「ガソリン添加剤は本当に効果あるのか?」
私自身が疑問を感じて、2年11ヶ月間(2014年〜2017年)、バイクで3万km以上の実走行テストをおこなって検証しました。
そこからさらに4年かけてテストした結果をシェアします。
(プロ立ち会いの下、エンジンを開けて中身を自分の目で確認しました)
おそらく、あなたが一番興味あるのは「本当にメーカーの広告に掲載されているビフォー・アフターの写真みたいにエンジン内部がキレイになるのか?」という事だと思います。
エンジン内部にカーボンが蓄積する決定要因(証拠あり)についても紹介していきます。
テスト条件
走行シーン:市街地、ツーリング、峠など一般道と高速道路
走り方:混雑や渋滞を除いて6000rpm以上で走行
エンジンオイル:メーカー指定粘度オイルを3000km毎に交換

使用した車両

HONDA CB125T(のちに142cc化)
空冷OHC2バルブ並列二気筒
キャブセッティングが狂っているとか、検証に影響する大きな不具合がない状態でテスト。
使用したガソリン添加剤
・タービュランス GA-01、GA-02
・ワコーズ フューエル1
・ニューテック NC-220
・SUPER ZOIL フュエルチューナー
・PEAエンジンコンディショナー
他社と他社のガソリン添加剤が混ざらないように配慮してテストをおこなっています。
メーカーが広告宣伝しているほどの効果はない
これが証拠です。
1回目 中古で購入したCB125Tに使用


メーター走行距離37,526kmで腰上エンジンオーバーホールを行った時のバルブとピストンです。カーボンがカチコチに固まっています。ちなみにガソリン添加剤使用後の状態です。
エンジンオーバーホールまでの経緯
メーター走行距離
28,300km:ガソリン添加剤を使用開始
30,411km:A社のカーボンクリーンを施工
34,916km:B社のカーボンクリーンを施工
カーボンクリーンとは、エンジン内部に直接、専用の洗浄液を注入して、エンジン内部を清浄すると言われる手法です。
一般的に費用と手間がかかる分、ガソリン添加剤よりもカーボンクリーンの方が効果は大きいとされています。にもかかわず、ご覧のとおりカーボンは固着したまま。

ワイヤーブラシで磨いても取れないぐらいにしっかり固まっていました。
エンジンをオーバーホールした経験がある方ならわかると思いますが、カーボンって、本当にちょっとやそっとじゃ取れません。カーボンって、油汚れみたいなイメージがあるかもしれませんが、セメントとか、海のフジツボみたいなものです。
念のために申し上げると、テストを行ったバイクに不調はなく、カーボンクリーンの施工中・施工後はガソリン添加剤を使用していません。
以下、分解したエンジンの様子。
※ガソリン添加剤を使用したことがあるかどうかは不明

CB750Fは平均的なカーボンの付着ぐあい、CBR1000RRはカーボン多めです。

カチカチのカーボンがびっしりついたCB900Fのバルブ。
このようにほかの車種を見ると、エンジン内のカーボンがどのくらい付着しているかが、お分かりいただけるかと思います。いずれもカーボンが固着していて、ちょっとやそっとで取り除けないことには変わりありません。
(パーツクリーナーや灯油などを使って、金ブラシでこすっても落ちない)
新品のエンジンにガソリン添加剤を使用したら?
1回テストしたぐらいでは、たまたまという事もありますよね。
次に142cc化して、シリンダーやピストンが新品になったのを機に「新品のエンジンにガソリン添加剤を使用し続けたら一体、どうなるか?」を検証することにしました。
「エンジン内部の汚れを抑制する」
広告宣伝のとおりなら、前回ほどカーボンが固着しないはずです。
テスト条件は1回目と同じ。ただし今回はカーボンクリーンは行っていません。
2回目の検証結果
ガソリン添加剤を継続的に使用して、30,000km走行したエンジンをオーバーホールしました。



驚きました。もはやショックでしたよ。
1,080基以上のエンジンオーバーホールを手がけてきたバイクショップのオーナーにも「ここまで汚れているのは見たことがない」と言われてしまいました。
私自身、ほかのバイクのエンジンを60基以上(執筆時点)、見ていますが今のところ、自分のエンジンがトップクラスで汚いです。
定期的なオイル交換を怠っていたり、使用しているオイルが粗悪であれば、このようにエンジン内部が汚れているケースはめずらしくありません。ですが、1回目の検証と同じく、良質なオイルを3000km毎に交換していますので、エンジンオイルが原因とはちょっと考えにくいです。
走り方やマシンの不具合も考慮しましたが、ちがう様子。低回転で走るどころか、渋滞以外は6000rpm以上で走っています。
逆に、ガソリン添加剤やハイオクガソリンを使わなくても、キレイなエンジンはあります。
定期的にオイル交換をしているエンジンです。
そういった意味でガソリン添加剤を使用したり、カーボンクリーンを行うより、きちんとエンジンオイルを交換しているほうが結果的としてエンジンには良いと言えます。
オーバーホールしているエンジンを60基以上観察して、そう思うようになりました。
新車で購入して8万km、10万km以上、エンジンのオーバーホール無しのバイクに乗っている方に話を聞くと、定期的なオイル交換と、無茶な乗り方をしない、といったごく当たり前のことを実践しているとおっしゃっていました。
燃料 VS エンジンオイル ~カーボンがたまる決定要因~
ある日本の科学者の方々が2ストエンジンで実験したところ、燃料(レギュラー or ハイオク=オクタン値)の差よりも、使用するエンジンオイルによって顕著な差があったそうです。(研究結果)
3回目の検証結果
「ガソリン添加剤を使わず、エンジンオイル交換のみをおこなった場合、どうなるのか?」を検証。
・・・皮肉な結果になりました。ガソリン添加剤を使用した時より、エンジン内部がきれいでした。

検証結果まとめ
ガソリン添加剤はメーカーが宣伝するほど劇的な効果は期待できない
むしろメーカーさんには、どんな条件下で使用すれば広告みたいに劇的にキレイになるのか、詳しいテスト条件を公表して頂きたいです。
正直、サーキットでも走らないと無理じゃないかと思うぐらい、現実離れしているように思うので。
あと、使用方法の詳細もですね。
変化と効果はべつもの
フォローするわけではありませんが、ガソリン添加剤の効果がゼロとは言いません。
ただ、広告宣伝が言い過ぎなんじゃないかと思うだけです。「カーボンを取り除く」ではなく、「カーボンの付着を抑止するかもしれない」と表現した方が的確でしょうね。
ちなみに「添加剤を入れてすぐ変化を感じた」というレビューをよく目にします。
あれは、エンジン内部がキレイになったからではなく、燃焼の変化だと思います。
インジェクションの場合は知りませんが、キャブ車の場合、レギュラーガソリン車にハイオクを入れると濃くなる傾向があります。そういった意味で、たとえばキャブ車のレギュラーガソリン車にハイオクを入れて走れば、「いつもと違う」のは、ごく当たり前。
ただ、一時的な乗り味の変化と、エンジンの中が綺麗になっているかどうかは別の話ということです。
筆者のようにガソリン添加剤を使用して、エンジンを分解して効果を検証した人って、どれぐらいいるでしょうね?
エンジン洗浄目的外での使用
「エンジン内部をキレイにする」ことに執着しなければ、ガソリン添加剤を使うのもありだと思います。
燃費向上や、ドライビングフィーリングを楽しむとかですね。
たとえば、タービュランスのGA-02は摩擦低減剤が入っているので、4ストバイクなのにエンジンブレーキの効きが弱くなって、走りがとても楽しかったです。
正確には覚えていないけど、燃費も+5km/Lぐらい良くなりました。
もし、たまにしかバイクや車に乗らないのであれば、定番のワコーズのフューエルワンがお勧めです。
ガソリンの劣化を防いだり、ガソリンタンク内のサビ防止効果があります。
レギュラーガソリンは約3ヶ月、ハイオクは約6ヶ月が使用の目安。それ以上経過すると、だんだんガソリンが腐った状態に変質するのでご注意を。
ガソリン添加剤を入れすぎたらどうなる?
気になっている人が多いみたいなので、書いておきます。
筆者は、うっかり規定量の10倍のガソリン添加剤を入れてしまった事があります。
どうなったか?
しばらく気がつかずに走りましたが、どうもなりませんでした。
「ちょっと濃い(空気とガソリンの混合気に対して、ガソリンが多い症状)かな?」
とは思いましたが、走行不能になるとか、そういう事はないです。
インジェクションだと、ECUがどのように反応するのかわからないですが、キャブ車の場合、入れすぎの状態のまま長距離を走行しなければ大丈夫だと思います。
(少なくとも私はそうでした)
万が一、ガソリン添加剤を入れすぎたら、上からガソリンを入れたら薄まります。規定量の10倍は多すぎますが、ほんの少し規定量を超えたからといって、すぐ故障するものではないのでそんなに心配しなくていいと思います。
ただ「ちょっと規定量より多めに入れてみよう」というのは止めた方がいいですね。
たくさん入れれば、効果がUPするわけじゃないですから。
メーカーの説明書にある規定量を守りましょう。
ガソリン添加剤を使うべきか否か?
経験という意味では、一度くらい試すのはいいかもしれません。
ただ、リスク(不確実性)があるという事を理解した上で、判断したほうがいいでしょうね。
筆者がリスキーだと感じるのは、バルブシートにカーボンが噛むことです。


4ストエンジンの生命線といえるバルブと、バルブシートの密着。(人間でたとえると呼吸器官です)
オレンジ色の塗料は、光明丹(こうみょうたん)といい、バルブとバルブシートの当たり(密着度合い)をチェックするのに使用します。
写真はオレンジ色の線がところどころ途切れていたり、ムラがあります(黄色の矢印)
その部分がきちんと密着していないということです。
もし、ガソリン添加剤によって剥がれたカーボンがバルブシートに挟まると、密閉できなくなります。つまり、エンジン不調を招くことになりかねません。(もちろんその逆もあり得ますが)
カーボンクリーンほどではないにせよ、ガソリン添加剤の使用はリスクゼロではないという事を考えておく必要があります。
現在、筆者が「ガソリン添加剤を使用するか?」と聞かれたら、ほとんどの場合、NOと答えます。
例外
リッターバイクなど、あまり高回転までエンジンを回せないバイク、小排気量でも高回転までエンジンを回さない乗り方をする場合、カーボンが溜まりやすくなります。
そういった場合、一時的(短期的)に使用するのはアリだと思います。
ただ、ガソリンと空気に対して、ガソリンが多い場合や、点火系統の不良により、濃くなっている場合(いわゆるプラグが被っている状態)で使用すると、より濃くなるため、症状が悪化する可能性があります。
アクセルを開けた際に加速しなかったり、エンジンやマフラーにカーボンがたまりやすくなります。
総合的に考えると、アクセルの開け方に気を使ったり、エンジンオイルに気を使うほうが優先度が高く、効果的だと思います。
燃費は良くなる?
燃費目的でガソリン添加剤を使っていないので、なんともむずかしい質問です。
GA-02みたいに、向上する製品もあるかもしれませんが、周囲の環境や運転操作の影響が大きいですからね。
燃費に関していえば
・燃調が合っているかどうか(空気とガソリンの比率)
・タイヤの空気圧がきちんと入っているか(多くの人が見落としがち)
あとは乗り方、アクセルワークのほうが大きく影響してくると思います。
もし、ガソリン添加剤の使用目的が、「燃費向上」であれば、定期的なエンジンオイル交換や、オイル自体を変えてみるとか、エンジンオイル添加剤の使用をお勧めします。

