パーツクリーナー、キャブクリーナー、グリスなど、プロショップで使用している製品を紹介します。
(テスト費用と時間を考えると、有料レベルの記事だと思います)
失敗しないケミカルの選び方
筆者自身、ライダーとして10年以上、有名・無名を問わず、さまざまな製品を試してきました。
その上で言うと、大事なことは2つに集約されると思います。
1,用途に合った製品を使用する
無数にある潤滑剤ですが、それぞれ目的に合わせてつくられています。
適材適所という言葉があるように、まちがった使い方をすると逆効果になります。
まちがった使用方法の例
KURE5-56を鍵穴や、ドライブチェーンに塗布する
万能潤滑スプレーのイメージがある「クレ556」ですが、上記の使い方はまちがった使用方法であることが、発売元の呉工業から公式発表されています。
・鍵穴に使用するとゴミなどが堆積して逆効果になる
・バイクのドライブチェーンは高速・高荷重なため使用不可
筆者も以前は「潤滑剤なんて、どれも似たようなものだろう」と思ってた時期もあります。
ところが目的や意図に合わせて設計され、製品がつくられているのはバイクだけでなく、潤滑剤も同じです。
2,クオリティの高い製品を使用する
いくつもの価格の高い製品、安い製品の両方をテストした結果、
・相対的に価格の安い製品は、高い製品より性能に劣るため、大量に使わざるを得ない
・上記を考慮すると、1本当たりの単価が高い製品を使用したほうが安上がりになる
という結論に達しました。
バイクショップが、決して価格が安くない製品を使用している理由はここにあります。極端な話、安い製品を使ったほうが、ショップの利益率は上がりますからね。
あえてそうしない理由があるわけです。
これは実際に、ふだんバイクショップが使っている製品 VS (価格を問わず)筆者が独自に選んで持ち込んだ製品を比較して、肌で実感しました。
もちろん、製品のなかには価格=性能とは限らないケースもあると思います。
それでも全体的に見た場合の結論として、できるだけクオリティの高い製品を使用したほうが、メリットが大きいという事です。
以上を踏まえた上で、本題に入ります。
ブレーキ
製品によって、かなり汚れ落ちが違います。
ブレーキクリーナー(パーツクリーナー)
主な特徴:ブレーキまわりのほか、機械部品に付着した脱脂洗浄に使用。ゴム・プラスチックに対して影響が少ないので、電子部品等の脱脂洗浄にも使えます。

漏れたフロントフォークのオイルが付着したブレーキディスクとキャリパー。速乾性だと、大量使用することになる。この場合、中乾性のほうが使い勝手が良い。
主な特徴:乾きにくい中乾性タイプ。ブレーキまわりのほか、機械部品に付着した脱脂洗浄に使用可能。ブレーキフルードを容易に溶解するため、ブレーキメンテナンス時の洗浄に便利です。
(ゴム、プラスチック、塗装面にはかけないこと)
ブレーキフルード
主な特徴:ドライ沸点268℃、ウェット沸点174℃。原付から大型バイクに使用可能。フルードに関しては、不満がなければ純正でもいいと思います。
ブレーキグリス
ゾイルのラバーグリースか、SSGのどちらか一つあればいいと思います。
個人的には、より多用途に使えるラバーグリースが便利だと思います。
主な特徴:プラスチック、ゴム製品への攻撃性が少なく、ブレーキキャリパーピストン、シール、パッドピンなど各部位に使用可能。耐熱性に優れる。
主な特徴:JIS規格をクリアしたブレーキ装置専用ゴムカップグリース。合成潤滑油ベースのグリースで、耐熱性・初期なじみ・耐ゴム性・潤滑性・耐金属腐食性・防錆性・低温性に優れる。
主な特徴:フロントフォークのシールなど、金属とゴムの接触面に使用できるグリス。
ZOIL RUBBER GREASEの基油はブレーキ液と同系統の特殊合成潤滑油を使用しており、ブレーキ液との相溶性、適合性に優れています。
また、本製品は化学的に極めて安定しており、高温でも酸化重合せずスラッジを生成することがありません。マスタシリンダーゴムカップ、ホイルシリンダーゴムカップ、ピストンシールなど油圧シリンダ内部の防錆、潤滑を目的として塗布します。
株式会社パパコーポレーション
その他、クラッチマスターシリンダーゴムカップ、ステアリングシャフト、ドアヒンジ等のゴムと接触する部分の潤滑と油漏れ防止の目的でリチウムグリースよりもより幅広い範囲でご使用いただけます。
コンタクトスプレー
1本あると便利な接点復活剤(コンタクトスプレー)。

旧車で多い電気系統トラブルの一つが、錆による集合スイッチの接触不良。
軽微なものであれば、スイッチの分解洗浄で復旧することもあります。コネクターの接触不良も同様です。
接点復活剤には使用後、乾くタイプと乾かないタイプがあります。ワコーズ社によると、ドライタイプを使用後、ウエットタイプの使用を推奨しています。
どちらか1つを選ぶなら、ウエットタイプがあればいいと思います。
主な特徴と注意点
電気基板の端子やスライド接点、リレー接点、カプラー、スイッチ等の金属部品、エアフローメーター (ホットワイヤー式、ベーン式のみ)の汚れを取り除き、絶縁不良を回復させます。不燃性ガス使用ですので安心して電気接点の洗浄が可能です。
※プラスチック・ゴム部分にはかけすぎないように注意してください。ひび割れを引き起こすことがあります。
株式会社 和光ケミカル
ウエットタイプ
主な特徴と注意点
特殊ポリマーが電子部品の接触不良部分に被膜を形成し、接点の復活、潤滑保護をするスプレーです。CR-Dで洗浄後、CR-Wを塗布するとより効果が持続します。
使用箇所:スライド接点(ボリューム、スイッチなど)、基板端子、コネクタ等
※リレー接点やエアフロメーターには使用できません
株式会社 和光ケミカル
さまざまな接点復活剤がありますが、用途によって中身(成分)は異なります。
たとえば楽器用の接点復活剤があったり、楽器用だけでも目的に応じて何種類もあります。「接点復活剤だからどれも同じだろう」と思ってしまうと、思わぬ失敗につながります。
失敗例:
使用直後は良くなったものの、しばらくすると、使った接点復活剤が固まってしまいトラブルが発生した(要分解修理)
潤滑用のスプレーを接点復活剤代わりにするのもNGです。
ドライブチェーン
シールチェーン・ノンシールチェーンともに、メンテナンスサイクルは走行距離500km〜1000kmごとが目安です。
雨天を走行した後は、できれば清掃したほうがチェーンが長持ちします。
チェーンクリーナー
シールチェーン対応の製品と、非対応の製品があります。
シールチェーン用はシールを傷めないよう配慮されています。非対応のクリーナーをシールチェーンに使用した場合、シールが劣化して、チェーン寿命が縮むことがあります。
もし、ブレーキクリーナーでシールチェーンを洗浄したら?
攻撃性の低いとされるW社のブレーキクリーナーを使って、新品チェーンで実験しました。数回の使用で、シールがボロボロになりました。絶対にやらないほうがいいです。
以下、シールチェーン対応のクリーナーです。
ワコーズ CHA-C
クリーナーが乾燥しにくいため、汚れが落ちやすく、消費量が抑えられます。ブラシが付いていて、便利です。
RKチェーンメンテナンスセット
RKはチェーンの製造メーカー。チェーンクリーナー、チェーンルーブ(潤滑剤)、チェーンメンテナンスマニュアルがセットになっています。
チェーン清掃の注意点
まず、絶対にやらないほうがいい方法をお伝えします。
「エンジンをかけて、タイヤを回転させながら作業すること」です。高確率で指を失うことになります。
作業をおこなう際は、かならずエンジンが停止した状態でおこなってください。
ちなみに、マジックリンなどの洗浄液は、チェーンを痛めて破断する恐れがあるため、使用はお勧めしません。
液状タイプの製品を使うなら、バイクチェーン清掃用の製品を使用しましょう。
Q.シールチェーンには注油が必要ない?
シールチェーンでもメンテナンスは必要です。
https://mc.rk-japan.co.jp/
チェーンの清掃・給油は車両メーカー発行のオーナーズマニュアルを参考にし、500km~1000kmを目安に行ってください。
シールによってピンとブッシュ間にグリスを封入していますが、 それ以外の部分は走行によってグリスが失われて行きます。
ブッシュとローラーは常に接しています。ローラーと内プレートも接触します。 僅かであってもローラーは動いており、非常に高速で大きい加重が掛かっています。金属が互いに直接接する部分に、チェーンルブによって皮膜を形成し、潤滑・保護しています。
また錆の発生を防ぐためにもメンテナンスは必要です。 メッキチェーンの場合は錆びにくいですが、絶対錆びないわけではありません。ストリートユースではあらゆる環境下に晒されます。
泥や水滴、融雪剤に含まれる塩化カルシウムなどがプレート表面に付着したまま放置すると、 その部分から錆が発生し始めます。 チェーンルブによって皮膜を形成し、保護する必要がございます。 より良い状態で長くご使用して頂くために、定期的な清掃・注油を必ず行ってください。
お手入れにはRK純正チェーンルブ、RK純正チェーンクリーナーをお使いください。 お買い得なRK純正メンテナンスセットもご用意しておりますので、是非ご検討ください。
個人的には、メーカーの見解を聞くまでもなく、チェーンオイル塗布は必要だと実感しています。
なぜなら、チェーンオイルを注油する前と後では、タイヤが回転したときのフリクションがまるで異なりますし、それは走行後も変わらないからです。
もし、「チェーンオイルを塗布しても、走行すればオイルが飛散するから意味ない」という主張が正しければ、走行後は元どおり、チェーンの動きがしぶくなるはずです。
リッターバイクや、大型バイクなど、パワーのある車両だと、微妙な変化に気づかないのかもしれませんね。
125ccなど、パワーのないバイクだと、ほんのわずかな違いで、顕著な変化が体感できます。
チェーンルーブ
ドライタイプとウエットタイプがあります。
ちゃんとしたメーカーの同グレード製品であれば、飛散のしにくさ、持続性は大差ないと思います。
個人的にはスーパーゾイルが低フリクションに感じるため、お気に入りです。
いずれもシールチェーン対応。
オイルを飛散させないためのコツ
いろんな方法がありますが、筆者がテストした中で比較的、簡単で効果の高い方法を紹介します。
ステップ1:手で進行方向と逆にタイヤを回転させながら、チェーンオイルをまんべんなく塗布する
ステップ2:しばらく放置する(5分)
ステップ3:1と同様、タイヤを逆回転させながら、ウエスでチェーンの余分なオイルを拭きとる
※タイヤを逆回転させるのは、スプロケットに指などが巻き込まれるのを防ぐためです。
チェーンの遊びや、ガタの有無も忘れずチェックしましょう。
潤滑剤・防錆剤
旧車にありがちな固着したボルト・ネジを外したり、ワイヤー類の潤滑、錆防止など多目的に使えます。
主な特徴
強力な浸透力と防錆性を有するフッ素化合物配合の浸透防錆潤滑剤。水置換性を有し水に濡れた状態でも効果を発揮します。
株式会社 和光ケミカル
キャブクリーナー
レストアや、修理をおこなうプロショップだと、キャブレターは分解が基本です。

その前提でいうと、写真のような場合は泡タイプ、そこまでひどくない場合はCC-Aを使用しています。
(メカニックの好みにもよるようです)

希釈して、使用する原液タイプもあります。
仕様成分:溶解、界面活性剤、アミン、水他
ワイズギア公式
容量:4L
使用方法:缶をよく振ってからご使用ください。
1.鉄製の容器を準備し、移し替えてガソリンと混合(ガソリン70:クリーナー30)してください。
2.キャブレターを取外し分解して、1~2時間つけてください。
※ゴム部分(ニードルバルブ、ガスケット、Oリング、ダイヤフラム)等、樹脂成分(フロート等)へ使用しないでください。
3.落ちにくい部分は混合液をつけたブラシでこすりとってください。
4.キャブレター通路等へ直接注入した場合は1~2時間放置後ブレーキ&オイルクリーナー等で十分に洗い落とし乾燥させてください。
5.組み立てる前に必ずブレーキ&オイルクリーナー等で混合液を落とし、十分に拭き取ってください。
ご注意※作業中充分な換気が必要です。ガス等を吸い込まないよう注意してください。
※ゴム部品、樹脂部品には使用しないで下さい。
液体ガスケット
個人だと頻繁に使用するものではありませんが、多用途に使えます。
液状シリコーンガスケット
RTVシリコーン(脱オキシム型)の液状ガスケットで、耐油性・耐振動性・耐寒耐熱性(-50~250℃)・耐候性・耐衝撃性・耐水性及び耐久性に優れます。臭いも少なく脱オキシム型の中では肉盛り性に優れており、クリアランスの大きい接合面に有効です。液状ガスケットをはじめ弾性接着剤、コーキング剤として幅広い分野で使用できます。
(色相:半透明)
※燃料系には使用不可
株式会社 和光ケミカル

左はひび割れたインシュレーター(インテークマニーホールド)の使用例。
右側は、排ガス漏れしたマフラーに使用。
マフラーは一度の塗布で、3年以上持ちました。インシュレーターは経過観察中ですが、2年以上持っています。
強力油落とし・エンジン洗浄
エンジンオーバーホールや、マフラーのカーボン落としなど、強力な洗浄力が必要な場合に。
ガソリンタンク錆取り・コーティング
レストアのプロショップで実際に使用している製品です。
塗装剥離剤
プロショップで使用されている強力剥離剤。筆者も試してみました。
エンジンオイル 4スト・2スト
それぞれのバイクに合うオイルの選び方や、考え方、ありがちな失敗事例、都市伝説の検証結果などを掘り下げてシェアしています。