「果たして、マフラーのカーボン除去は効果があるのか?」
2年間で5回バイクのマフラーでカーボンの除去作業をおこない、24,000km以上にわたって走行。
その検証結果をまとめました。
今すぐ手順だけを知りたい人はこちらの記事を参照ください。
テストに使用したバイク
ホンダ CB125T(2001年最終モデル)
空冷OHC 並列二気筒エンジン
購入時走行距離:19,500km
※マフラーはノーマルです
2014年8月 1回目清掃 26,000km
2015年3月 2回目清掃 31,372km(前回走行から5,372km)
2015年6月 3回目清掃 34,460km(前回走行から3,088km)
125ccから142ccにボアアップ後
2016年1月 4回目清掃 39,418km(前回走行から4,958km)
2016年12月 5回目清掃 55363km(前回より15945km走行)
おそらく、同じバイクで繰り返し何度もテストした人は、かなり少ないと思います。
レース活動を含めて、何十年とキャリアのあるバイクショップにも「マフラーのカーボンの詰まりが、走行にどれだけ影響するかを検証した例を知らない」と言われました。
今でこそ「マフラーカーボン除去」で検索すると、大手のサイトが記事として取り上げていますが、私がテストをはじめた2014年当時はまだ、マフラーのカーボン除去の効果や方法を体系だてて解説したブログや記事はありませんでした。
CB125Tの142ccボアアップ、ガソリン添加剤の効果もそうですが、私が検証した内容をブログで公開した後、追随するサイトや、メディアが増えていると実感しています。
それはさておき、私が実験好きということもありますが、カーボン除去に関しては、1度や2度試したぐらいだと、偶然や思い違いという事もありますので、あらゆる角度で念入りに調査しました。
そして、自分でも驚くべき発見がありました。その内容を全てお伝えします。
マフラーカーボン除去のメリット
実際にどんな効果が得られるのか? 順を追って話します。
1,レスポンスの向上
スロットルを開けた瞬間、エンジンの回転がいつもよりスムーズになっている事に気がつきます。
それまで「ブォーーーン」という、少しくぐもった音が「ウォーーーン」という軽やかなサウンドになり、エンジンの吹け上がりが軽くなります。スロットル操作に対して、エンジンの反応が素早くなる、といえばわかりやすいでしょうか。
2,トルク感の向上
トルクとはタイヤを回す力のことです。つまりアクセルを開けて、タイヤが回ると、バイクが力強く加速し、私たちライダーはトルクを感じるわけです。
この感覚のことを私は「トルク感」と呼んでいます。
スロットル操作に対して、エンジンが素早く反応し、しかも以前より力強く加速するようになりました。
イメージしづらいかも知れないので、ビフォー・アフターで比較してみましょうか。
施工前と施工後の変化
カーボン除去の前
1,アクセルを開ける
2,少しタイムラグがある
3,エンジンが唸りながら加速する
カーボン除去の後
1,アクセルを開ける
2,すぐにエンジンが反応する
3,スムーズに力強く加速する
言葉にすれば、こんな感じです。
実際のところ、カーボンを除去する前と後を自分で経験しないと、効果を理解しにくいと思います。なぜなら私も、自分のバイクでマフラーのカーボン除去作業を施工して、初めて実感したからです。
マフラーの中から出てきたカーボンの量にも驚きましたが、それ以上に「ここまで走りが変わるのか・・・」と思ったのは、除去作業の前と後で乗り比べた時でした。
除去作業をする前は、ここまで大きな効果があるとは思っていなかったんですね。
知らずにマフラーにカーボンが詰まった状態で公道を走っていて、それほど大きな不満はありませんでした。
(もともと中古車でしたから「まぁこんなものかな」と思っていました)
ところが、いざ施工してみると劇的な変化があったわけです。
その効果がどれほどかを他の表現でお伝えするなら、純正マフラーを社外マフラーに交換するようなものでしょうか。マフラーを純正から社外品に変えると、サウンドだけじゃなくて、走行性能も「あれっ?変わったかな」変化を感じると思います。
カーボン除去の場合、マフラーの音質までは変わらないし、社外マフラーに交換するほど劇的な出力特性の変化はないと思います。
でも中古車など、カーボンが詰まっているバイクであれば、マフラー交換したみたいに「気づけるレベルの変化」はあると思います。
私は同じくCB125T(150T)でエンジンオーバーホール(カーボン除去のみ)も経験していますが、OHしたエンジンのレスポンスは、「マフラーのカーボンを除去した時と似たようなフィーリングだな」と思ったものです。
4ストはカーボン除去しても効果がない?
「4ストは2ストと違って、きちんと燃焼しているからマフラーは詰まらない」
むかし、こんな話を耳にした事があります。
今回検証して、正しい表現ではないと実感しました。正確には、
2ストほど急激ではないものの、どんどんカーボンが蓄積してパワーダウンしていくのは4ストも同じ
といったところです。カーボンが蓄積すると
・フケ上がりがもっさりする(スロットルレスポンスが鈍い)
・加速が遅い(トルク感が乏しい)
・エンジンがうなってるけどあまり前に進まない
といった現象が起きます。
パワーの乏しい小排気量なら、なおさら走行に影響します。
※上記はクラッチ摩耗限界や、キャブのセッティング不良が原因の場合もあります
例外として、社外マフラーなど、抜けのいいマフラーに交換している場合や、そもそもカーボンがほとんどたまっていない場合、カーボン除去をしても効果は少ないと思われます。
インプレッション
私が4回マフラーのカーボン除去をおこなった時のインプレッションです。
やるかどうか迷っている人は参考にしてください。 いずれもキャブレターは調整済み。エアクリーナーを交換し、外部要因の影響が少なくなるようにしてからテストを行っています。
1回目
2014年8月 走行距離26,000km
グロいほどのカーボンが出てきました。
(写真を撮る気が失せるほどの量でした。料理用の中ザルが半分、埋まるぐらい)
アクセルレスポンスが向上し、トルク感も見違えました。「もっと早くやれば良かった」と思いました。
2回目
2015年3月 走行距離31,372km(前回走行から5,372km)
2回目は1回目からわずか5000km程度なので、あまり変化は期待しませんでしたが、それなりにカーボンが出てきました。1度目ほどではないものの、やはりエンジンレスポンスは向上しました。
3回目
2015年6月 走行距離34,460km(前回走行から3,088km)
2回目の後2500kmぐらいで「あれ、少しモタつくな?」と感じました。
そこで実験も兼ねて3回目を敢行しました。
「たった3000km走行したぐらいでカーボンなんて溜まるの?」と疑問に思いますよね。ところが意外にも、2回目(5372km走行後)に匹敵するぐらい溜まっていました。
3回目はこれまでより入念に清掃することにしました。
手間暇かけた分だけ効果絶大でした。マフラー清掃に3日間。マフラー取り付けをミスってしまいガスケット注文で約2週間待ち。
長い道のりでしたがやってよかったと思いました。
いつもより+1000rpmよく回るようになり、スピードもいつもより+10km/h早く到達する気がします。恐ろしいほどエンジンが軽やかに回るようになりました。
4回目
2016年1月 走行距離39,418km(前回走行から4,958km)
ボアアップ後、初めての施工です。
左マフラーもさることながら、エンジンがかぶりまくっていた右マフラーはかなりカーボンが溜まっていました。
純正マフラーの多くは構造が複雑なため、カーボンが溜まりやすくなります。清掃後、サイレンサーとパイプ部分の継ぎ目を液状ガスケットで塞ぎました。
前回同様、苦しそうにうなりを上げていたエンジンが静かに、それでいてレスポンス鋭く加速するようになりました。
バイクマフラーカーボン除去の検証まとめ
1,純正マフラー、社外マフラーを問わず公道を走る限り、走行距離を重ねるうちにカーボンは蓄積する
2,整備されたバイクでも2500km走ればカーボンは蓄積することがある
3,走行距離=摩耗によるエンジンパワーダウンと考えるのは早計
パワーダウンの要因はエンジンとマフラーに蓄積したカーボンによる影響が大
(もちろんエンジン内部にカーボンが蓄積されているケースもある)
4,多段膨張式構造マフラーはとくにサイレンサーを重点的に清掃する
5,純正マフラー・社外マフラーを問わず、(カーボンが詰まっている場合)カーボン除去は効果がある
抜けのいい社外マフラーを装着している場合、それほどカーボンが蓄積しないこともあります。
6,中古車を買ったらマフラーのカーボン除去がお勧め
とくにマフラー交換されていない車両や、市街地走行メインの車両、エンジンを回さない乗り方をしていた場合。
エンジンはもちろんのこと、エアクリーナー、タペット調整、点火系、キャブセッティングや駆動系などほかの各パーツに不調がない事が前提です。
また以上を満たしていても、アイドリング状態が長い場合や、高回転までエンジンを回さない場合は、マフラーやエンジンに、カーボンがたまりやすくなる傾向にあります。
「ただ走ればいい!」という人にはカーボン除去は不要ですが、
スポーツ走行を楽しみたい人
レスポンス良くキビキビ走りたい人
マフラーを交換したくない人
という方にはお勧めです。