YSSリアサスペンション購入者(ガレージ湘南のお客さま)で、フロントフォークをオーバーホール、セッティングされる方向けのアドバイスです。
ME302は一般公道を対象としていますが、なかにはサーキット走行を楽しむ方もいるため、サーキット走行向けの内容を追加しました。
比較的、「安全に上達するためのヒント」も解説しています。
(随時、更新)
はじめに
リアサス交換後、まずは100から200kmほど走行してください。
(タイヤの摩耗状態、空気圧チェックを忘れずに)
体が馴染んできますから、もしフロントフォークのオーバーホールをおこなうなら、それからがいいでしょう。
一度に2つ以上変更すると、なにがどういう影響をおよぼしているか、判断しにくくなるからです。それに交換直後と、慣れてからだと、最初と印象が少し変わってくることがあります。
フォークオイルの粘度や、油面はサービスマニュアルのメンテナンス情報が基準となります。
ただ、フォークスプリングがへたっていたり、ライディングスタイルや、走行シーンによっては、必ずしも標準値がベストとは限りません。
あくまで一つの基準と考えたほうがいいでしょう。
もし、一度もフロントフォークオイルを交換した事がなければ、まずは標準値でいいと思います。
それでも柔らかい(硬いという事は、ほぼないと思います)と感じるなら、油面やオイル粘度を変えてみるといいでしょう。
フロントフォークオイルは意外な盲点
一般的に車検のあるバイクでも、何十年もフロントフォークオイルが交換されていないケースはめずらしくありません。整備済み中古車の場合でも、交換されていなかったりします。(別料金)
ライダー自身、オイルが劣化しても、走行不能になるわけではないため、気づかずにそのまま乗っている事が多いです。ダンパーの抜けたリアサスを交換するのと同様、フロントフォークをオーバーホーすると、走行フィーリングが良くなるので、ちがいに驚かれます。

10年以上、交換されていなかったフロントフォークオイル。ひどいものだと、グレーのペンキみたいな色になって、強烈な腐臭がするようになります。
フロントフォークの内部部品
フリーバルブ式フロントフォークの内部パーツ。写真はNS-1です。(洗浄後)


シール、ワッシャー、クリップ、ピストンリングは交換。スプリングについては、使用限度に達していたら交換を推奨します。
車種や使用環境によると思いますが、CB125Tでは約3万キロでフォークスプリングが使用限度に達していたケースがあります。(フォークスプリングはワンオフ製作可能です)
では次に、フロントフォークオイル粘度や、油面によってバイクの挙動がどのように変化するのか?
について解説します。
オイル粘度による変化
フォークオイル粘度を変えると、ズバリどういう変化が起きるのか?
かんたんに言うと、フロントフォークが伸び縮みする際のスピードが変わります。
たとえば、時速60キロでブレーキをかけた時、粘度が高くなるほど、(抵抗が増えるため)ゆっくり伸び縮みするイメージです。逆に粘度が低いと、抵抗が減るため、伸び縮みするスピードが速くなります。
またフォークオイルが劣化している場合も、粘度低下により急激に伸び縮みするようになります。
フロントフォークオイルにはさまざまな粘度があります。
例:#5、#10、#15・・・
番手が大きくなるほど高粘度(硬いオイル)になります。
A社 #10
B社 #10
「同じ番手だから、どっちも同じ硬さだろう」
と思いますよね。ところが、フォークオイルはちょっとややこしい事になっています。
どういうわけか、製品ラベル上の番手が同じでも、実際の粘度はメーカー各社で異なるのです。エンジンオイルのように規格が統一されていないんですね。
SAE粘度表示があったり、なかったり、正立・倒立用の用途指定があったり、なかったり・・・
私たち消費者側にとって、ひじょーに、わかりづらい状況になっています。
プロのアドバイス
ホンダは、CB125T、VT250SPADA、CBR250RR MC22、NSR250R・・・どれも標準は#10(ウルトラCO SPECIAL3 SAE-10W)です。
教習所みたいな乗り方や、ゆっくり走るならいいかもしれませんが、ペースが上がると、柔らかすぎて腰砕け感が出てくると思います。
峠を走ったり、少しスポーティーな走り方をするなら、#20から#30ぐらいを目安にするといいです。
ちなみに日向社長(ロードレース国際A級)、橋立メカニック(元オフロード国際A級)いわく、「#20だと柔らかい気がするので、#30がいいのでは」とのことでした。
ただ、これは車種やバイクの状態、走行シーンやライダーの走り方にもよるので、ご自身でちょうどいいポイントを見つけてください。
油面による変化
油面が高い(オイル量が多い)と、フォークが沈んだ際、底付きしにくくなる傾向があります。
逆に油面が低い(オイル量が少ない)と、フォークがめいっぱい沈む傾向になります。
50cc〜125ccなど小排気量クラスは比較的、フォークオイル量が少なく、フロントフォークは柔らかい傾向にあります。(フォークスプリングの硬さも関係しています)
オイル量が少ないぶんフォークオイルの劣化が早く、劣化するとフロントフォークが底付きしやすくなります。
つまり、フロントブレーキをめいっぱいかけた時、フロントフォークがフルボトムしやすくなるわけです。
フルボトムしている時に、路面の凹凸などを通過すると「ガシャン」という衝撃がライダーに伝わってきます。雨天時など、路面状態によっては転倒につながります。
このような場合、油面を高くして、沈み込む量(フルストローク量)を調整します。
これを油面調整といいます。
油面調整と粘度調整の使い分け
さきほどのオイル粘度と合わせて考えると、
「伸び縮みするスピードは変えなくていい。フルストローク時のフィーリング(ストローク量)を変えたい」
このような時は油面調整をおこないます。
また「フルストローク時のストローク量は良いけど、サスペンションが伸び縮みするスピードを変えたい」という場合は、オイル粘度で調整します。
この場合も、やはり標準値から大きく油面を変えすぎないようにしてください。
では実践編ということで、具体例を紹介します。
事例1 油面調整
フロントブレーキを強化したCB125T(CB150T)

【カタログスペック】■空冷4サイクルOHC2バルブ2気筒 124cc 最高出力15PS/11,000rpm 最大トルク1.0kg-m/8,000rpm 変速機5段リターン ■燃料タンク14L ■ブレーキF:ディスク R:ドラム式 ■車両重量139kg ■シート高770mm

ブレンボ製ラジアルポンプ式マスターシリンダー

フロントディスクCB750F用流用(ディスク大径化)、ブレンボ4ポットキャリパー+ワンオフキャリパーサポート
参考までにいうと、100km/hの速度でフルブレーキングしても、30km/hの速度から減速したと錯覚するぐらいよく利く状態。
強力なストッピングパワーゆえ、(純正フォークスプリングが劣化していることもあって)フルブレーキングのたびにフルボトムに近い状態になっていた。
フロントフォークをオーバーホールする際、粘度は変えずに、油面を上げてもらう事でしのいだ。
その後、中華フォーク(純正よりスプリングレートが若干、高め)に交換。
事例2 粘度・油面調整

フォークオイルが劣化していることもあって、フルブレーキングすると、完全にフルボトムしていたLEO120SE。
(ブレーキはノーマル)
リアサスペンションは完全にダンパーが抜けきっている状態。
前後とも、サスペンションがフワフワで安定感のないバイクだった。
イメージでいうと、スローモーションのように、そーっとブレーキをかけなければならない状態。
(それでもフルボトムする)
粘度#40.27のオイルを使用し、油面も高めにしてもらった。
これは実際にフォークを動かして、硬さを確かめながら調整していった。
しっかり加速した状態からのフルブレーキング、という筆者のライディングに合わせてもらっているので、おそらく、ほかの人が同じバイクに試乗すると、ブレーキが利きにくい、乗りにくいと感じると思う。
実際、20km/h以下の低速域だと、もう少し粘度が低いほうが乗りやすい。
しかし、低速域での乗り心地よりも、高速域での扱いやすさを重視したため、こうしたセッティングにしている。
もし、これが大阪市内(高速コーナーは皆無。直線の短いストップ・アンド・ゴーが多い。スピードも出せない)など都市部を走るなら、同じセッティングにはしない。
乗りにくくなるからだ。
ダンパーの抜けたリアサスをごまかすために、アクセルを閉じると同時にフルブレーキングして、一気に向きを変えてアクセルオン、という走り方に対応させるための仕様。いわば苦肉の策。
(アクセルを戻してトラクションが抜けるとリアが跳ねてしまう状態)

速度と路面ギャップの深さによって当然、サスペンションの動きは変わる。
サービスマニュアルが無いバイクだと、経験がものをいうと思う。LEOはロードレース国際A級ライダー、元モトクロス国際A級ライダー立ち会いの下、アドバイスをもらいながら調整していった。
バイクの状態が変わると、セッティングも変わる
LEOはのちにリアサスペンションを交換。
完全な状態とはいえないまでも、リアのばたつきがずいぶん改善されました。こうなるとライディングスタイルが変わるため、もう少しフォークオイルの粘度を下げたほうが乗りやすくなります。(筆者の場合)
以上のように、
フロントフォークとリアサスペンションだけではなく、タイヤやブレーキ、アクセレーション(エンジンやキャブの変化)もバイクの運動性能に大きく関係してきます。
もちろんバイクだけではなく、ライダー(ライディングスキルや、ライディングスタイル)、走る環境によっても「最適なセッティング」は変わってきます。
3ステップ フロントフォークセッティング
「セッティング」というとおおげさですが、粘度や油面を調整するにあたって、手順や考え方をシェアします。
※話をシンプルにするため、イニシャル調整、フォーク突き出し量は割愛します。
ステップ1:現在の状態を知る
ふだん走っていて、不満に感じたり、怖いと思うときはどんな時か? 「もし、こうだったら、もっと走りやすいのにな」と思う事はどんなことか?
これらを紙に書き出します。
ステップ2:計測する
次に、フロントフォークの沈み具合をチェックします。フルストロークした時の状態です。
つまり、いつもどおり走っていて、どこまでフロントフォークが沈んでいるか(ストローク量)を知るという事です。

フルストローク時の状態をノギスで計測
インナーチューブにタイラップを取り付け、タイラップの位置でフルストローク位置をチェックしています。
ステップ3:方向性を決める
数字と、自分の感覚の両方を認識したところで、どうするかを決めます。
LEOの場合
1,フロントがノーズダイブ(底付き)するので、それを解消したい
2,フルブレーキング時、フロントフォークの沈み込むスピードが速すぎる
1が油面、2を解消するのが粘度でしたね。
どの程度、硬くしたり、油面量を増やすかについては、突き詰めるとライダーによって変わってくると思います。そこまで突き詰めなくていい場合、メーカー標準値を基準に、少しだけ変えてみるといいです。
この時、ブレーキや、タイヤとセットで考慮して、セッティングすることが大事です。
たとえば、筆者のCB125Tみたいにブレーキを強化した場合、急激にフロントフォークが沈むようになります。
またフロントブレーキホースをステンレスメッシュホースに交換したVT250SPADAに乗りましたが、やはりフロントの沈み込むスピードが速くなります。
この場合、標準値より粘度を高くしたほうが乗りやすくなると思います。(筆者の感覚ですが)
ちなみにフォークオイル交換後のLEOは、フロントかなり硬め。ブレーキがフルノーマルなので、ホースをステンメッシュに換えると、硬さ的に(#40.27が)ちょうど良くなると予測しています。
中級者向けの話
ある程度、ブレーキングのスキルが備わっている前提での話になるが、自分のペースで走った時、ブレーキでサスペンションのストロークをコントロールできるか? それも指標の一つになる。
サスペンションの硬さが適切なら、ブレーキングの強弱で自在にストローク量をコントロールして、コーナーリングすることができる。逆に硬すぎたり、柔らかすぎると、ライダーの意思とバイクの動きが、ちぐはぐになってしまう。
粘度・油面調整で無理な場合のチューニング方法
粘度調整や、油面調整はある意味、ONかOFFかの二者択一になります。
「フォークが沈み始める最初だけ柔らかくして、もっと深く沈んだところは硬くしたい」
という微調整はできないです。油面や粘度を変えると、全体(高速・低速の伸び側・縮み側)が一緒に変わります。
そこでサーキット走行や、スポーツ走行をする場合、下記のようなパーツに交換します。

より細やかなセッティングができるようにするためのアップグレードキットです。
YSSの例ですが、フォークキャップ(プリロードアジャスター)、フォークスプリング、PDバルブがセットになっているアップグレードキットが販売されています。
とくに125ccなど軽量クラスでサーキット走行・スポーツ走行をする場合、フロントフォークは不満が出やすい箇所です。たとえばGSX-R125、CT125ハンターカブや、モンキー125ですね。
パーツを交換する場合、最もベーシックなのは(フロントの場合)フォークスプリング交換です。
キットだけではなく、フロントフォークスプリング、PDバルブなど単体でも販売されています。
本格的なレース用だと、カートリッジキットがあります。
カートリッジキットはスーパーバイク世界選手権(WSSP/WSSP300クラス)や、ヨーロッパのロードレース選手権などで使用されています。


フロントフォークを丸ごと交換する、という方法もあります。
これはYSS JAPANで開発されたKG308R / KG308Sという製品です。


インナーチューブはDLCコーティングされています。
嵌合長を長くする事により倒立フォークに迫る剛性を実現。インナーチューブは耐摩耗性、硬度、フリクションの全てにおいてチタンコートとは比較にならない優れた特性を持つDLC(ダイヤモンド・ライク・コーティング)仕上げ。
YSS JAPAN
余談ですが、インナーチューブのコーティングには、ほかにチタンコーティングなどがあります。

フロントフォークに簡易的に手を入れる場合、インナーチューブをコーティングする手法もあります。
色のちがいは、硬度のちがいです。また、コーティングの種類によって摩擦係数(滑らかさ)がちがいます。

「パーツ交換は敷居が高い」
という場合や、そもそもフォークスプリングが手に入らない場合、油面や粘度を変えるだけでも、変化を感じられますよ、というのが本記事でお伝えしたい話。
一般的にサスペンションに着目するライダー、こだわるライダーは少数派です。
(サスペンションを気にするライダーの多くは、オフロード経験者や、レース経験者がほとんど)
ただ、サスペンションは一部のライダーだけしか分からない(体感できない)特殊なものではなく、公道をふつうに走るライダーであっても変化は十分、感じられます。
むしろ、初心者ほど恩恵を受けやすいといえます。
サスペンションを知れば知るほど、より楽しく安全に走れることは間違いないと思います。
純正と比較して2倍の耐久性、低フリクション性を備えたフォークシールキット。

完ぺき主義になるな
何事でもそうですが、あまり完ぺきを求めすぎないようにしましょう。
たとえばの話、
「低速、中速、高速すべてのコーナーで、路面にどんなに大きなギャップがある場所を走っても、全部おなじように気持ちよく乗れるようにしたい!」と思っても、無理があります。
開発の際、あるていど照準を絞って仕様を決めるので、矛盾をいかに妥協させるか、どう着地させるかが、セッティングです。
相反するものを、いかにバランスをとるか。
ビジネスでたとえると、価格設定と製品クオリティに似ています。
自然栽培で、新鮮な無農薬野菜を豊富につかったオーガニック料理で、おいしくて、見た目もきれいに盛りつけられていて、ボリュームもあって、ワンコインで食べられる定食。
矛盾してますね。
ちゃんとした無農薬野菜は必然的に高くなりますし、料理だって同じです。
でも高すぎると、売れにくくなります。つまり良い製品だから売れるとは限らないわけです。
一般的に価格を安くすれば売れやすくなりますが、利益が減ります。
企業にとって利益は人間の血液と同じなので、利益が少ない=経営が続かないという事になります。
実際、業界や業種を問わず、極端にクオリティの高すぎる製品をつくる会社は最終的に経営破綻しています。バランスの取れた状態、ほどほどが良いのです。
バイクのセッティングも同じ。
あんまり完ぺき主義というか、神経質になりすぎないほうがいいと思います。
優先順位を決める
たとえば、自分がふだんバイクで走っているシーンの割合が「市街地走行95%以上:峠5%以下」だとします。
一般的には「95%の市街地走行でスムーズに走れるようにしたい」と考えます。
峠を犠牲にするとはいかないまでも、そこまで重要視しないでしょう。ただし、これはライダーや、バイクによって異なります。
筆者の場合、たとえ5%以下であっても峠道で最大限、楽しめるようにしたいので、95%が多少、犠牲になっても構わないと考えます。
(もちろん限度はあります)
つまり自分が一番、気持ちよく走りたい場所に合わせて、ブレーキやキャブレター、サスペンションをセッティングするわけです。
サスペンションに話を戻すと、あまり路面の大きなギャップにこだわらなくていいと考えます。公道の場合、そもそも無用なギャップは避けたほうがいいからです。
万一、フルブレーキング時に大きなギャップを通過した際、危険な挙動がないレベルで良しとします。
あえて、大きなギャップで100点満点を目指す必要性はないと思います。
割合的に0.1%、あるいは0.001%以下に満たないであろう大きなギャップをどうにかしようと、躍起になってもあまり大きな恩恵が得られないからです。
むしろ、ほかの部分で乗りにくくなってしまいます。
サーキットとはちがうので、公道でやむなく大きなギャップを通過する場合、ブレーキをかけて、スピードを落とせばいい。自分の走り方、意識を変えればカバーできることはたくさんあります。
バイクとライダーの関係性
ビギナーほど、バイクの操作性、機能に頼らざるを得なくなる。運転に慣れていない初心者の場合、自分のライディングを変えるだけの余裕も技量もないからだ。
上級者になるほど、バイクに合わせて乗り方、走り方を変えることができる。
これは公道でもサーキットでも同じ。
ちなみにMotoGP 元ホンダワークスのサスペンションエンジニアの方いわく「MotoGPライダーは天才集団なので、サスセッティグに細かいこだわりがない。なんでも乗りこなしてしまう」とか。
もちろん、もともとのサスセッティング、マシンづくりが高い水準にあるという事もいえるが、興味深い話だ。
コーナーで曲がれない原因
バイク側の問題ではなく、ライダー側(ライディング)に曲がれない原因がある場合の話。
(サーキット走行をされている方にとっては常識だと思います)
視線、走行ライン、ブレーキング技術、アクセル操作、姿勢・・・スムーズにコーナーを旋回するためには、いくつか大事な要素があります。
そのうち公道ライダーがあまり知らない1つを例にあげます。
ブレーキレバーを完全に離した状態でコーナーリングしようとする
コーナーに進入する際、
「ブレーキングはカーブ手前で終えろ。バイクを倒し込むときはブレーキレバーを離せ」
筆者の記憶が確かなら、教習所ではこのように指導していると思います。
つまり、ブレーキレバーを引いて減速する→レバーを離す→バイクを倒し込む、という流れですね。
ところが、ブレーキレバーを完全に離すと、沈んだフロントフォークが伸びきってしまいます。フロントフォークが伸びた状態だと、バイクは倒し込みにくくなります。
これが自分の思うようにバイクが曲がってくれない原因ということもあるわけです。
逆に
ブレーキレバーを引いて減速する→レバーを軽く引いたままにする→バイクを倒し込むだと、おどろくほどバイクは旋回します。
ブレーキング後、ブレーキレバーを引いたままにすると、フロントフォークが少し沈んだ状態になります。すると、フロントタイヤが路面におさえつけられます。フロントタイヤがグリップした状態ですね。
いっぽう、ブレーキング後、ブレーキレバーを完全に離すと、沈んでいたフロントフォークが伸びきってしまい、フロントタイヤのグリップを失います。
完全にゼロ、というわけではありませんが、ブレーキをかけた状態と比較すると、グリップ力は低くなります。
「ブレーキレバーを握りっぱなしで曲がると、危ないのでは?」
もちろん、力いっぱいブレーキレバーを握った状態でバイクを倒し込む(バンクさせる)と、いわゆる「握りごけ」になって、フロントから転んでしまいます。
ですので、ブレーキング(減速)時はいままでどおりにして、減速を終えたらレバーを引く力を弱くします。
(コーナーや、ご使用のバイク、速度、路面状況、ライダーによって力加減は変わります)
ポイントは、「沈めたフロントフォークが完全に伸びきらない程度にブレーキレバーを引く」イメージです。
「握る」と「引く」のちがい
筆者がブレーキレバーを「引く」と表現しているのは、「握る」という表現だと、力いっぱい握るイメージを持つ人が多いからだ。実際は、ブレーキレバーは繊細な力加減で「引く」ものだし、筆者もそういうイメージで操作している。
スロットル操作も0.1mm単位で操作するイメージだ。
「ブレーキレバーを完全に離すタイミングは?」
サーキットの場合、クリッピングポイント(バイクが一番、寝ている状態)でブレーキレバーを離して、スロットルを開けて加速します。

《モータースポーツ》クリッピング・ポイント◆コーナーを早く通過する際、競技者がコースの最も内側に近づく(目標となる)ポイント。
https://eow.alc.co.jp/
公道で安全にコーナーリングするには?
「ライディングレッスン」で教えている内容が危険な理由
公道の場合、サーキットと違って不測の事態に備えることが最優先です。
公道に「最速」なんてありませんから、クリッピングポイント=バイクの向きを変えるポイントとイメージしておけばいいと思います。
筆者がコーナーリングする場合、コーナーの出口で駐車している車、Uターンする車、歩行者、落下物など、なにかしら起きることを想定して走っています。
(いずれも実際に体験しました)
とくに、センターラインをはみ出してくる車(あるいはセンターラインのど真ん中を走る車)は、公道ではごく当たり前にいるので、かならずアウト側を走行します。
コーナーではイン側(センターライン)に寄らないラインで旋回するわけです。

右コーナーの入り口でブレーキングして、軽くブレーキレバーを引き、フロントフォークを沈めた状態でコーナーに侵入します。この時、必要以上に車体を傾けないでクリッピングポイントに進みます。
めいっぱい車体を傾けると、緊急回避できないからです。
公道だと、旋回中はもちろん、コーナーの出口にも危険がありますからね。
(車体の向きを変えるという意味での)クリッピングポイントあたりでコーナー出口の安全を確認してから、ブレーキレバーを離し、スロットルを開けて加速しています。
サーキット走行の例とは、まるで異なる走行ラインになります。
ほかにも、
バイクメディアでよくある「ライディングレッスン」で教えている事と、筆者がお伝えしている内容はちがっていると思います。
個人的には「ライディングレッスン」で教えている内容をそのまま鵜呑みにすると、危険だと感じています。
ワインディングを華麗に走るライディングのほとんどが、対向車がセンターラインを越えることを考慮していないからです。
(過去、メディアの撮影中、死亡事故が起きた例があります)
冒頭でもお伝えしたとおり、センターラインをはみ出してくる車はもちろん、はみ出すレベルではなく、完全にセンターラインの真ん中を走る車もいます。
自分がどれだけ上手く運転しても、ルールを守らない相手(周囲の車両や歩行者)もいます。
それが公道であり、峠道の現実です。
お伝えしたのは、それらを踏まえた上での走行ライン、走り方になります。
筆者は数え切れないほど、これで事故を回避してきました。(多い時で1日3回。いずれも対向車は自動車)
それでは、もう一度、流れを整理しておきましょう。
まとめ
1,コーナー手前でブレーキレバーを引いて減速する
2,レバーを軽く引いたまま(フロントフォークを少し沈めた状態)にする
3,バイクを倒し込む
初心者や車種によっては「ブレーキレバーを完全に離すと同時に倒し込む」というやり方でもいいと思います。
4,スロットルをパーシャル(加速も減速もしない状態)にする
5,クリッピングポイントでブレーキレバーを離し、スロットルを開けて加速する
本格的にパーシャルをマスターするには練習が必要なので、公道ではあまり無理にやらなくてもいいと思います。「スロットルを完全に閉じて曲がろうとしない」「加速しない程度にスロットルを開ける」と覚えておきましょう。
※サーキットで速くなるためにはパーシャルは必須です。
自分はどこまでができていて、どこができないのか? それさえ知れば、解決方法はいくらでも見つかります。
もし「ブレーキをかけるのが怖い」というのであれば、ブレーキングの練習から始める。1つずつ正しいアプローチで練習すれば、公道を安全かつ、スムーズに走れるぐらいには誰でもなれると思います。
最短でバイクをうまく操れるようになるには?
自分のスキルや目的に合ったライディングスクールに参加するのも一つの手だと思います。
もし、筆者が初心者で、いまから最短で上達を目指すのであれば、初心者向けのフラットトラック(ダートトラック)のスクールに行きます。
人間か、バイクか?
ライディング技術の向上 × バイク側のセッティング
両方をセットでとらえると、相乗効果で走りやすくなると思います。
筆者が(きちんと整備されていて、ヘンな改造をされていない)バイクに乗って、思うように走れない場合、「自分の乗り方が間違っている」と考えるようにしています。
いっぽうで、明らかにポジションやセッティングが自分に合ってない場合、素直に調整した方が乗りやすくなります。
前後サスペンションのバランス
サーキット走行の場合、タイムという明確な指標があります。
端的にいえば、乗り心地が良い、悪いに関係なく、タイムが縮めば正解。走行フィーリングが良くても、タイムが遅ければそのアプローチは適切ではなかったという事になります。
ところが公道の場合、タイムのような明確な指標はありません。
良いか、悪いか、自分で判断することになります。
公道はサーキット以上にさまざまなシチュエーションを走りますし、ライダーのライディング技術もバラバラ。免許取り立ての初心者もいれば、中級者・上級者もいます。
だからメーカー出荷時の状態は、基本的にどんな時でも万人が、(たとえば)70点以上で走れるようなサスペンションセッティングにします。
公道の場合、乗り心地も重要な要素になってきます。腰が痛くならないとか、疲れないとかですね。
ただ、乗り心地を追求したサスペンションは、公道を走るぶんには良くても、サーキットでペースを上げていくと支障が出てくる(柔らかすぎる)ことがあります。
なのでフロントや、リアサスペンションを交換したり、こまかく調整するわけです。
ちなみに公道・サーキットを問わず、サスペンションのバランスは、前後ともおなじストローク量(50:50)にします。
(さきほどのLEOみたいにフロントだけ硬くする、ということは通常やりません)
具体的にはフルストロークした状態を100%とした場合、サーキット走行なら前後とも90%から95%ぐらい(公道は80%ぐらい)まで沈むようにします。
ストローク量、伸び縮みする速度が前後おなじくらいが理想です。

リアサスペンションのダンパーのストローク量は、バンプラバー(下の黒い部品)に届かない8割程度まで沈むようにセットされています。
その沈む位置(ストローク位置)を調整するのがイニシャル調整です。
フロントも同じ要領でストローク量を調整します。
ただフロントはリアほど、シビアにしなくても走れると思います。
公道で300km/h、200km/hからフルブレーキングする(できる)人ってほぼいないし、コーナーリング速度も(サーキットと比較して)そんなに出せないですからね。
もし、「俺は公道でも200km/hでコーナーリングするぜ!」という人がいたら、たぶん早死にすると思います。
1Gって意味あるの?
サスペンションセッティングによく出てくる1G(ワンジー)という考え方があります。
イニシャル調整(プリロード調整)をする際の具体的な手順を示した概念です。
サスペンションのストローク位置が大事なのは議論の余地はありませんが、この1Gという調整方法について筆者が知った時、疑問に思いました。
「バイクが止まっている状態で調整して、意味あるの?」
有限会社ガレージ湘南代表 日向社長に質問してみたり、自分でも調べてみました。
結論として、レースをやっている人は1Gでサスセッティングをおこなわない傾向にあるようです。
理由は「実際にバイクで走った時のストローク位置が重要なのであって、止まってるときに調整しても意味ない」「静止状態で合わせても、実際に走ってみたら合ってないことがある」からだそうです。
同じ理由でヨシムラでも、1Gによるサス調整はおこなっていないようです。
調べたところ、いつ、だれが、どんな目的で1Gを言いだしたのか、明らかではありません。なんとなく、慣習的におこなわれている印象です。
まったく無駄とはいいませんが、「1Gで合わせたからサスセッティング完了」と考えるのは早計でしょう。

ちなみに筆者はストロークセンサー(タイラップ)を使って、イニシャルを調整しています。
もっとも深くストロークした際、どこまで沈んでいるかが分かります。(写真は底付きしている状態)
サーキットで速く走るサスセッティング
サスペンションのおさらいです。
もっとも重要で効果が高いアプローチは、クリッピングポイントの速度を上げること。
物理的に解説すると、
クリッピングポイントの速度が速い→必然的にコーナー立ち上がりの速度が速くなる→ストレートでのスピードも速くなる→タイムが縮む(結果)
怖いのを我慢してブレーキングポイントを遅らせたり、根性でアクセルを開けても、コンスタントに速いタイムで走る事はできない。むしろ、転倒のリスクが増えるだけ。
あくまで結果から逆算して、目標を設定し、クリアしていく。
練習走行も同じ。
「タイムを縮める」という結果だけにフォーカスすると、(初心者クラスから抜け出した後)タイムが向上せず、迷走したり伸び悩むことになる。(プラトー現象)
「クリッピングポイントの速度を上げるには何が必要か?」
ライダーにブレーキング(ジャックナイフができるレベル)や、ライン取りなど、基本的なライディングスキルが備わっている前提でいうと、たとえばマシンセッティング。
その中でサスセッティングでいうと、サーキットごとのタイムを縮めやすいコーナーにフォーカスする。
(すべてのコーナーでライバルより速く走るのは無理)
その上で前後サスペンションのストローク量が80%から90%ぐらい沈むようにする。(フロントとリアのバランスは同じにする)
タイムに大きく影響するコーナーの、クリッピングポイントの速度が上がれば、おのずとタイムが縮む。
そのためのセッティングであり、ライディング(アクセル、ブレーキング)という考え方。
以上はロードレース世界選手権500ccチャンピオン ケニー・ロバーツ(1978、79、80年)氏の理論。

ケニー・ロバーツ(Kenny Roberts)
1951年12月31日生まれ。アメリカ合衆国カリフォルニア州出身。ロードレース世界選手権500ccクラス(現MotoGPクラス)3年連続チャンピオン(1978年-1980年)。
レース引退後は、ヤマハのチームマネージャー(監督)として後進を育成。レイニーやコシンスキー、世界チャンピオンを輩出。
息子のケニー・ロバーツ・ジュニアは、2000年 500ccクラスで世界チャンピオンになり、世界初の親子チャンピオンが誕生した。
ウエイン・レイニー(500cc ’90-’92)
ジョン・コシンスキー(250cc ’90/スーパーバイク世界選手権 ’97)
ちなみに現在の奥さまは熊本県出身。その縁で「ケニーロード」(グリーンロード南阿蘇)の愛称がつけられた。
日本だと、ヤマハの元開発ライダー本間利彦氏が、ケニーさん流アプローチを自身のYouTubeで解説されている。
ライディング ch HOMMA TOSHIHIKO 「基礎の基礎」
〜ブレーキングやアクセルで速く走れない理由〜
ケニー氏の著書は、時代を超えて本質的なことが書かれているので、プロレーサーを目指す人は当然として、よりサーキットを速く走りたい人や、もっとうまくなりたいと考えるライダーにとって、多くを学べると思います。
「世界チャンピオンになるライダーと、そうでないライダーの違いは何か?」「繰り返しチャンピオンになるライダーと、そうでないライダーの違いは何か?」もっとも重要なヒントが得られた本。
レースだけではなく、仕事や人生など、どの業界や分野にも共通することだと日々、実感しています。
本のタイトルには「テクニック」とあるが、そのほうが売れるからタイトルにしたのだと思う。
正確には「考え方」(マインドセット)が正しいと思う。小手先のテクニックではなく、みずからテクニックを生み出す本質的な考え方が書かれているからだ。
余談になるが、ケニー氏のレーシング理論は、普遍的に上達する秘訣が書かれているので、公道を安全に走る上でも役に立つ。
感覚的な速さと実際の速さはちがう
世界GPライダーが走行して、「あんまり速くないな」と感じても、タイムは速くなっていた、という事が実際にあったりします。
タイムという指標があるぶん、サーキットは感覚と実際のズレを認識しやすいといえます。
ところが公道だと、ライダー(自分)の感覚で判断することになります。自分が感じた感覚をどう解釈するか? どう結論づけるかで、方向性がズレたりします。
より的確な結論を導き出せるのが、プロとアマチュアの違いだと筆者は実感しています。
なので筆者も自分の感じたフィーリングや、導き出した考えをプロにぶつけて、フィードバックしてもらってます。
そうすることでまちがった解釈をしていたり、思い違いをしていたら気づけますからね。
(独学だと30年、40年、間違っていることに全く気づかないこともあります)
日々、勉強です。
フラットトラックでのトレーニング
速く走る、うまく走るための方法として、紹介します。
フラットラック(ダートトラックとも呼ばれる)は、未舗装のオーバル(だ円)コースを周回する競技です。
本格的にロードレースをやっている人にとって、常識といえるぐらい有名な練習法ですが、じつは、街乗りライダーにとっても有力な練習の場です。
まずは、実際に走っている様子を見てみましょう。
0:59の映像を見るとわかるように、雪上でありながらバイクのスライドをうまくコントロールしています。
現実には、雪や氷の上を走ることはないと思いますが、一般公道を走る場合でも、路面に砂が浮いていたり、鉄板の上を通過したり、濡れた路面を走ることはあります。
そういう時、もし、バイクがスライドしたらどう対処しますか?
多くの場合、パニックでとっさに急ブレーキをかけると思います。即、転倒です。
(筆者の友人も納車して、わずか3日ほどで転びました)
長くバイクに乗っているとわかると思いますが、これって、誰にでも起こりうることです。「制限速度を守っているから安全」じゃないのが公道です。
フラットトラックの利点は、オンロードを走るよりもずっと遅い速度(低リスク)で、マシンをコントロールする術を身につける事ができるし、マシンコントロールを失うまで攻めても転倒しないことだ。
(ケニー・ロバーツ)
ケニーさんの言葉どおり、自分のバイクがどういう時に、どんな動きをするのか、どのように乗ればいいのか、を比較的、安全な速度で体験できるのがフラットトラックのメリットだと思います。

往年のファン以外の方に説明すると、ケニーさんはフラットトラックで培ったライディングスタイルを、世界GP(現MotoGP)に持ち込みました。
「2ストローク500ccのマシンは、スタートからおよそ3周から5周くらいでタイヤが滑り出す。その後はずっと、氷の上を走っているようなものです」
(ある日本人ライダーの言葉)

膝を出す「ハングオン」(正確にはハングオフ)スタイルですね。
当時の世界GPでは、ヨーロッパ出身のライダーがほとんど。彼らは「ヨーロピアンスタイル」(膝を出さないで曲がる)で乗っていました。
ただ、ヨーロピアンスタイルだと、(フロントタイヤに依存するため)タイヤが消耗したり、ウエットコンディションだと、転倒しやすいという背景がありました。
そこで「ハングオンスタイルのほうが理にかなっているのでは?」と考えたケニーさんは、自分のメカニックに反対されたり、ほかのライダーから嘲笑されても自身のスタイルを貫きました。
結果は、さきほど紹介したとおり、3年連続で世界チャンピオンになりました。
おもしろいですね。
それまで「お前、なんでそんな変な乗り方をしてるんだ」とバカにしていたライバルたちが、こぞってケニーさんのライディングスタイルを真似し始めたのですから。

フラットトラックでライディングの基本を身につけた。スライドしたときの対処方法や、スロットルコントロール、ライディングポジションの大切さを学んだ。私のライディングスタイルの起源はそこからきている。
(ミック・ドゥーハン)
5年連続で世界チャンピオン(1994年〜1998年)に君臨したドゥーハンは、自身の速さの秘密をフラットトラックで身につけたと語っています。
※オーストラリアのフラットトラックは、アメリカと違ってオーバルコースではなく、左右にコーナーがあるそうです。
ちなみに、海外レーサー(こどもたち)のトレーニングを見ていると、当たり前のようにフラットトラックや、モトクロスを取り入れています。
もちろん、現役MotoGPライダー然りです。
フラットラックで初めての大型バイクを乗りこなす
まだ、筆者がフラットトラックや、ケニーさんの理論もなにも知らなかった頃の話。

中古のRZV500Rを買って、乗ってみたものの、想像とはぜんぜん違いました。
そもそも、きちんと整備されていたかどうか不明ですが、切り返しがもっさりしていたり、フロントフォークが沈まなかったり、ブレーキの効きがイマイチだったり・・・
一番、違和感があったのはフロント16インチ、リア18インチという尻上がりなポジション。
コーナーで、フロントタイヤが切り込んでいくようなフィーリングが、どうにも馴染めませんでした。
(現行モデルのNSR250Rにしたほうが良かったかな〜)と、3秒ほど後悔。
しかし、買った以上は「どうにかして、乗りこなしてやろう」と思い、巧くなるための方法を考えました。
現在のようにインターネットや、YouTubeがなかったので、数冊しかないライディング本を読んで、練習していました。
ちょうどその頃、ミック・ドゥーハン選手がWGPで圧倒的な強さを誇っていた(1997年戦績:シーズン15戦中12勝、10連勝)ので、彼のインタビュー記事を全て読んでいました。
(筆者の記憶ちがいかもしれませんが)インタビュー記事の中で、「トレーニングではトライアルをやっている」と書かれていました。
「トライアル? ちょっと調べてみよう・・・」

「これか!」
トライアルはちょっとハードルが高すぎるので断念。
しかし、注意深く調べていくと、「スロットルワーク」と「スライドコントロール」が、バイクを巧く操る上で鍵になることがわかりました。
すでに社会人で、絶対にバイクを壊せない、怪我できない状況のなか、ダートの空き地を見つけて、夜な夜な練習していました。
まぁ、練習といっても、フラットラックと言えるレベルではありませんでしたけどね。
最初はRZV500Rでチャレンジしていましたが、途中から仕事用のカブに切り替えました。
(バイクを壊したら帰れなくなるし、怪我したら仕事に穴があく)
ある時、雨上がりの市内をRZV500Rで走っていると、ほぼ直角の右コーナーでフロントがスリップしました。
避けられないぐらいの数のマンホールが、ずっしり並べられている暗黒地帯です。

「あ、滑った!」
と思うより早く、反射的に身体が動いていました。
自分でも気がつかないうちに、バイクが滑ったときの対処方法が身についていたんですね。
「たった10kmでもダートを走ったほうが、オンロードよりはるかに学ぶ事が多い」
実感したものです。
同時に「バイクの教習所で絶対にダート走行を取り入れたほうがいい」とも思いました。
(ずいぶん時間が経ってから、ケニーさんも同じ事を言ってたと知りました)
公道ライダーがフラットトラックをやるメリット
・ブレーキング
・スロットルワーク
・バイクが滑ったときの対処法
・ライディングポジション
これらの技術を身につけていると、よっぽど滅茶苦茶な走り方をしない限り、公道で「カーブが怖い」とか、「ブレーキが苦手」ということはなくなると思います。
バイクに対する恐怖が無くなると、周囲の交通状況とか、路面の状態とか、ほかのことに意識を向けられる余裕が出てきます。
同時に「これ以上は危険だな」という一線がわかるので、そもそも無茶な走りをしなくなります。
以上、個人的にフラットトラックはお勧めです。
さいわい、ビギナー向けのフラットトラック ライディングスクールがあるので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。
免許を取って間もない女性ライダーも参加されているようです。
もちろん、雪の上は走らなくていいので、安心してください。
フラットトラックのマシン紹介
おまけとして、フラットトラックで使用するバイクを紹介します。
ライディングスクールでは50ccとか、125ccのマシンを使用すると思いますが、レース用マシンは、こんな感じの仕様になっています。

基本的なスタイルとして、フロントブレーキが撤去され、リアブレーキのみを使用します。
(フロントブレーキを付けたままでおこなうレースもあります)

ホイルは19インチが主流。タイヤはオフロードタイヤに見えますが、フラットトラック用のタイヤです。





開催されるレースのレギュレーションによって、ベースとなるバイクはさまざまです。


TX500のように旧車をベースにしたり、最新のオフロードマシン(KTMなど)をベースにしたり、2ストロークをベースにしたマシンもあります。
ここで紹介した以外にも、ヤマハ XS650、MT-07、ハーレーのXR750、ドゥカティのScrambler Flat Track Proなど、海外では多様なバイクがベースマシンとされています。
日本の場合、ホンダFTR223(FTR250)のほか、CB400SS、スズキ グラストラッカーなどをベース車両にするようです。
市販されているフラットトラックマシン
2023年現在、日本車でフラットトラックマシンは販売されていません。
250ccぐらいのエントリー用マシンが発売されたら、おもしろいのですが。
輸入車だと、ファンテック、モンディアル、tmレーシング(レース専用)があります。試乗車や、走行会もあるようなので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
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参考