実際の使用例と油温テストの結果とレビュー。
メーカーの方に直接うかがった話や、バイクショップでの使用実績をレポートします。
ベリティオイル(Verity)とは
三和化成工業株式会社の自動車・バイク用潤滑油ブランドがVerity。
Verityブランドでは、自動車用エンジンオイル、バイク用エンジンオイルのほか、ケミカル用品を販売。
鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、長年にわたってロードレーサー加賀山 就臣(かがやま ゆきお)選手率いる「Team KAGAYAMA」のスポンサーを務め、入賞実績があります。
原油の精製から製品の生産までを自社でおこなう、メイド・イン・ジャパンのエンジンオイルです。
三和化成工業株式会社とは
1947年10月設立、神奈川県 横浜市を本拠とする潤滑油会社。
日本国内のバイクや、国内某自動車メーカーの純正オイルをOEM生産している老舗の潤滑油メーカー。
モータースポーツ以外では、工業用潤滑油ブランド「SAMIC」(サミック)がある。
ほとんどのオイルメーカーは、自社に工場を持たない「ブレンダー」だが、三和化成は工場(横浜・静岡)や、分析試験センターを持ち、開発・生産までを一貫して自社でおこなっている。
ベリティオイルの特徴
Verityは「真実」や「真理」という意味です。
ブランド名が示すとおり本質的な製品づくりをされていて、自社ブランド製品には、数々のOEM生産で蓄積したノウハウが生かされています。
またスケールメリットを生かして、エンジンオイル販売価格のウエイトをおおきく占める原油を、大量に仕入れることができます。
原油はまとめ買いすればするほど割安になるそうなので、コストをおさえて良質な製品を生産できるわけです。
一般的に、広告宣伝費が製品価格に上乗せされるのは潤滑油業界もおなじです。
三和化成の方いわく、事業としてはOEM(他社ブランド製品の製造)がメインなので、ベリティオイルを積極的に広告宣伝して、販売することはやってないそうです。
つまり広告宣伝にお金をかけないため、原価をおさえて製品にコストをかけることができる、と言えます。
自社ブランド製品とOEM製品のちがい
補足すると、OEM製品は発注元のリクエストに基づいて生産されます。つまり自社のこだわりより、発注元の意向(予算と納期)を優先しなくてはならないわけです。
その点、自社ブランド製品は比較的、コストをかけることができるため、クオリティ重視の製品が作りやすくなります。
ベリティオイルの知名度が高くない理由
筆者の個人的な感想として、
ベリティオイルはレース関係者や、使ったことがある人など、一部の玄人(くろうと)にしか良さが知られていない印象があります。
ビジネス的な視点でいうと、売れているオイルの中には、広告宣伝(ブランドイメージづくり)にお金をかけて、過大評価されたオイルが少なくないです。
実際、複数回テストして使った結果「大したことなかった」という事が何度もあります。
一般的な考えかた
「良い製品が売れる」
現実
「良さそうな製品が売れる」
マーケティング業界の普遍的な常識です。「事実よりイメージ」の世界なのです。
長年、さまざまな業界を見てきましたが、世の常と言えます。
潤滑油も同じ。
ベリティの場合、あまりにも宣伝しなさすぎるせいか、イメージどころか、知名度が低い。でも製品自体は良いから年々、少しずつリピーターが増えている印象です。
エンジンのプロショップが使用
バイクのエンジンオーバーホール専門店「有限会社ガレージ湘南」では、1,080基以上のエンジンを手がけていて、絶版車・旧車のほか、スーパースポーツ、外車にベリティオイルを使用されています。
代表の日向社長は、創業期のワコーズ(WAKO’S)オイルの開発ライダーを務めていました。
日向社長は鈴鹿8時間耐久ロードレースに15年連続で参戦。
公道レース マカオGPなど、海外や国内の耐久レースに出場。その間、国内外のさまざまなエンジンオイルを使用されたそうです。
多くの方が知っているメーカーから、マイナーなブランドまで、いろんなオイルを試した上で現在、使用しているエンジンオイルが、ベリティ「BIKE FS HR Ver3 10W-40」です。
CB750F/CB750/CB900F/CB1100R/CB1100/CBX400F/CBR400F/FTR223/CBR1000RR/CBR250RR MC22/VT250 SPADA/CB125T/CB1300SF/CBR650F/XR250
Z1/Z2/GPz1100F/GPz750F/GPZ900R/ゼファー750/ゼファー550/ゼファー400/Z750FX/Z550FX/Z550GP/Z1000MKⅡ/ZZ-R1100/ZX-10R/ZX-10/ZXR1200/ZXR1100/ZXR400
GSX-R1000/GSX1300R隼/GSX1100Sカタナ/GSX400Sカタナ/GSX400F/GSX400E/XJ750E/XJ400/XJR400R/WR250/FZR750
上記のほか、ハーレーやドゥカティ、BMWなど
筆者が把握しているだけで、これだけの使用実績があります。
参考:空冷エンジンに鉱物油は逆効果。むしろ100%化学合成油を入れるべき理由とは
ベリティオイルを1年間テストした感想
筆者は独自にオイルをテストして、他メーカーのオイルを使用していました。
が、せっかくなので、CB150Tでベリティオイルを1年間テストしてみることに。
HONDA CB125T改 2001年式(142cc化・軽二輪登録済み)
空冷SOHC 2バルブ2気筒 高回転型エンジン(オイルクーラー、オイルフィルター無し)
テスト方法:デイトナ製デジタル油温メーターを装着して通年、油温のモニタリング。
エンジン内に残ったオイル(他銘柄)が完全に抜けるよう複数回、オイル交換をおこなってから、テストを実施しています。
計測方法:コールドスタート後、油温が80℃を超えた状態から計測して、上限と下限を複数回テスト。
走行シーン:ストリート、峠、ツーリング、有料道路のすべて。
BIKE FS HR VER3 10W-40 MA 100%化学合成油
BIKE FS HR VER3は、ベリティブランドの中で最上グレードオイル。
市販オイルでありながら、実際に鈴鹿8耐で使用されているオイルです。(もちろん公道走行OK)
オイルのスペックを知らないまま、使用した感想として、ニューテックのZZシリーズや、NC50シリーズと甲乙付けがたい印象です。
油温を比較しても、大差ありませんでした。
以下、残っている記録を掲載します。
1月3日
横浜市
夜 晴れ
外気温 5℃
30分走行で油温 81℃
1月4日
秦野市
昼 晴れ
外気温 15℃〜13℃
停車時最高油温 90℃
走行中油温 75℃〜80℃未満
1月6日
厚木市
昼 晴れ
外気温 8℃
停車時最高油温 92℃
走行中油温 81℃
1月7日
横須賀
昼〜夜 晴れ
外気温 9℃〜4℃
瞬間最高油温 96℃
走行中油温 83℃
1月30日
厚木市
昼 晴れ
外気温 20℃
走行中油温 92〜6℃
2月3日
厚木市
昼 晴れ
外気温計 10℃
走行中油温 81~92℃
停車時最高 97℃
2月4日
熱海
昼 晴れ
外気温 10℃〜13℃
走行中油温 市街地 92℃/バイパス 83℃
2月6日
湘南
昼 晴れ
外気温 14℃
走行中油温 87℃
停車時最高 96℃
3月4日
厚木市・山梨県
15時 曇り
外気温 8℃
停車時最高油温 97℃
走行中油温 80℃台
6月30日
夜 湿度高い
外気温 25℃〜23℃
油温 80℃〜90℃前後で推移
7月7日
交換後、走行距離3500kmを超える。
夜 湿度高い
外気温 22℃〜23℃
油温 82℃〜95℃以下で推移
BIKE FS HR VER3の耐久性
ニューテックZZ-01/02(95%エステル系+5%ミネラルの合成油)と比較すると、BIKE FS HR VER3に軍配が上がると思います。
Ester Racing NC-50/NC-51と同等以上、といったところでしょうか。
BIKE FS HR VER3は、4,000km走行しても、ほとんど性能低下が体感できませんでした。
筆者のCB150Tのエンジンオイルは、指定の交換サイクル3000km毎に交換している。油温計が付いてない車両の場合、シフトギアの入り具合でエンジンオイルの劣化具合を判断しやすい。
オイルの劣化が進むと、ギアチェンジの際、ギアが入りづらくなってくる。
追記:
後日、BIKE FS HR VER3に交換して、夏・秋・冬・春で5,000kmほど走行したVT250 SPADA(水冷V型二気筒)に試乗しました。
完全にエンジン(油温)が暖まった状態でも、シフトフィーリングは新車のようにスムーズそのもの。
あらためて劣化しにくいオイルだと感じました。
純正オイル VS ベリティ
筆者がCB150TにベリティBIKE FS HR VER3を使用し、5,000kmほど走行した後のこと。
某バイクメーカーの超有名 純正オイル(部分化学合成油)に交換しました。
※メーカー名は伏せておきます
オイル交換後、あきらかな性能低下を感じました。あまりの劣化ぶりに驚愕したほどです。
信じられますか?
通常、オイル交換したら少しは調子が良くなりますよね。まったく逆の現象が起きたわけです。
まず油温が60℃ぐらいなのに、明らかにミッションが入りにくい。すごく固いんですね、ギアチェンジでイライラするほど。エンジンのレスポンスも、もっさり感がすごい。
CB150Tでは初めての経験です。
「もしかして、エンジン終わった?」
本当に驚きました。
オイルが冷えているからではなく、油温90℃以上(適正油温の範囲)になっても同じでした。
もともと、空冷エンジンのCB150Tは、納車された夏場にオーバーヒート気味だったため、純正オイルは使用せず、さまざまなメーカーのオイルをテストしていました。
その中でニューテックや、ベリティといったオイルに出会ったわけですが、純正オイルと高性能オイルでは、ここまで圧倒的な差があるとは・・・
当たりのオイルに出会ってからずいぶんと時間が経過してたので、それまで気がつきませんでした。
いつの間にか良いオイルに慣れすぎていたんですね。
BIKE FS HR VER3の高耐久性と、高性能を実感したエピソードでもありました。その後、純正オイルから高性能オイル(100%化学合成油)に交換したのですが、明らかに調子が良くなりました。
以来、高性能オイルしか使っていないせいか、同じ症状は起こりませんでした。
ベリティ バイク用オイル一覧
大きく分けて4種類あります。
- ハイグレードオイル BIKE FS HR VER3シリーズ
- ミドルグレード BIKE PROTECHシリーズ
- エントリーモデル BIKEシリーズ
- スクーター用シリーズ
BIKE FS HR VER3 10W-40
エンジンにとって世界一、過酷といえる鈴鹿8時間耐久ロードレースで入賞実績のあるエンジンオイル。
さきほどご紹介したエンジンオーバーホール専門店「有限会社ガレージ湘南」では、メインオイルとして公道用バイクに使用されています。
耐熱性、耐摩耗性、エンジン保護性能にすぐれた100%化学合成油です。
・特に耐熱性に優れ、スラッジの発生が少なくエンジン内が汚れ難い
・バイクレースの高回転高負荷による過酷なせん断力を受けて粘度低下する事を防ぐ為、敢えてエステル+PAOの設計で5Wではなく10W-40 とし、シャープなレスポンスを実現
・耐久レース等、各種レースに使用可能
・殆どの一般4サイクルバイクに使用可(MB適合車を除く)
ベリティ公式
こんな人にお勧め
・都市部など渋滞が多く油温が高くなりがち
・サーキット走行
・高回転を多用して走行する
・真夏の長距離ツーリング
・旧車や空冷エンジン
・スーパースポーツ、リッターバイクなど発熱量の大きいバイク
BIKE FS HR Ver3 15W-50 MA
基本性能はVer.3 10W-40と同じ。より極圧性能(耐摩擦性能)を高めたグレードです。
走行距離の多い過走行車や、10W-40では熱的に厳しいバイク、XR1200など空冷エンジンのハーレーにお勧めです。
・特に耐熱性に優れ、スラッジの発生が少なくエンジン内が汚れ難い
・エステル+PAOが15W-50のレンジで ありながら鉱物油の#60相当の優れた 極圧性を発揮
・高粘度なので旧車の大排気量車や 4サイクルバイクにも最適
・夏場の渋滞時に厚い油膜保持がエンジンを保護
・10W-40指定車でも圧縮漏れによるパワーダウン時の改善が期待される
ベリティ公式
BIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-40 MA
高度水素化分解基油(鉱物油)にエステルを配合した合成油。
「価格をおさえつつ、高性能オイルを試してみたい」という方にお勧めです。
・ESTER(エステル)を配合し油性を強化
・混合潤滑環境にて金属表面に皮膜を形成し、良好な潤滑環境を保持
・GⅢ系合成油の優れた酸化安定性,熱安定性を発揮しロングライフに使用可
・せん断安定性に優れエンジンの高回転による粘度低下を防ぐ
・原付から大型まで幅広い車種に使用可能
・レスポンスの良さはオフロード車にも対応(MB車除く)
ベリティ公式
BIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-50 MA
基本性能はBIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-40 MAと同じで、極圧性能(耐摩擦性能)を高めたグレードです。
・ESTER(エステル)を配合し油性を強化
・混合潤滑環境にて金属表面に皮膜を形成し、良好な潤滑環境を保持
・夏場の渋滞でも高粘度油膜が優れた極圧性,摩耗防止性を発揮しエンジン内を保護
・GⅢ系合成油の優れた酸化安定性,熱安定性を発揮しロングライフに使用可
・せん断安定性に優れエンジンの高回転による粘度低下を防ぐ
・中型から大型、輸入車、旧車の高粘度指定車に使用可能
・レスポンスの良さはオフロード車にも対応(MB車除く)
ベリティ公式
BIKE 10W-30 MA
低粘度の省燃費性マルチタイプオイル。鉱物油。
・冬場でも始動性が良く通年使用可能
・低粘度なので省燃費性に優れ、新型4サイクルバイクの殆どに使用出来ます (MB適合車を除く)
ベリティ公式
BIKE 10W-40 MA
コスト重視の方や、あまり頻繁に乗らない方向け。
エンジン寿命を重視する場合、上級グレードBIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-40か、BIKE FS HR VER3を使用したいところです。
・優れた低温始動性
・標準的な粘度は殆どの4サイクルバイクに使用出来ます(MB適合車を除く)
ベリティ公式
4T SCOOTER SYN 5W-40 MA
高度水素化分解基油(鉱物油)をベースとし、通年使用可能なスクーター用オイル。
・4Tスクーター専用 FM剤(摩擦調整剤)を厳選した専用油
・特に優れた低温始動性 5Wなので寒冷地でもエンジン始動が簡単
・GⅢ系合成油なので優れた酸化安定性,熱安定性を発揮しロングライフ使用可(MB指定車除く)
ベリティ公式
オイル交換の便利グッズ
廃油処理の注意点
本記事の読者さんの中にはいないと思いますが、もし、廃油を下水や、自宅の排水溝に流すと、不法投棄になります。(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)
廃油はお住まいの地域で定められた方法で処分するようにしてください。
樹脂製のメスシリンダー。フタが付いているので便利です。
オイルフィルターの交換も忘れずに。
自動車とバイク兼用オイル
「車とバイクでエンジンオイルを兼用したい」
という方向けのオイルを紹介します。
前出のガレージ湘南では、ミッション車・スクーターなど、商用車にPART SYNTHETIC 10W-40(部分成油)を使用されています。
(店用のシグナスや、アドレスなどにも使用)
公式サイトには「バイク可」とは掲載されていませんが、長年の使用実績では、クラッチが滑ることもなく、問題なく使えるようです。
・中~大排気量車、旧車に適したガソリン、ディーゼル兼用油
・熱安定性、酸化安定性に優れる
・40の油膜が摩耗を防止
・DPF装着車への使用はお控えください
ベリティ公式
オイル選び、オイル粘度について知りたい
初心者向けに
自分に合ったエンジンオイルの選び方
良いオイルの具体的な基準
エンジン焼き付きの実例と写真
オイル表示で注意すべき点
エンジンオイルの新常識とまちがいだらけの都市伝説
車種ごとのお勧めオイル銘柄とオイル粘度
などをくわしく解説した記事があります。
けっこうボリュームはありますが、きちんと読んでいただくとバイク用品店の店員さん以上に、オイルについて詳しくなれると思います。
もし、よかったら読んでみてください。
ほかにも、修理の現場でよくある失敗事例や、バイクを長持ちさせる記事を書いています。