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CB125T プロリンク分解と検証 ~GPz750リンク式サスペンションとの比較~

CB125T プロリンク固着原因

※本記事は2018年3月20日に公開した記事を再構築したものです

目次

なぜCB125Tのプロリンクは固着するのか?

プロリンクの構造を知らない事には対策のしようがない。

​そこで2017年の大晦日から、プロリンクの分解・検証をおこなった。ご協力いただいたのは有限会社ガレージ湘南の日向社長。これまでに解体したプロリンクは3台分。

CB125Tスイングアーム

実験用に入手した中古スイングアームとリンクアーム

CB125T リンクアーム

スイングアームから取り外したリンクアーム(大・小)

CB125T 小アーム
小アーム
CB125T プロリンク分解
大アーム

リンクアーム大の下側

リンクアームにはそれぞれ、グリスを溜めるスリットが入っている。

とくに大アーム下側のスリットは摩耗しやすく、溝がほとんど残っていない個体もあった。大アームの上部にはカラー(金属製の筒)がはめ込まれていて、スリットは見当たらない。

比較的、小アームは溝の状態が良く、動きもそれほど悪くなかった。

固着するのは大アームの上部。リヤサスペンションの下の部分と連結する部分だ。

CB125T プロリンク サービスマニュアル
CB125T サービスマニュアルより

黄色い矢印が固着しやすい箇所。

ちなみに固着とは「まったく動かない」状態のこと。人間でたとえると、関節がまったく曲がらなくなるのと同じ。膝を曲げずにジャンプして着地してみるとわかるが、着地時の衝撃が大きくなる。

同じようにバイクが路面のギャップを通過した際、ガシャン!という強い衝撃になる。

これがプロリンクが固着した状態だ。

さて、以下の写真。

CB125T プロリンク分解

大アーム下側の中に入っていたカラー(金属製の筒)は焼き付いていたり、錆びていた。

グリスアップしてからわずか2ヶ月ほどしか経っていないカラーでも錆びが出ていた。

一度、完全に錆を落とさないと、もらい錆が発生するのだろう。

ダストシールは着いているし、組み付ける際にグリスアップしたが、雨天走行や洗車でバシャバシャと水を浴びる箇所のため、カラーやボルトに錆びが発生しやすいようだ。

これが結果的にプロリンク固着の引き金になっている。

カラーは、上下とも回そうと試みたが動かなかった

上部は周りにブッシュ(樹脂製のクッション)が入っている。この部分は本来、非分解なのだろう。パーツリストに部品は出ていない。

グリスアップが目的ならカラーを外さないよう注意しよう。

カラーの周りにシールがはめ込まれていて、カラーを取り外せば(簡単には外れないが)前出のスリットが現れる。

VT250スパーダ GPz750と比較

スパーダもリンク式サスペンションだ。

VT250SPADAのプロリンク
VT250SPADAのプロリンク

中古品だがリンクの動きはスムーズそのもの。カラーも矢印のとおり簡単に回った。

(本来、CB125Tのリンクも同じように回るようになっているのかもしれない)

CB125TがJC06にモデルチェンジされたのが1982年。対してスパーダはその6年後、1988年(バブルの時代)に発売されている。

かつてバイクの主流だった125ccクラスも、1980年代にはすっかり中型以上の排気量に取って代わられている。CB125Tのプロリンクは、単に設計が古いだけではなく、予算的な制約もあったのだろう。

(CB125Tのプロリンクは仕様変更がないまま、生産終了を迎えた)

余談だが、スパーダ4台のうち、いまのところリンクが固着していた事例はゼロ。

CBTと同じ仕組みのGPz750Fのリンクは、錆びて固着していた。

GPz750Fのリンク式サスペンションオーバーホール
GPz750F(1982)
GPz750Fのリンク式サスペンション
GPz750F リンクのオーバーホール
GPz750Fのリンク式サスペンション

CB125Tのプロリンクだけが特別、固着するのではなく、同じ年代のリンク式サスペンションは(おそらく構造も似ているため)固着しやすいのかもしれない。

CB125Tのプロリンクに話を戻そう。

CB125T プロリンク分解

リンクアーム大の上部にあるカラー(下記の写真でいうと下側)をまるごと取り外したもの。

CB125T プロリンク分解

カラーを見ると、中身が完全にサビているのがわかる。

この中をボルトが通って可動するわけだが、錆びると動きが悪くなり、やがて固着する。

CB125Tリアサスペンションのボルト

グリスアップから2ヶ月で錆びていたボルト(2018年)

2015年、新品の純正リアサスを交換した際のボルトもご覧のとおり。緩んでいて、危うく外れそうだった。

判明したプロリンクもう一つの弱点

当初、リンクアームだけをベアリング化すれば良いと思っていた。

必要十分な強度を確保しながら加工・部品の製作。寸法に合うベアリングを選定し、いくつもの部品やベアリングをトライアンドエラーで試し、リンクアームのベアリング化が完成。

ところが、いざスイングアームに取り付けてみると動きがしぶい。

かなりの力を入れないと動かないのだ。

検証の結果、リンクアーム大とスイングアームを連結する部分の構造が原因だと判明した。

CB125Tスイングアーム プロリンクの構造

赤い矢印に注目してもらいたい。

ボルトを締めることでリンクアーム大と、スイングアームが連結される。ところが、ボルトが締まれば締まるほど、リンクアームが矢印の方向に向かって広がった状態で固定される。

これがリンクアーム大のスムーズな動きを妨げる原因となっていた。

CB125T プロリンクの動作

筆者のCB125T(2001年式)から取り外したスイングアームとリンクアーム。

本来、矢印の方向に動くのだが、固まっていて、ちょっとやそっとでは動かなかった。

プロリンクの構造と役割

ここまで各部分にズームインして話してきたが、次は少しズームアウトして、CB125Tのプロリンクとサスペンションの関係、役割を見てみよう。

CB125Tプロリンク 解説
CB125Tを横から見たイラスト

赤く塗りつぶしている箇所が動くことによって、プロリンクが路面のギャップから伝わる衝撃を逃している。

だから固着したり、動きが悪くなると、路面追従性が悪化する。

たとえば

・大きなギャップを通過するたびにガシャン!という衝撃音がする

・リヤタイヤの溝がまだ残っていて、老朽化したわけでもないのにグリップ感が乏しい(もしくはタイヤからの情報が感じられない)

といったものだ。

ちなみに、リンクだけでカバーできない大きなギャップはリアサスペンションが担当している。

リアサスが劣化すると、タイヤの溝が十分に残っていて、ゴムが劣化してない状態でも、コーナーリングでリアがアウト側に膨らむ(曲がりにくいと感じる)ようになる。

減速帯など、路面のギャップで車体が跳ねたり、フワフワして落ち着きがない乗り心地になる。

路面ギャップ
実際に走行したテストコースの一つ

リンクが固着していた場合、本来リンクがやるべき仕事をリアサスペンションが担当することになる。

結果、リアサスの負担が増えて劣化が早くなる。プロリンクとリアサスペンションが一体となって働くことで、CB125T本来の旋回性能が発揮されるのだ。

しかし、構造的にCB125Tのプロリンクが良い状態を維持できる期間はそう長くはない。

というわけで、動きの悪いリンクアーム大とスイングアームの連結部分もベアリング化することに決定。

「どうせやるなら徹底的に」

大晦日をまたいで元旦、お正月と足回りのリノベーション計画は続くのであった。

プロリンク固着対処法・メンテナンス解説

YouTube解説動画(一般公開を終了しました)

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