますので、どれほどの苦労があったのだろうと想像しました。知識があることと、それを伝えるスキルは別物ですからね。たんにノウハウを詰め込むだけでは人は育ちません。

一番若い技師さんで、20代後半だそうです。

ホーニング_井上ボーリング

ホーニングは、シリンダー内部表面に細かい溝を入れる作業です。

その溝にエンジンオイルが留まります。

某会社が、自社でホーニング機を購入したものの結局、使いこなせず井上ボーリングさんが引き取ったそうです。それほどホーニングは機械任せができないむずかしい作業だとか。

クランク芯出し

クランク芯出し

「ウチで一番、人間的な作業です」

とは技師さんの弁。

クランクシャフト芯出し加工の実演をしてくださいました。

これも2ストに乗っていた頃に耳にしてましたが、「ハンマーで叩くらしい」ぐらいの情報しか知りませんでした。動画もネットもまだない時代です。

「叩く???」

という感じでしたが、はじめて芯出しの様子を見ることができました。

ハンマーを使って絶妙な力加減で叩いて、計測器で測定

これを繰り返すそうです。

シンプルな作業ほど奥が深いものです。

(とくに単気筒がむずかしいとか)

最後のセクションでは、この技師さんが興味深いデモンストレーションをしてくださったので次回、ご紹介します。そして最後は・・・

禁断の検査室

ホンダの下請けを手がけていらっしゃる井上ボーリングさんですが、iBさんでおこなった加工品に証明書を付けないとホンダに納品できないそうです。しかも、あらかじめiBの技師さんをホンダに派遣し、仕様どおりの加工ができるかどうかテストし、認定された技師さんだけがホンダに納品する加工を行う事ができるとか。

すごい厳格ですよね。

検査するにも、ハンパな数では無いのでiBさんでは工夫して検査しているそうです。

(念のため写真はカットしておきます)

後編に続きます!

井上ボーリング工場見学

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