バイクだけで1080基以上、エンジンのオーバーホールを手がけてきたプロから、エンジンオイル漏れの原因や、対策について、教えていただきました。
また実際にオイル漏れ等で、バイクショップへ修理に持ち込まれたエンジンのオーバーホールを80基以上、目の当たりにしてきました。
オイル漏れでよくあるケース、根本的な原因や対策などを、メリットとデメリットを踏まえた上で、お伝えします。
本記事が同じような悩みを持つライダーの参考になれば幸いです。
オイル漏れの原因
致命的な故障じゃなくても、古いバイクに乗っていると、オイルがにじんだり漏れる事があります。
オイルにじみなら、それほど大事に至らない事が多いですが、止めどなくオイルが漏れる場合は要注意。そのまま放置して乗り続けると、エンジン故障につながるケースがあります。
オイル漏れと、オイルにじみはまったく別物です。くわしくは後ほど。
まずはオイル漏れでよくある事例と、原因を解説していきます。
事例1:取り付けミス
ほとんどの4サイクルバイクでは、エンジンオイルフィルターが装着されています。
メーカーが定める走行距離ごとにオイルフィルターの交換が必要です。
その際、正しく取り付けがおこなわれていないことがあります。
筆者が一番おどろいたのは、エンジンオイルフィルター自体が入っていなかった事です。
入れ忘れたのか、取り除いたのか・・・理由は定かではありません。
いずれにせよ、エンジン故障の引き金になるので、定期的なフィルター交換と、正しく取り付けをおこなうことが大事です。エンジンオイルフィルターのゴムシールや、ドレンボルトのガスケットも、劣化するとオイル漏れにつながります。
毎回じゃなくてもいいですが、必要に応じて交換するようにしましょう。
以上が比較的、修理しやすいオイル漏れです。
事例2:シールやガスケット類の劣化
エンジンには、数多くのガスケットやシール材が使用されています。
シールやガスケットは、エンジンオイルやクーラントなどが漏れないよう、密閉するための部品です。
シール=密閉材
できれば純正ガスケットを使用したいところですが、旧車の場合、純正部品が廃番になっている事も多いです。
社外品はピンキリで、安いガスケットを使用すると、しばらくしてオイル漏れが発生する事があります。
余談ですが、ガスケットを律儀に交換するのは日本人ぐらいで、イタリアなど海外メーカーのメカニックは「まだ使えるから」といって、平気で再利用するそうです。
ガスケットにはゴム・金属・紙などの素材があります。比較的あたらしいスーパースポーツやBMWなどは、こうした素材を使わず、メーカー指定の液体ガスケットを使用するエンジンもあります。
ゴム製のシールは、経年劣化でプラスチックのように固くなって割れたり、縮んだりします。
シールもガスケットも、高熱や時間の経過によって、だんだん劣化します。
それがオイル漏れや、オイルにじみ、マフラーからの白煙につながるわけです。
筆者のCB150T(CB125T改 2001年生産)は、メーター走行距離6万kmほどで、クランクシールの劣化によりオイル漏れが発生。
10km走行すると、エンジンオイルが1リットルほど漏れて減る状態。
エンジンが暖まった状態で目視すると、明らかにオイルがポタポタと漏れていました。
写真で見ると、かんたんにシール交換できそうですが、実際はその方法だとオイル漏れが止まらず、腰下(クランクケース)までエンジンを分解することになりました。
いわゆるエンジンフルオーバーホールというやつです。
クランクシール交換後、CB150Tを手放す85,494kmまで、オイル漏れやオイルにじみは発生しませんでした。
(ヘッドカバー、シリンダーを含む)
カムシャフトの動作
ヘッドカバーからオイルが漏れている場合、ほとんどはガスケットの劣化によるもの。
ご覧のようにカムシャフトが扇風機みたいに高速回転すると、風圧でオイルが漏れるわけです。
ヘッドカバーのガスケット交換だけなら、ヘッドカバーを外せばすむので、エンジンを分解する必要はありません。
シール・ガスケット類は劣化する
古いバイクはもちろんですが、2スト・4スト、走行距離に関係なく1990年代から2000年代のバイクもシール類が劣化しています。
シールやガスケット自体、何十年も使用することを想定してつくられていません。
オイル漏れが発生すれば、当然に交換するものだと考えておいた方がいいです。
修理の難易度としては、場所によりますが中レベルといった所でしょうか。
「オイル漏れを直すのに、エンジンをオーバーホールしなくちゃいけないのか・・」
ショックを受けた人もいるかもしれませんね。でも、ガスケット交換やシール交換で直るなら、まだ良いほうです。
さらに難易度が高いケースがあります。
事例3:パーツの歪み
たとえば
ホンダ:CB750Four/CB750F/CB900F/CB400Four/CBR400F/CBX400Fなど
カワサキ:空冷Z、空冷GPz、ゼファーなど
スズキGS、GSX、ヤマハXJ
40年から50年ほど前に生産されたバイクはガスケット交換や、シール交換ではオイル漏れが直らないケースが多々、あります。
クランクケースに歪みが発生している場合です。
この場合、ガスケットやシールを新品交換しても、完全にオイル漏れや、オイルにじみを止めることは困難です。
パーツの歪みとは?
部品と部品のすき間をクリアランスと言います。
新車でも設計上、クリアランスが大きくなっているバイクはオイルがにじみやすくなります。
「だったらクリアランスを少なくすればいいじゃないか」という話になりますが、エンジン(金属)は熱で膨張します。わかりやすくいえば風船みたいに、膨らんでいくイメージです。
金属はエンジンが冷えている時はちぢんで、熱で大きく膨らんでいく
という性質があります。
ですからエンジンの設計上、エンジンがもっともパワーの出る状態(高熱になって、もっとも金属が膨張する状態)に合わせて、最適なクリアランスがとられています。
ただ、それはあくまで新車の時の話。
生産から何十年も経過したバイクだと、次第にエンジンパーツに歪み(ひずみ)が発生してきます。
たとえば、自宅のカギが曲がっていると、鍵穴に差し込みにくかったり、回りにくくなりますね。エンジンパーツもそれと同じ。
密着する合わせ面が、ゆがんでいるわけですから、きちんと密閉できずに、隙間ができてしまいます。
その隙間から、オイルが漏れたり、にじんだりするわけです。
古い空冷エンジンほど、オイル漏れする理由がまさにこれです。
横向きにしたCB150Tのエンジン。さいわいクランクケースに歪みはなかった。
ご自身の愛車のエンジンを見てもらえばわかると思いますが、エンジンは複数の部品が組み合わさったものです。
クランクケースの上だけでも、シリンダー、シリンダーヘッド、ヘッドカバーと、つなぎ目があります。
もちろん、つなぎ目の部分にはガスケットが使用されています。ところが、ガスケットが劣化したり、パーツが歪(ひず)むと、オイルが漏れることがあります。
4ストエンジンの肝になるシリンダーヘッド。
歪みをとるためにメンテナンス面研をおこない、合わせ面を平らにします。
エンジンをオーバーヒートさせると、クランクケースに歪みが発生しやすくなると言われています。70基以上のエンジンを見ていると、けっこうな割合でケースが歪んでいました。
オイル漏れを完全に止める対処法
根本的にオイル漏れを止めるなら、やはり元を絶つしかありません。
たとえば、クランクケースの歪みでオイル漏れが発生している場合、クランクケース自体を新品に交換する事になります。
ところが現実的な話、純正部品が廃番になっていたり、入手できても、とても高額だったりします。
仮に手に入ったとしても、部品代だけで何十万円ということもよくあります。
そもそも論になりますが、「莫大な費用をかけて、オイル漏れを完全に止める必要があるのか?」という問題があります。
私もライダーですから、オイル漏れや、オイルのにじまないバイクに乗りたい気持ちは、よくわかります。
ただ、40、50年も前の設計基準や材質、加工技術でつくられたバイクと、現行車をまったく同じ土俵で考えることは、無理があると思うんですね。
そもそも、バイクは何十年も使用される前提で設計されていません。
バイクも自動車や家電と同じく、新車を買ってもらわないとメーカーは商売になりませんから、考えてみれば当然の事です。
「古いバイクなんだから、多少、オイル漏れやオイルにじみが発生するのは当たり前」と考えたほうが、乗っていて楽しいと思います。
神経質になりすぎないほうがいい、というのが筆者の考え方です。
問題なのはオイルが漏れることではなく、それが許容範囲のレベルかどうか。
程度の問題です。
あきらかにアウトなオイル漏れ。
お店や賃貸住宅など、他人の土地はもちろん、公道にオイルを垂れ流すのはNGです。もし、漏れたオイルで事故が起きたり、人が怪我した場合、損害賠償を請求されることがあります。
まぁ、それ以前にマナーとしてダメですけど。
自分の家の敷地に、散歩中の犬がウンコして、飼い主がそのまま放置して行ったら怒りますね。
「掃除していかんかい!」
と思うはずです。オイル漏れも同じ。後始末は、ちゃんとしましょう。
オイルにじみと、オイル漏れのちがい
オイルにじみは、止めどなくエンジンオイルが漏れたり、極端に減ったりしない状態を言います。
エンジンにオイルの滴が付着したり、数百キロ、数千キロ走行して、少しオイルが地面に垂れるぐらい。要修理とまでは、いかないレベルのオイル漏れを「オイルにじみ」といいます。
オイル漏れは、さきほどの筆者のCB150Tみたいに、10km走行してエンジンオイルが1リットル減るとか、オイルがポタポタと漏れてタイヤに付き、走行することが危険な状態をいいます。
このように感情や感覚的な話ではなく、きちんとした知識やロジック、経験に基づいた判断が必要です。
オイル漏れは車種によって許容範囲は異なりますし、同じ車種でも、走行距離や歴代オーナーの扱い方によって、状態がまるで違ってきます。
原因もさまざまです。
ですので、どうしても心配なら、素人判断せずに、バイクショップで見てもらうことをお勧めします。
「オイルシールや、ガスケット交換などで止まるのか?」
「交換しても許容範囲内でオイルがにじんだり、漏れたりするのか?」
「もっと別のところに原因や問題があるのか?」
経験豊富なショップなら、的確な判断をしてくれるはずです。
少なくとも放置して、勝手に良くなることはまずありません。「おかしい」と思ったら、早めにプロの診断を受けることをお勧めします。
よくある事例
・自分でエンジンを分解しようとして、部品を壊してしまった。
・某オークションで購入して、「こんなものか」と思って、乗り続けていたら壊れた。
「なんでもっと早く(ショップに)持ってこなかったの?」というケースがあまりにも多い。
ここまでのまとめ
・オイル漏れの3大原因
1)取り付けミス
2)ガスケットなどシール材の劣化
3)パーツの歪み
・エンジンパーツに歪みが発生している場合、ガスケット交換だけではオイル漏れが完全に止まらないことがある
・神経質になりすぎない。古いバイク(とくに空冷)の場合、許容範囲であれば、オイル漏れや、にじみが発生するのは当たり前
・自分でわからなければ、プロに判断してもらうのが賢明
オイル漏れ・オイルにじみ対策
以上の基本を踏まえた上で、プロショップが行っている対策や、やらないほうがいいアプローチを解説します。
まずは、一般的におこなわれているけど、本当は避けたほうがいい事をお伝えします。
お勧めしない方法1:鉱物油
「空冷バイクには化学合成油ではなく鉱物油がいい」という話を、聞いたことがあると思います。
その理由は「化学合成油は浸透性が高く、また化学合成油に含まれる成分がシール材を痛めることがあるため」と言われています。
ところがトヨタや、国内バイクメーカーの純正オイルをつくっている某オイルメーカーの方いわく、大昔の話だそうです。
1980年代と2021年のタイヤを比較した場合、比べものにならないぐらい性能が向上しているように、エンジンオイルも進歩しています。
ただ、エンジンオイルに関しては、「なぜか旧来の考え方や理論がそのまま、令和になった現代も根付いている」と仰っていました。
で、結論から言うと、化学合成油の使用をお勧めします。
A)漏れにくい(かもしれない)、でも潤滑性能は低いオイル
B)若干漏れやすい(かもしれない)けど、潤滑性能が高いオイル
あなたなら、どちらのオイルを選びますか?
オイル漏れしにくいからといって、わざわざ潤滑性能に劣るオイルを使用して、エンジンが壊れたら本末転倒です。
「科学的根拠に乏しい理由で、鉱物油にこだわる必要があるのか?」
前提条件を疑ってみるといいかもしれません。
「なぜ、鉱物油がいいと思うのか? 鉱物油がいいという具体的な根拠は何なのか?」
ほとんどの方は、雑誌や広告などに書かれている内容を鵜呑みにしているだけだと思うんですね。筆者自身、空冷エンジンに100%化学合成油や、半化学合成油を使用しています。
(6万kmテストしましたが、オイルがにじんだり、漏れたことは一度もありません)
お勧めしない方法2:オイル漏れ止め剤
スプレータイプの物と、エンジンオイルに混ぜて使用するタイプがあります。
スプレー式は筆者も試しましたが、後悔しました。
エンジンの下側からオイルが垂れていたので、「ボアアップした影響で、クランクケースの歪みが発生して、オイル漏れしたのか?」と思った筆者は、オイル漏れ止めのスプレーを吹き付けました。
原因はクランクシールの劣化だったので、吹き付けても効果なし。
むしろ、固まったオイル漏れ止め剤を取り除くのに苦労するはめになりました。
固まると、ガム質になって取れにくいんです。
失敗談
そもそもオイル漏れが発生する原因を考えたら、スプレーなんかで止まるわけがないんですね。
仮にクランクケースが歪んだ(変形した)り、ヒビが入った場合、エンジン内の圧力を考えたら、とてもスプレーで止まるはずがありません。まぁ、筆者も青かったということです笑
お勧めできるエンジンオイル漏れ止め剤
エンジンオイル漏れ止め剤を使用するなら、オイルに混ぜて使用するNUTEC(ニューテック)社の「 オイルシーリング剤 200ml NC-81plus」がお勧めです。
日産のディーラーで使用されている物と同じ(ニューテック社がOEM生産している)で、エンジンに悪影響を与える成分は入っていません。
比較的、軽微なオイルにじみ・オイル漏れならこれで止まるようです。
(筆者のCB150Tでも何度かテストしましたが少なくとも、エンジンに悪い影響は確認できませんでした)
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NC-81plusとほかのエンジンオイル漏れ止め剤のちがいは?
一般的なオイル漏れ防止添加剤
やせたオイルシールを膨張させる、オイル粘度を上げる。
NC-81pluの場合
漏れのある部分からオイルと一緒にオイルシーリングがにじみ出ていくと、外気に触れた特殊成分が固まって、シール被膜をつくる。(新しいオイルシールをつくる)
それを繰り返すうちにオイルにじみが止まる。シール皮膜は柔軟性があるため、エンジンの振動でも割れない。またエンジン内部で固まったり、ベトベトになって重くなることはない。
ベースに高性能オイル添加剤NC81を使っているため、フリクションロスが減って、レスポンスが良くなる。
回答者:ニュークテック 鳩谷社長
車だと、空冷ポルシェ911(タイプ964)、ディアブロ、フェラーリなどで効果があったそうです。
NC-81plusの特徴
オイルの漏れ、にじみを短い時間でシャットアウト。
簡単な使用方法で確かな効果を発揮します。
さらにニューテックテクノロジーによって、オイル粘度を変化させずにローフリクションを実現、視覚的にも感覚的にも体感できるオイル添加剤です。
走行距離の伸びたクルマのリフレッシュにもお薦めです。http://nutec.jp/products/oilsealing/nc81plus.html
効果と特徴
1.エンジン、駆動系のオイル漏れ抑止(ATには使用できません)
2.圧縮漏れの抑制
3.オイル下がりの抑制
4.ブローバイガスの抑制
5.フリクションロスの低減
6.メカニカルノイズの低減
7.湿式クラッチに使用できる成分を調整配合
8.施工後短い時間で効果を発揮
レーシングテクノロジーから生まれたNC-81plus OIL SEALINGは、オイル漏れや圧縮漏れを素早く止める高機能素材を配合し、気密系を向上させオイル漏れを抑制します。さらに、ニューテックならではのエステル100%の化学合成油をベースオイルに使用しているので、低フリクション化と高温安全性に優れるオイル添加剤です。
公式サイトより
適量であれば、バイクに使用してもクラッチが滑ることはないそうです。(メーカー回答より)
使用上の注意点やデメリット
テフロン系のエンジンオイル、添加剤とNC-81plusを併用した場合、オイル成分のバランスが変化して、悪影響を及ぼす可能性があるようです。
入れすぎに注意
湿式クラッチでの使用は、添加量が多過ぎたりクラッチが摩耗していると、滑りが発生する事があるようです。
これはNC-81plusにかぎらず、ほかのオイル添加剤でも、おなじ注意書きがあります。
(筆者は10%添加しましたが、クラッチの滑りはありませんでした)
添加剤は正しい組み合わせ、正しい使用方法で使うことが大事です。
添加剤を使用して「効果がない」(効果を感じられない)というケースの多くが、定められた添加量よりも少ないことが原因だったりするからです。
念のためにお伝えすると、致命的な原因によるオイル漏れ(筆者のCB150Tのようなケース)は、シール剤では止まりません。
極端にひどいオイル漏れの場合、あくまでダメ元で試してみる、と考えた方が良いでしょう。
比較的、軽微なオイル漏れや、「どうしてもオイルにじみが気になる」という場合に使うといいと思います。
NC-81plusの使用方法
1)エンジンオイル容量2Lから5Lに対して1本(200ml)使用します。
バイクの場合、添加割合は5%から6%からスタートした方が無難なようです。
それでクラッチが滑るようなら、クラッチの摩耗が考えられます。添加割合は最大で10%です。
2)エンジンオイル交換時に使用するのが効果的です。
この時、エンジンオイルの量を規定から減らしてください。
例:オイル交換時4Lの場合
NC-81plus 5%=200ml エンジンオイル3,800ml
※この時、まだNC-81plusは入れません
3)エンジンオイルを入れたら、しばらく暖機運転してエンジンを停止します。
4)NC-81plusをよく振ってから、オイル注入口に注ぎます。
5)NC-81plusを入れたら10分ほどアイドリングする。
6)すぐに10分から30分程度、走行する。
走行時間はあくまで目安です。
油温80℃程度を維持しつつ、10km以上の走行(ふだんどおりの走り方でOK)が必要です。その後、走行するうちに少しずつ効果を発揮するようになります。
推奨エンジンオイル
NC-81plusの開発・製造元であるニューテックのエンジンオイルです。
NC-81plusとの相性はもちろん、耐熱性能・耐摩耗性に優れ、オイル漏れしにくい設計のオイルです。
国産車、ハーレー、ドゥカティなど、車種ごとの推奨オイル・粘度・ブレンド比率などを掲載しました。
オイル自体が高寿命であることが、メーカーテストによって証明されています。
2リッター ディーゼル ターボエンジン
約15,000km走行したオイル(NC-51)の粘度指数を計測
https://inuiyasutaka.net/bikeblog/category/engine/engineoil/
あると便利な廃油パック
樹脂製のメスシリンダー。フタが付いているので便利です。
お勧めしない方法3:液体ガスケット
劣化したオイルシールを再利用したからか、大量の液体ガスケットが塗布されていた。よくある悪い例。
液体ガスケットの使用は、オイル漏れ対策で有効な方法であると同時に、デメリットもあります。
エンジンを組んだ際、固まったガスケットがエンジン内部にはみ出て、故障につながることがあります。液状ガスケットは、ボンドみたいな液体のガスケットです。
写真は40年ほど、一度もエンジンを開けた形跡が見られないCB750Fのエンジン。
バイクの製造メーカーも液体ガスケットを使用していますが、ご覧のようにオイルパン(エンジンの下部にあるエンジンオイルがたまるところ)にあるフィルターが詰まっています。
旧車に限らず、GSX-R1000(K6)やZX-10R(2011年モデル)でも、けっこうな量の液体ガスケットが使用されていました。
液体ガスケットを使うなとは言いませんが、
1,必要以上に使わない
2,使用する場合、最小限にする
不用意に使いすぎないことが大事です。
液体ガスケット使用の悪い例
・キャブレターに液体ガスケットを使用して、固まったガスケットが粉状になり、キャブのジェット類が詰まっていた
・不具合を隠すため、まるで水まわりのコーキング剤のように液体ガスケットをエンジン内部に塗り、エンジンが焼き付く恐れがあった(オイルラインがふさがれていたこともあります)
いずれも実際にあった出来事です。
液体ガスケットは、エンジンを組んですぐ故障するわけではないではないですが、時間の経過とともに、不具合を引き起こして故障につながる、という感じです。
液状ガスケットの使用は、見た目だけを考えれば「オイルが漏れない」というメリットがありますが、リスク(不確実性)もあるわけです。
なぜ、多くのショップが必要以上に液状ガスケットを使うのか?
お客さんにオイル漏れやオイル滲みを指摘されるのを恐れているから?
先輩から教わったから?
・・・理由は定かではありません。
ただ、まとめると、
A.液状ガスケットを使ってとにかくオイル漏れを止める
メリット:オイル漏れや滲みが止まる(見た目だけはOK)
デメリット:エンジン内部にはみ出たガスケットが故障を誘引する可能性がある
B.液状ガスケットを使わず(もしくは必要最低限にして)エンジンを組む
メリット:Aのようなリスクがない
デメリット:若干オイル漏れしたり、にじんだりする可能性がある(ただし許容範囲)
それぞれアプローチがあるという事です。
「オイル漏れのためだけにわざわざ、リスクをおかす必要があるのか?」
どちらを選択するかは、あなた次第です。
エンジンチューニングのパイオニア、ポップ吉村氏(現ヨシムラ・ジャパン創業者)は「とにかく余計な物は使うな」と後進に指導していたそうです。液ガスは使わず、新品のガスケットだけで組むやり方。
旧車の場合だと、クランクケースが歪んでいることがよくあるため、必要最小限に液状ガスケットを使用するのが無難だと思います。
液状ガスケットは使わないほうがいい?
誤解のないよう言っておきますが、液状ガスケットを敵視しているわけじゃないです。
たとえばCBR1000RRやZX-10R、GSX-R1000のように、サービスマニュアルに液状ガスケット使用が指定されている場合、液状ガスケットを使用すべきです。
ただ、やたらと液状ガスケットを使ったり、コーキング材のようにたくさん使うと、余計なトラブルを招くという事です。
CBR1000RRのサービスマニュアルで指定されている液状ガスケットは高級品。
一般的な液状ガスケットを使用してオイル漏れした事例があります。液状ガスケットにもグレードがあると言う事ですね。
ちなみにエンジンに、熱による歪みがある場合、液体ガスケットを使用してエンジンを組んでも、オイル漏れが発生する事があります。
プロがおこなうオイル漏れ対策
いろんな考えや手法があると思いますが、
ステップ1:オイル漏れの箇所を特定する
ステップ2:漏れ具合が許容範囲かどうかを判断する
漏れたオイルがタイヤに付くなど、走行する上で危険な状態かどうか。
ステップ3:エンジンのオーバーホールをおこなう
シール類、ガスケットを新品交換。(必要に応じてシリンダーヘッド面研)
ステップ4:試運転
オイル漏れのチェック。あまり漏れるようなら、液状ガスケットを少量使用する。
おおまかにこの手順です。下手な小細工はしません。
何台もエンジンを手がけているショップの場合、車種によって弱点がわかっているため、あらかじめ対策してエンジンを組みます。
構造的な原因でオイルが漏れる場合、部品を加工して対処している事もありました。(CB750F/CB900F)
まとめ
・オイル漏れの原因は、比較的、修理が軽微なものから、エンジン分解までレベルがある。
・オイル漏れとオイルにじみを混同しない。
・生産から40年、50年が経過したバイクはパーツが歪んでいることが多く、完全にオイル漏れを止めることは困難。
・生産から10年以上経過したバイクは、シールやガスケット類の劣化により、オイル漏れすることがある。
・「オイル漏れ=悪」という考え方を捨てる。大事なのは許容範囲レベルかどうか。神経質になりすぎないことが大事。
・もし、オイル漏れや、オイルにじみが気になる場合、早めにプロに診断してもらう事がお勧め。