潤滑油メーカーのオイルテストを400〜500以上、経験したテストライダーから教わったバイク用2サイクルエンジンオイルの選び方と、筆者の独断と偏見による、おすすめオイルを紹介します。
本記事のトピック
・一般的なバイクコラムや、雑誌には書かれていないエンジンオイルの裏話
・オイルの選びの失敗事例
・本当は逆効果 焼き付きや不調の原因になるよくあるミステーク
・ キャブセッティングとオイルの関係
・大手ネットショップも間違っている「全合成油」本当の意味
・最強の2ストオイル
テスト車両

空冷2ストローク クランクケースリードバルブ単気筒
https://inuiyasutaka.net/bikeblog/leo120-200726/
排気量:118.6cc
最高出力:22.5ps/8500rpm
ボアストローク:54×51.8mm
車重:97kg
エンジン潤滑方式:分離給油
製造国:タイカワサキ
製造年:1998-2003
走行シーンは市街地走行とツーリング。
できるだけイコールコンディションになるように、キャブレターの分解清掃はもちろん、プロのメカニックによりセッティングが出ている状態でテストしています。
※メインジェットなど、キャブパーツの変更なし
追記:当ブログでお伝えしている内容を実践して、LEOの走行距離が35,000kmを突破しました。
(エンジンオーバーホール、修理歴なし)
2ストマフラーのオイル飛び
「2ストのマフラーからオイルが垂れるのは仕方がない」
そう思っている方も多いと思いますが、必ずしもそうとは限りません。
Before

筆者がLEOに乗った当初のサイレンサー。テールパイプにびっしりカーボンが溜まっています。
音がうるさすぎることもあって、汎用サイレンサーに交換。接合部分にもカーボンが溜まっていました。
After

サイレンサーを交換後、筆者が19,914km走行(メーター35,500km)して撮影。
ご覧のとおり、走行距離が多いにも関わらず、カーボンは少ないですし、オイルが垂れていません。ナンバープレートの裏が、オイルまみれになることもないです。
そもそもオイルが飛ばないので。
シリンダーや、ピストンリングの摩耗など、圧縮不良が原因の場合を除けば、使用するオイルでカーボンの付き具合を減らす事ができます。
ちなみに
汎用サイレンサーのほうが抜けが悪いので「サイレンサーを交換したからカーボンが溜まらない」わけではありません。もともと入っていたホームセンターの激安オイルが、要因として大きいと思われます。
テストしたエンジンオイル
2ストの生産終了が発表された2000年ぐらいまで、ホンダ・ヤマハの純正オイル、カストロール、エルフ、レプソル・・・いろいろ使用してました。
(あとは忘れました)

なにぶん昔の話なので、2020年から比較したオイルを紹介します。
テスト順
1,ホームセンターオイル
2,POWER1 2T(カストロ)
3,POWER1 RACING 2T(カストロ)
4,ESTER TECH RS 959(ピュートライン)
5,ウルトラスーパーファイン(ホンダ)
6,MOTO2 OFF ROAD(エルフ)
7,MOTO2 TECH(エルフ)
8,ウルトラGR2(ホンダ)
9,モトレックス テスト中(テスト後に追記します)
今後も増えると思います。
カストロール テスト結果
当初、LEOに入っていたのはホームセンターオイル。
プラグの焼けだけを見れば悪くありませんでしたが、トルクは細く、振動が気になる。
(なによりカーボン蓄積が多すぎる)
空冷エンジンで真夏の走行は不安すぎるため、まずは入手しやすいカストロールから試すことにしました。
POWER1 RACING 2T 500ml
アプリリアRS250のメーカー指定オイル

結果:
スペックのデータ上は同社の「POWER1 2T」より引火点が低く、カーボン蓄積が減るかと期待したが、実際に走行してみると、プラグのカーボン蓄積が最も多かった。
POWER1 2T 500ml
結果:
匂いは少し甘めで悪くはなかったが、「POWER1 RACING 2T」と同じくカーボン蓄積が顕著だった。
(あくまで筆者がLEOで試した場合)
再検証の結果
キャブレターを再セッティングして、POWER1 RACING 2Tの再検証をおこないました。
セッティングの方向性としては若干、薄めになっています。
秋・冬で、ほかのオイル同様、市街地走行メイン。しっかり回して走ると、プラグの焼け具合は良好。つまり比較的、「濃く」なるオイルのようです。
(かなり意識的に高回転を使って、走った場合の話。いつもどおりに走るとかぶり気味になります)
都市部など渋滞の多いところや、あまりエンジンを回さない人は、カーボンがたまりやすくなるため、不向きかもしれません。
再検証の結果を踏まえても、「悪くはないけど・・・すごく良いわけでもない」という感じでした。
1本500mlなので割高感があります。
POWER1 RACING 2Tはホームセンターや、バイク用品店で置いてある確率が高いため比較的、入手しやすい、容量が小さく携行しやすいという利点があります。
総合的に考えた場合、あえてカストロールを選ぶ理由はないと個人的には思います。
あとでくわしくお伝えしますが「合成油=100%化学合成油」ではないので、ご注意ください。
よくある2ストオイルの選び方
一般的によく知られている選び方だと、
・メーカーやブランドなどイメージで選ぶ
・ランキングで選ぶ
・オイルグレードで選ぶ
・やっぱり純正オイルが一番!
こんなところでしょうか。
オイルに関する基本的な知識や、グレードについては以下のサイトをご覧頂くとして
基本を踏まえた上で、オイルのテストや開発をしていたプロから教わった、2ストオイルの選び方や、判断基準をお伝えします。
ここだけの話、超有名オンラインショップでも、誤った情報が書かれていたり、販売されていたりします。
(法律的にアウトなレベル。2スト・4ストオイル両方で発見しました)
「大手だから大丈夫」と鵜呑みにせず、消費者側が知識をつけた上で、判断したほうがいいと思います。
オイル選びでよくある2つの誤解
失敗しないオイル選びに入る前に、よく言われている意見や、考え方について検証します。
「メーカー純正オイルが一番、良い」
半分正しくて、半分まちがっています。
理由を説明する前に、オイル業界の仕組みについて解説します。
まず、純正オイルをつくっているのはバイクメーカーではなく、潤滑油会社です。OEMですね。
OEM(オーイーエム、英: original equipment manufacturer)は、他社ブランドの製品を製造すること、またはその企業である。
Wikipedia
イメージとしては、バイクメーカーが潤滑油会社に対し
「こういうエンジンオイルをつくってくれ」
依頼して、潤滑油会社はリクエストに沿った仕様のエンジンオイルをつくって、メーカーに納入。
納入したオイルは「バイクメーカー純正オイル」(いわゆるPB(プライベートブランド)商品)として流通します。
ホームセンターなどが販売している激安PB2ストオイルも、これと同じ仕組みで生産されています。
(工業製品にかぎらず、飲料品や食品、化粧品やサプリなど多くがOEMで販売されてます)
では、いわゆる社外オイルはどうなっているのか?
大きく2つあります。
潤滑油会社(いわゆるオイルメーカー)
A.自社に工場を持っていてオイルの製造・開発すべてをおこなっている(原油を仕入れて自社で精製する)
B.自社に工場を持たないブレンダー
どちらかです。
いわゆるメーカー純正オイルは、Aの潤滑油会社が製造します。潤滑油会社は、ほかのメーカーのオイルもつくりますし、自社ブランドのオイルも製造・販売します。
有名なのは三和化成工業です。(残念ながら2ストオイルは生産終了)
三和化成工業株式会社 1947年設立 横浜市
鈴鹿8耐 Team KAGAYAMAの使用オイル「ベリティ」ブランドで知られる。日本の大手自動車メーカーや、バイクメーカーの純正オイルを手がけているメイド・イン・ジャパンの老舗潤滑油会社。
同社は自社に工場を持ち、原油の精製から開発まで一貫して、おこなっています。
(すべてを自社でおこなっている会社は日本に数社しかないそうです)
いっぽう、ブレンダー(B)は自社工場を持たないため、自社ブランドの開発・販売をおこない、オイル製造は工場を持つ潤滑油会社に委託します。
で、純正オイルの話に戻しますが、性能を突き詰めた場合、純正オイルでは限界があるそうです。
コストの限界ですね。
いまやバイクのメイン市場は、日本以外のアジア圏にシフトしています。
日本国内であれば比較的、流通がしっかりしてるので純正オイルなら大抵、どの地域でも入手できると思います。ところが、発展途上国など、海外だと日本の当たり前が通用しません。
オンラインショップで注文すれば、どの地域でも配達してくれるとはかぎらないですし、日本みたいにあちこちバイクショップがあったり、バイク用品店があるわけじゃないですからね。
販売価格の面でも日本と比較して、所得の低い国や、地域もあります。
つまり日本だけじゃなく、輸出先の事情も考慮した上で、価格設定する必要があるわけです。
ところが、オイルは性能を追いかければ追いかけるほど、ごく一部の人にしか手の届かない価格になってしまいます。
メーカー純正オイルが高額だと、さすがにまずいですよね。肝心のバイクが売れなくなります。
なので、コストを重視せざるを得なくなります。
だから新車や、エンジンが新車に近い状態で、一般的な(メーカーが想定する範囲内の)走り方、使い方をする人にとっては、純正オイルで十分です。
それ以外の人には「純正オイルではもの足りない」という事になります。
もし純正オイルが、自社のバイクに最も良いのであれば、MotoGPを初めとする全てのレースで、ホンダ車はホンダのオイル、ヤマハ車はヤマハの純正オイルを使っているはずですからね。
でも、過去(世界グランプリが2ストロークだった時代)も現在も、そうじゃないでしょう?
具体的に、どんな場合に純正オイルが良くて、どんな場合に社外オイルがいいのかは、あとでお伝えします。
バイクの状態も変化している
4ストオイルの記事にも書きましたが新車と、生産から何十年も経過した現在では、エンジン含めバイクの状態はかなり異なっています。
たとえば4ストロークの指定粘度は、新車 or 新車から1年程度を前提にしていますが(サービスマニュアルにその旨が書かれています)、走行距離が伸びたりすると、粘度を変えたり、社外オイルのほうが良かったりします。
2ストも場合によっては同じことが言えるかもしれません。
2,「高いオイル=高性能」
ここで取り上げる「高いオイル」とは、いわゆる社外オイルになります。
KTMやハスクバーナ、ドカティやハーレーなどの外車は、日本車みたいなバイクメーカー純正オイルがありません。
メーカー推奨オイルは、いわゆる社外オイルになります。
では、社外オイルの価格を大きく左右する要因は、なんだと思いますか?
これ、私の知るかぎり、インターネット上で取り上げている人を見た事がないです。
答えは、原油の仕入れ量です。どの潤滑油メーカーも原油(石油)は国外から仕入れるのですが、たくさん仕入れるほど、コストが安くなります。
仕入れが安くなるという事は、製品にコストをかけることができるわけです。
市販エンジンオイルの価格って、ある程度、市場価格がありますから、あまりにも市場価格から逸脱してしまうと、売れなくなります。
だからメーカー純正オイルほどではなくても、市販の社外オイルも(販売戦略上は)コストの制限があります。
たとえば1ℓ/3500円で販売するオイルをつくるとして
1,原価1ℓ/1600円−3500円=1900円(開発予算)
2,原価1ℓ/2000円−3500円=1500円(開発予算)
ドラム缶1本が200ℓですから、換算すると
1,38万円
2,30万円
かなりシンプルに計算していますが、8万円も開発予算に差が出ることになります。
どちらがより高品質なオイルをつくることができるか、一目瞭然ですね。
ある中小潤滑油会社の方が「(某大手のフラッグシップオイルと)同じ性能のオイルを私たちがつくろうと思ったら、価格を上げないと無理。原価がぜんぜん違う」と仰っていました。
もちろん、実際の製品コストは原油の仕入れ価格だけではなく、使用する添加剤や製品パッケージ、広告宣伝費などの営業経費、人件費その他、もろもろの経費が関わってきます。
その中でも原油価格はかなり大きなウエイトを占めるそうです。
このように考えると、今までとは異なる視点でエンジンオイルの価格を見ることができます。
A.販売価格 1ℓ/1000円のオイル
B.販売価格 1ℓ/3000円のオイル
シンプルに考えると、Bの3000円オイルのほうが高性能といえます。
(自分のバイクに合うかどうかは別ですが、その話はまた後で)
では、次です。
C.販売価格 1ℓ/3300円のオイル
D.販売価格 1ℓ/3500円のオイル
あるいは
E.販売価格 1ℓ/2000円のオイル
F.販売価格 1ℓ/2200円のオイル
同じ価格帯のエンジンオイルの場合、どのように判断できるでしょうか?
そうです、原油の調達コストですね。
といっても、原価は製品パッケージには書いてありませんから、エンジンオイルの販売メーカーの規模で推察することになります。
大量販売している比較的、中堅から大手のオイルメーカーなら、ロット数が多いためコストが抑えられます。
いっぽう、中小のオイルメーカーは小ロットのため、調達コスト(原価)が高くなる傾向にあると考えられます。
ちなみに、以上の話は2ストにかぎらず、4ストにも共通する話です。
例外もある
あえて名前は出しませんが、大手や、有名オイルメーカーのなかには、広告宣伝費をかけすぎていたり、ブランドイメージだけが先行しているものもあります。
値上がりするエンジンオイル事情
(エンジンオイルや、潤滑剤だけではありませんが)コロナ禍や、ウクライナとロシアの戦争以降、輸送コストがおおきく上昇しています。
オイルを製造する際に使用する添加剤も、入手しづらくなっているようです。
食品など、ほかの分野と同様、今後も値上がりする可能性は否定できないと思います。
実際の販売価格がどれだけ上昇するかはわからないですが、お気に入りのオイルがある場合、まとめ買いしたほうがいいかもしれません。
世界のエンジンオイル添加剤事情
オイルメーカーの方いわく、ロシアのウクライナ侵略により、良質な添加剤が入手しづらくなっているそうです。良いものは中国が買い占めているとか。2023年も「オイルなど、各種潤滑油が値上がりする」という予測もあります。追記:2023年2月1日からホンダ、ヤマハのオイルが値上げするとの発表がありました。
https://inuiyasutaka.net/bikeblog/engineoil/
自分に合うオイル選び3つのポイント
「どういう基準でオイルを選べばいいのか?」
「自分のバイクにはどのオイルが適してるのか?」
いよいよ、総まとめに入ります。
結論から言うと、
自分の走行シーンや、走り方に合ったエンジンオイルを選ぶ
ということになります。
まぁ、4スト用エンジンオイルと考え方は同じです。べつに好きなブランドで選んでもいいし、純正オイルでもいいと思います。
ただ、ここだけは抑えておいた方がいいと思う3つのポイントをお伝えします。
ポイント1:マッチング
スポーツ走行・レース向けにつくられたオイルは「エンジンを高回転まで回した連続走行」を想定しています。
(さきほどの例でいうと、濃い目のオイル)
にもかかわらず、ストップ&ゴーの多い市街地での走行がメインだと、私の例(カストロ)のようにプラグがかぶりやすくなったり、エンジンや、マフラーにカーボンが溜まりやすくなります。
ただでさえ、低回転での走行が多かったり、短い距離しか走行しない人、高回転まで回さない乗り方をする人のバイクは、カーボンが溜まる傾向にあります。
とくに250cc以上の2ストバイクだと、一般道で高回転を維持して、走行するのは現実的に不可能だと思います。
ですから、あまりエンジンを回さない(回せない)人や、都市部など信号待ちや渋滞が多く、アイドリング時間が長い場合、メーカー純正オイルか、社外のストリート向けオイルを入れた方が無難です。
ちなみに、ここでいう「高回転」は、ほぼアクセル全開のことを指しています。
失敗事例:用途と走り方のミスマッチ
筆者が仕事で2ストのジャイロキャノピー(スクーター)に乗っていた頃、こっそり社外オイルを入れて走っていたら、決まってマフラーにカーボンが詰まってしまい、バイクショップのオヤジさんに「社外品はダメ、純正オイルにしときなさい」と叱られたものです。
「スクーター用なら社外オイルでもいいだろう」
と思って、試しにカストロのスクーター用オイルを入れてみましたが、やっぱり詰まってしまい、また叱られるという結果になりました。素直に純正オイルを使ったら、詰まらなくなりました。
※全開走行がほぼ皆無で、渋滞が多く、信号待ちが多いことも影響していたと思います。
「スクーター用のオイル」は、さきほどのレース用オイルなどと逆で、あまりエンジンを回さない使用環境を想定して、つくられたオイルです。
(オイルによっては注意書きに「高回転での連続走行には向きません」みたいな事が書かれています)
ですが、ミッション車に使用できないという意味ではありません。
むしろ高回転まで回さない方、回せない方に合ったオイルです。

ちなみに筆者がRZV500Rに乗っていた時、やはり購入したYSP店で「ヤマハ純正オイルにしたほうがいい」と言われました。
渋滞の多い大阪市内ではとても回せないし、信号待ちが多く、アイドリング状態が長いですからね。
たしか2速6000rpmで、80km/hほど出たかな。オイルが垂れたり、かぶらないように回して走るのがむずかしかった記憶があります。
ありがちな失敗事例
高いオイルを入れる(どちらかといえばレースやスポーツ走行向け)
→エンジン(ピストン、ピストンリング)や、チャンバーにカーボンが溜まる→焼きつきを含むマシントラブルが起きやすくなる

走行距離 約16,000kmのアプリリアRS250。
キャブセッティングや、使用している燃料にもよると思いますが、メーカー指定オイルを使っていても、乗り方・使用環境が合っていないと、カーボンがたまりやすくなります。

50ccから125ccの2ストバイクの場合
基本的な考え方はこれまでお伝えしたとおりです。
ただ、原付クラスのミッション車は、250cc以上とちがって非力なため比較的、エンジンを高回転まで回して乗る人が多いと思います。
高回転を多用する前提でいうと
・スクーター用オイルではないメーカー純正オイル
・純正の上位ランクオイル
・社外オイル
いずれかを試してみるのもいいと思います。
4ストみたいに低回転ですぐにシフトアップするような走り方ではなく、しっかりパワーバンドを使って加速しながら走れる方ですね。
ポイント2:分離給油用オイルを使う
念のために書いておきますが、2サイクルエンジンは分離給油と混合があります。

ガソリンとエンジンオイルを一定の割合で混ぜて、ガソリンタンクに注ぐのが混合。
混合はレース車両や、一部の市販車(ベスパ、モペットなど)に採用されている方式です。
それに対して、公道走行用の2ストバイクのほとんどに採用されているのが、分離給油方式。
エンジンオイルを入れるタンクから、ポンプでオイルを送ってガソリンと混ぜています。混合仕様のように、自分で混ぜる必要がない代わりに、エンジンオイルを切らさないよう、継ぎ足す必要があります。
で、注意していただきたいのは、分離給油のバイクには、かならず分離給油用のオイルを使うこと。混合専用エンジンオイルを使用しないことです。
もし、混合専用の2ストエンジンオイルを分離給油のバイクに入れた場合、オイル粘度が高すぎて(オイルが硬い)、ポンプでオイルを送ることができず、最悪の場合、エンジンが焼き付くことになります。
例外として、分離給油のバイクを混合仕様(オイルポンプをキャンセル)にしている場合は、混合専用オイルを使用できます。
ちなみに、分離給油と混合給油を比較した場合、耐焼き付き性に優れるのは混合です。
ポイント3:理論と実際はちがう
さきほど紹介しましたが、エンジンオイルの性能はある程度、オイルメーカーのデータシートで判断できます。
粘度指数が高いほど、潤滑性能に優れているとか、引火点が低いほど燃焼しやすく、カーボンが溜まりにくいとかですね。
ただ、それはあくまで机上の理論。
実際に走ってみると、理屈に合わないことが多々、あります。
事実、LEOで試したカストロのオイルは、データシートを見て選びましたからね。でも、実際に走ってみると、プラグを新品にしようが何をしようが、カーボンが溜まりました。
(ほかのオイルだとならない)
最終的な判断は、実際に走ってみないとわからない部分もあるという事です。
それと、走った後に毎回、エンジンを分解するわけにいきませんから、自分の感覚やプラグの焼けなどから、どのように判断するか?
それによっても、評価が変わると思います。
プラグの比較

AとBは、エルフのMOTO2 OFF ROADを使用。Cはホンダ ウルトラGR2。
キャブセッティングは3つとも同じ。プラグは、A・B共通、Cは新品を使用。
プロのキャブセッティング オイルとの関係性
キャブセッティングの場合、理論上は「プラグがきつね色になるのが良い」と言われています。
自分でキャブレターをセッティングする場合、メインジェットなどを交換しては走行し、プラグを外して、焼け具合を確認する・・を繰り返した経験がある方もいると思います。
ところがプロの実務を注意深く見ていると、根本的な考え方からして、アマチュアとは違うんだなと実感しました。
たとえば、排気量無制限のエンデューロレースにDT50で出場して、優勝した某有名ライダーの担当メカニック(自身も元国際A級オフロードレーサー)いわく、
国際A級レベルのモトクロスレーサー、エンデューロレーサーだと、早くアクセルを開けたいから、濃いセッティングを好むライダーもいる
だそうです。
公道でもアクセルをどれくらい開けて走るか、乗り方や常用回転域はライダーによって違いますね。
(標高、気温、湿度も関係してきます)
つまり最適なセッティングは、ライダーや目的によって異なるという事です。
「キャブセッティングで詰め切れない部分を、2ストオイル(レース用の非売品)でおぎなう、という使い方をする」とおっしゃっていました。

使用オイル:MOTO2 OFF ROAD
前出のメカニックによる、キャブレターを再調整した後のプラグ。(ジェット類の交換なし)
撮影は秋。その後、真冬・春でもプラグの状態は大きく変わらず。
真夏でほんの少し、くすぶり気味になる程度。
実際の乗り味は、国際A級ライダー仕様?なので、調整前とはまるで別物。キビキビ走るようになった反面、より繊細なアクセルワークや、正確なブレーキ操作、ドライビングが求められる。
現在の筆者にとっては楽しい仕様だが、免許取得したばかりの頃に乗ったら、危なくて乗れないと思う。
調子が良くなったらエンジンが壊れる
もう一つ、大事なこと。
公道走行でキャブセッティングを詰めていくと、エンジン焼き付きのリスクが高まる場合があります。
とくに、エンジンが完調ではない場合です。
完調ではないエンジン→キャブセッティングを詰める→より回るようになる→エンジンが焼き付く
こうした隠れたリスクがあるにも関わらず、エンジンの状態を無視して、理論上のベストセッティング(プラグがきつね色になる状態)を出すのは、かなり危険だと思うし、エンジンが壊れたら割に合わないと思います。
調子が良くなる=メリットばかりではない、という事は知っておいた方がいいと思います。
なにが正解かは時と場合によって変わる
ということです。(アインシュタインの相対性理論)
同じバイクに乗っているほかのライダーの意見でも、全く同じ状態のマシンで、全く同じ条件でテストしない限り、ちがって当然ですし、人によって重要視するポイントも違いますからね。
そういった意味でキャブセッティングも、オイル選びも、人によって「最適」が変わるのは当然だし、時と場合によって違ってくるものだと思います。
オイルの話に戻ると、価格を最優先する人がいてもいいし、純正至上主義でもいいと思います。
以上を踏まえた上で、続きを読み進めてください。
筆者のオイル選び基準
用途:主に市街地走行、たまにツーリング走行
価格:お買い物バイクなのでオイル単体でリッター3000円は高い。1500円から2000円ぐらいまでなら許容範囲
オイルに求める要素:優先順位の高い順
・とにかくエンジンを壊さない(そしてカーボンが溜まらない)
・適度に高回転走行しても安心感がある
・刺激臭などがしないこと
・極端に煙が多くなければOK
・・・でしたが、走行距離も伸びてきたので、高級オイルもテストしていこうかと思います。
ショップも購入者もまちがえるオイル表示の闇
4ストオイルの記事でくわしく解説していますが、2ストオイルも表示方法が統一されておらず、私たち消費者にとってわかりづらい状況になってます。
さらにいうと、オイルを販売しているネットショップ(超有名な大手)も、商品説明を間違って販売しています。
実例
「100%化学合成油です!!」
→オイルメーカーに確認したところ、実際は半化学合成油(API グループⅢとⅣの合成油)だった
オイルの製品ラベルには「合成油」とだけ、書かれていた。
おそらくネットショップも、故意ではなく、知識不足が原因だと思います。
複数のサイトで、こうしたミスを確認しました。
消費者側が知識をつけて、しっかり見極める目を持つ事が大事だと思います。そこで、一般的に知られているオイルのベースオイルの種類と、実際の中身を解説します。
100%化学合成油
「フルシンセティック」または「合成油」と呼ぶこともあります。
エンジンオイルをつくる際、ベースオイルというものがあります。ベースオイルを5種類にわけたものがAPI(アメリカ石油協会による定義)です。
一般に「100%化学合成油」として販売されているオイルは、API分類グループⅣ、Ⅴになります。
例:PAO(ポリ・アルファ・オレフィン)、各種合成エステル、植物油、ナフテン系基油、リン酸エステル、シリコーン油、ポリブデンほか
鉱物油
APIでは3種類あります。(グループⅠ、Ⅱ、Ⅲ)
じつはこのうちグループⅢ(高度水素化分解基油)が、鉱物油なのに「合成油」(または全合成油、化学合成油)と表示して、販売されています。
「100%化学合成油」と勘ちがいしそうですよね。
実際に「全合成油」を「100%化学合成油」とまちがって販売しているネットショップがあります。
(2スト・4ストの両方で)
お客さんが「100%化学合成油」と勘違いして、商品レビューを投稿しているケースも多々、あります。
全合成油=100%化学合成油という意味ではありません。
大事なことなので、繰り返しました。
見分けるポイント
1,「100%化学合成油」と表示されているオイルと比較して、極端に価格が安い。
2,化学合成油、全合成油、合成油などの表示はあるのに「100%」と書かれていない製品
表示の例:化学合成油 (全合成油)
a.グループⅢに該当する鉱物油(高度水素化分解基油)
b.グループⅢと、ⅠかⅡの鉱物油を混ぜ合わせたオイル
c.鉱物油(グループⅠ、Ⅱ、Ⅲ)と化学合成油(グループⅣ、Ⅴ)を混ぜ合わせたオイル
どれかである可能性が高いです。
部分合成油
主に化学合成油と鉱物油(グループⅠ、Ⅱ、Ⅲ)を混ぜ合わせた製品です。
「半化学合成油」、「半合成油」、「合成油」、「セミシンセティック」などと表示されていることがあります。
性能的には「100%化学合成油と鉱物油の中間」といわれています。
2ストオイルの規格
表示の話ついでに、よく目にする「規格」について、簡単に説明します。
JASO規格
公益社団法人自動車技術会が制定する工業規格「日本自動車技術会規格」のこと。
Japanese Automotive Standards Organizationの頭文字をとってJASO、またはJASO規格といいます。
簡単にいうと、インチキ(粗悪)なエンジンオイルを排除し、品質が適正なオイルの普及をはかる目的でつくられました。
2ストの場合、「潤滑性」「清浄性」「排気煙ならびに排気系閉塞性」を評価し、グレードの高い順にFD←FC←FB←FA(現在は廃止)となっています。
オイル規格
オイル選びで「FD規格のオイルが一番すぐれている」という意見があります。
粗悪なオイルではないことは確かだと思いますが、「グレードが高い」「規格にパスしたオイルだけが高性能」というほど、単純な話じゃないんですね。
4ストオイル同様、こうした規格にパスするためにはコストがかかるため、あえてJASO規格を取得していない高品質オイルも存在するからです。
あくまで客観的にオイルを評価するための基準の一つ、として捉えたほうがいいと思います。
最強の2ストオイル
冒頭で紹介した、オイルテスト400〜500以上を経験した元国際A級オフロードレーサーの方に、2ストオイルについて話をうかがいました。
元国際A級オフロードレーサー
ミニバイクでロードレースデビュー。ノービスながら鈴木忠男氏(SP忠男)や、菅家安智氏(エスアールエス・スガヤ創業者)を破り、注目される。
KM90A、GT80ミニトレ、RDシリーズ、RZ350、カワサキ750SS H1、SR400、TZ350、TZR250、XJ750E、CB750F、RZV500R、YZF-R1(初期型を公道テスト)などに乗り、愛車はセロー。
レース引退後は、Y社を中心に修理を手がけた。2022年現在、お客さま相談室で回答できない質問が来るたび、Y社の偉いさんから連絡があり、渋々レクチャーしているとか。
- オンロード、オフロード、さまざまなレースで2ストオイルを使ってきたと思います。もっとも良かったオイルについて教えてください。
-
私が使っていたオイルは、潤滑油メーカーがコースに合わせて、つくってきたオイル。
本当にすぐれたオイルは、タイムが圧倒的に速くなる。それこそ、Y社の担当者がおどろいて「一体、どうやったんですか?」と聞きに来るほどね。
だれでも乗れば一瞬で体感できるぐらい激変する。
そういうオイルを作っていたよ。混合・分離給油の両方に使えるオイルだった。2ストが生産終了になって、メーカーが製造をやめてしまったけどね。
- 現在は2ストオイルの銘柄も、20年前と比較して圧倒的に少なくなりました。市販オイルで、良いオイルを見つけるポイントはありますか?
-
むずかしいね。私たちが使っていたオイルと同性能のオイルは、市販ではまず手に入らないと思う。
・・・そんなわけで、「最強の2ストオイル」は幻になってしまいました。
ですが現状、わたしたち一般ユーザーが入手できる範囲で、良いオイルのポイントを教わりました。
以下を参考にしてください。
最新技術の2ストオイル
ごく一部をのぞいて、積極的に2ストオイルを開発するメリットが潤滑油メーカー側にないため、
「現在進行系で、アップデートされているオイルかどうか?」がポイントです。
バイクを長持ちさせることを目的とするなら、以下の中から合うオイルをお勧めします。
もし、私だったら「どのオイルをどういう基準で選ぶか?」という視点で挙げています。
モトレックス MOTOREX
2023年現在も2ストロークエンジンの公道用バイクを販売しているKTMや、ハスクバーナ(現在はKTM傘下)の指定オイルメーカーがモトレックス。
モトレックス(スイス)は日本国内でも40年以上前から定評のあるメーカーです。
・オンロード向け POWER SYNT 2T(100%化学合成油)
・オフロード向け CROSS POWER 2T(100%化学合成油)
・FORMULA 2T(部分合成油)
3種類あります。
POWER SYNT 2T
チャンバー交換やボアアップ車、高速道路などスポーツ走行メインの方向け。
高い潤滑性と清浄性を兼ね備えたLOWスモークオイル
公式 https://www.daytona.co.jp/products/series-S00728-genre
100%化学合成油でキャタライザーテスト済。
分離、混合併用可能。25:1~100:3で調整ください。
●100%化学合成油
・用途:オートバイ用2サイクルガソリンエンジンオイル
それにしても、令和の時代にインジェクションの2ストローク公道マシンを生産するKTM・ハスクバーナは熱いですね。
さきほどの元国際A級モトクロスレーサーいわく、1970年代の時点で4ストのほうが、タイム的に速いことはわかっていたそうです。
ただ2スト好きなライダーが少なくないため、メーカーも生産し続けたのだとか。
海外にも2ストフリークが多いので、KTM・ハスクバーナも生産し続けているのでしょう。
ほかにはBETA(ベータ)や、tmレーシングなどのイタリアメーカー、ガスガス(スペイン創業。現在はKTM傘下)が現行モデルで公道走行可能な2ストを販売しています。
CROSS POWER 2T
ストップ・アンド・ゴーの多い市街地走行がメインで、たまにスロットル全開近くまで回す人向け。
100%化学合成油でスロットルの開閉が激しいオフロード車用に開発されたオイル
公式 https://www.daytona.co.jp/products/series-S00727-genre
分離、混合併用可能。推奨混合比は100:1までを実現。
●100%化学合成油
・用途:オートバイ用2サイクルガソリンエンジンオイル
FORMULA 2T
市街地走行メイン、スクーターのほか、1980年代以前の2ストなど基本設計の古いバイク向け。
鉱物油に化学合成油を配合し両方の長所を活かした部分合成油。
公式https://www.daytona.co.jp/products/series-S00729-genre
分離給油式。(混合使用も可能、推奨混合比25:1~50:1)
●部分合成油
・用途:オートバイ用2サイクルガソリンエンジンオイル
エルフ elf
モトレックスとならんで、昔から定評のあるオイルメーカーです。
独自に製作したマシンで、二輪ロードレース世界選手権(2ストローク)に参戦していました。

4ストだと、カワサキの純正ハイグレードオイル「KAWASAKI Elf Vent Vert」冴速と冴強を供給しています。
エルフの一般公道用(分離給油用)2ストオイルは2種類です。
MOTO2 TECH
オンロードでのスポーツ走行重視の方や、チャンバー交換している人向け。
ノーマル車両でストリートで使用する場合、(キャブセッティングにもよりますが)ある程度、高回転までエンジンを回して連続運転するシチュエーションに向いていると思います。
たとえば高速道路を走ったり、信号や渋滞がほとんどない環境で走る場合ですね。
・全化学合成油
・分離・混合両用
・推奨混合比:50:1〜25:1
レーサーレプリカ、モトクロッサー、スクーター、高回転エンジン、高回転を多用するライディングにお奨め。化学合成油の採用と硬めの粘度設定により、優れた潤滑性と油膜形成を実現し、低温時のドライバビリティと耐摩耗性を強化。クリーンな燃焼特性によりデポジットの発生を抑制し、優れた潤滑性によりパワーロスを抑えます。
優れた化学合成油と添加剤の採用により、各規格のもっとも厳しい性能規格を余裕をもってクリアする最高水準の清浄性と摩耗防止性能を発揮。高油温の過酷な条件下においてもデポジットの発生を抑制。エンジン内をクリーンに保ち、各エンジンパーツを保護。
公式 http://www.elfmoto-lub.jp/aptitude/result.php
始動性:
保護性能:
パワー:
※評価はメーカーサイトより。
MOTO2 OFF ROAD
市街地走行メインで、たまにツーリング・スポーツ走行する方向け。
ふだんストップ・アンド・ゴーの多い市街地を走っていて、回して走りたい人にお勧め。社外オイルを使用したい方で、多くの方にフィットすると思います。
1980年代以前の、基本設計が古いエンジンにもいいと思います。
・部分合成油
・分離・混合両用
・推奨混合比:50:1〜25:1
50cc〜250cc、オンロード・オフロードを問わず、スクーターからスポーツバイクまで幅広く対応。化学合成油の添加と適正な粘度設定により、優れた潤滑性を発揮すると同時に、安定した油膜形成を実現。低温から高温時まで優れた耐摩耗性によりエンジンを保護。
各規格のもっとも厳しい性能規格をクリア。優れた清浄能力と燃焼特性により、スタート時の黒煙と排気ガス中の有毒物質を抑え、安定した出力を引き出します。
公式 http://www.elfmoto-lub.jp/aptitude/result.php
始動性:
保護性能:
パワー:
※評価はメーカーサイトより。
エルフのイメージが変わった
筆者が「MOTO2 OFF ROAD」を5,100kmほどテストした感じでは、ピュートライン(putoline)のRS959と同等以上のフィーリング。
カストロのPOWER1 RACING 2Tよりも断然、良かったです。
POWER1 RACING 2Tと比較して、まずエンジンの振動が減り、回転がスムーズになりました。
テスト前は「大して変わらないだろう」と思っていました。1990年代にエルフを使った時、あまり好印象ではなかったからです。(その時の印象は普通レベル)
だから今回、使ってみて変化を感じたときは最初、勘違いじゃないか?と疑いました。
ただ、走れば走るほど、低回転から高回転までスムーズで、トルク感も全然ちがう。
交換前も、POWER1 RACING 2Tに交換後も、外気温は同じく20℃ほど。今回のテストが特別、気温が高い(濃くなった)わけではないので、気温による変化ではないと考えられます。
多くのメーカーが2ストオイルを製造中止したり、縮小していく中、エルフは進化してるんだなと感じました。
「もっと走りたい」と思わせてくれるオイルです。
追記:35℃を超える真夏の炎天下における連続走行でも、難なく走れています。
以上、エルフかモトレックス、どちらかのメーカーを選んでおけば間違いないと思います。
売れている=良い製品とはかぎらない理由
ビジネスの世界では「マーケティング(宣伝)上手で売れているだけ」という事がよくあります。
少なくともエルフや、モトレックスに関しては、そういう心配がないと思います。
しかし大手メーカー、有名メーカーのオイルがすべて良いかというと、4ストオイルの記事にも書きましたが、ダメなオイルもあります。
レース用と市販オイルが別物だったり、昔は良かったけど、会社が買収されて今は名前だけ・・とかですね。訴えられたら嫌なので具体名は書かないけど、いろいろあります。
(広告宣伝費、営業経費がかさむと当然、販売価格に反映されます)
ブレインズ BRAINS
ブレインズブランドを展開するアッド ブレインズ ジャパン株式会社は、ワコーズ(和光ケミカル)の元社員が2007年に設立した潤滑油会社。
・KTMの現行2ストローク(250/300EXC TPIなど)インジェクション分離給油モデル
・キャブレターの国産クラシック スーパースポーツモデル
に対応すべく開発されたオイルがB2 SPORTSです。エンデューロレーサーの間で好評のようです。

BRAINS B2 SPORTS【B2S】は、競技用でありながら最新の分離給油システムを搭載したエンジンをターゲットに開発した分離給油用2サイクル エンジンオイルです。
2サイクルエンジンオイルを機械的に吐出混合させる分離給油システムでは、燃料との高い混合性能を有していなけれ ばなりませんが、競技用オイルが要求する耐焼付き性能とはトレードオフの関係にあり、【B2S】はその性能を高い次元でクリアして製品化して います。
特に高回転における耐焼き付き性及び耐摩耗性を重視して製品化しており、フューエルインジェクション搭載の分離給油型エンデュー ロレーサーや、クラシカルな国産スーパースポーツにも使用可能です。
清浄性はJASO:FDレベルをクリアしており、燃焼室やエキゾーストへの カーボン付着を最小限に抑えます。(本製品はJASO取得申請はしておりません)
公式サイトより
BARDAHL(バーダル)
アメリカのシアトルにある「バーダル・マニュファクチャリング・コーポレーション」は、創業1939年、80年以上の歴史を持つ潤滑油会社。
MotoGPで6度の世界タイトルを獲得したバレンティーノ・ロッシがチームオーナーを務め、MotoGP参戦中の「ムーニーVR46レーシングチーム」において、バーダルはスポンサーとなっています。
ご紹介するオイルは、イタリアのバイクメーカー tm Racing(ティーエム・レーシング)の指定オイルです。

tm Racingは4スト・2ストで「速さ」を徹底追求したオフロードマシンをつくることで知られています。
車だと、よくフェラーリに例えられます。高額ですが、一般の人が購入できるワークスマシンといえます。
(筆者がtmを知ったのは1999年ごろ。ハスクバーナ、VOR、フサベル、KTMなど4スト単気筒のモタードマシンが日本で話題になり始めた頃でした)
KTS COMPETITIONの特徴
100%化学合成油 JASO規格FD 分離・混合用
・最新型ポーラーアトラクション被膜が、金属表面の凹凸に500℃以上の高熱でも変質しない皮膜を形成。通常のエンジンオイルではカバーしきれないドライスタート、高負荷時でも摩耗を極限まで抑制。
・最新型ポーラーアトラクション被膜は20,000km以上効果が持続し、エンジン内の摩擦部分をコーティング。ピストンの動きをスムーズにします。
・一般的な潤滑剤に使用される成分はほとんどが固形物のため、沈殿や目詰まりなどトラブルの原因になるものがあります。最新型ポーラーアトラクション被膜は、完全な液体成分で電気的に分子レベルで吸着するためトラブルの原因にはなりません。
・エステル、オクタン価向上剤「BARDAHL Octane Booster(バーダル オクタン ブースター)」を配合し、 エンジンのパワーと性能を向上させます。
高回転を多用したり、スクーターや、スノーモービル用としても使用できます。
MOTUL(モチュール)
モチュールはフランスに本社をおく潤滑油メーカー。
日本では長くレースをスポンサードしてきたこともあって、2スト・4ストともに知名度は高め。人によって、けっこう評価が分かれるオイルメーカーだと思います。
710 2T
イタリアのバイクメーカーBeta(ベータ)の推奨エンジンオイル。
Betaは、KTMやハスクバーナ、tm Racingとならんでトライアルや、エンデューロ ユーザーの間で知られるメーカーの一つです。

エステル配合100%化学合成油 JASO規格FD 分離・混合用
公道走行、競技用、レーサーレプリカ・オフロードスポーツなど。
800 2Tの油膜特性をそのままに、ガソリンとの混合性能を向上させ、分離給油型エンジンの為に開
モチュール公式
発された100%化学合成オイル。エステル配合により、燃焼時のスモークを抑え、デポジットの発生を
最小限に抑えます。
Moty’s(モティーズ)
株式会社トライボジャパンの潤滑油ブランド。ここ数年、四輪・二輪レースを中心にSNSで目にするようになりました。
M171
一般走行用に開発されたMoty’sのスタンダード2ストロークエンジンオイルです。
公式サイトより
高い混和性と燃焼性能があり、排気煙を最小限に抑え燃焼室をクリーンに保ちます。
純正オイル ストリート走行・スクーター向け
サービスマニュアルで確認できたものは、車種名を掲載しています。
ヤマハ オートルーブ スーパー
スクーターはもちろん、ミッション車にもお勧め。
筆者はRZV500Rで使用。真夏の高速道路で、10,000rpm以上で連続走行しましたが問題なし。
(人間は手が痺れました)
ホンダ ウルトラスーパーファイン
Dioなどスクーターや、125cc以下のミッション車で、あまり回さない人に最適。
筆者はリミッターカット済み・ノーマルチャンバーのNS-1(新車からチャンバーを交換するまで)に入れてました。
バイクに不具合がない前提でいうと、真夏にアクセル全開で連続走行し続けても焼き付かず。
(のちに分解してシリンダーをチェックしましたが問題なし)
ホンダ ウルトラ2スーパー
Dio、MBX50、CRM50/80、NSR50/80、NS-1、NS400R、NSR250R指定オイル。
公式サイトに表記はないが、部分合成油(半合成油)と思われる。

スズキ CCISオイルスーパー
昭和シェル石油(現RSエナジー株式会社)製。RGV250Γ、GT750指定オイル。
市街地走行がメインの場合や、回して乗らない人はアプリリアRS250にもお勧めです。
2サイクル特有の臭いや排気煙を抑えた、スモークレスタイプ。すぐれた清浄でエンジンの内部をクリーンに保ち、快適な走りを約束します。
https://www1.suzuki.co.jp/motor/accessory/oil_ch/two_cycle_oil/
ツーリングメイン、たまにスポーツ走行の方向け
ツーリングや峠、高速道路での使用など、スポーツ志向なグレードのオイルです。
公道で頻繁にエンジンを回せない250cc以上のバイク、もしくはチャンバー交換など、ライトチューンした125cc以下のバイクにおすすめ。
ヤマハ オートルーブ スーパーRS
公式サイトによれば化学合成油。100%とは書かれていないため部分合成油(半合成油)と思われます。
ホンダ ウルトラGR2
NSR250R、NS400Rの純正指定オイル。
ホンダ公式サイトに表記はないが部分合成油(半合成油)と思われます。
エルフのMOTO2 TECH(100%化学合成油)と比較すると、始動性・トルク感は劣ります。

エルフと比較すると、燃えにくい印象。始動性が劣るのもその影響か?
スズキ CCISオイルスーパー TYPE02
JX日鉱日石エネルギー(現ENEOS株式会社)製オイル。
オーバーサイズピストンを組んだGT750で使用。RGV250Γ指定オイル。個人的には、アクセル全開で連続走行をしないアプリリアRS250には、カストロールより、スズキ純正オイルのほうがいいと思います。
2サイクル高性能オイル。耐摩耗性、耐焼付性、酸化安定性を一段と向上。
https://www1.suzuki.co.jp/motor/accessory/oil_ch/two_cycle_oil/
2ストオイルQ&A
400から500以上のオイルテストを手がける2ストのエキスパートに教わった内容や、よくある疑問の検証結果をシェアします。
- オイルが焼けた時の匂いとオイル性能は関係ありますか?
-
昔はストロベリーなど、匂いを売りにしたエンジンオイルが、ホームセンターなどで販売されていました。(現在もあるかもしれません)
植物油(ひまし油)など、もともと甘い香りがするものを除けば、意図的に匂いが付けられているオイルは香料が入っている、と言うことになります。
性能を追求した場合、余計なものですね。
- 煙の量とオイルの良し悪しは関係しますか?
-
バイクごとに設定されたオイルポンプの吐出量が違うため、煙の多い・少ないだけでエンジンオイルの性能を評価できません。
花火の煙幕みたいに、黄色くしたり、赤色にしたり・・・という話を過去、オイルメーカーの開発担当に提案したそうですが、煙に色をつけるのはメーカーも難色を示していたとか。
エンジン不調が原因の場合も
ある程度、走行距離を走っていたり、なんらかの理由でエンジンのダメージが大きい場合、圧縮不良によって燃焼温度が低下し、白煙が増えているケースがあります。
チャンバー内部にエンジンオイルが溜まっていた、という事例もありました。
エンジンを汚さない要因はオイル? ガソリン?
ある日本の科学者が2ストエンジンで実験したところ、エンジンにカーボンが蓄積する一番の決定打は、使っているエンジンオイルだったそうです。
レギュラーとハイオクなど、オクタン値の違いはそれほど大きな差はありません。(出典)
燃料とキャブセッティングの関係
2スト・4スト共通の話。
レギュラーガソリンを使用してキャブセッティングした場合、レギュラーを使用する。
ハイオクでキャブセッティングしたら、ハイオクを使うのが原則です。
レギュラーとハイオク(インチキな製品を除く)を比較テストした場合、レギュラー車にハイオクを入れると、決まって濃くなり、かぶる傾向にありました。
(2ストスクーターは走行不能になりました。レギュラーに交換すると元どおり復活)
とくべつな理由がある場合を除いて、レギュラー指定のエンジンにハイオクを入れたり、ハイオク指定のエンジンに、レギュラーガソリンを入れたりしないほうがいいと思います。
やぶ蛇になるリスクのほうが大きい、と実感しています。
ハイオクガソリンは名ばかり GS業界のウソ
2020年6月27日の毎日新聞で「石油元売り3位のコスモ石油が販売しているハイオク スーパーマグナムが、実際にはエンジンの汚れを取り除く添加剤が入っていないにも関わらず、10年以上、『使い続けるほどエンジンをきれいにしてくれる』と虚偽の性能を公式サイトに掲載していた」と報道されました。さらにキグナス、コスモ石油、エネオス、出光、昭和シェル石油など、石油元売り5社がそれぞれ販売するハイオクは、ガソリンスタンドに出荷する前に、他社製品と混ぜられていることも判明しました。
https://inuiyasutaka.net/bikeblog/gasoline-additive/
使用するエンジンオイルで、オイル消費量は変わる?
「XXXのオイルは、オイル消費が早い」とか、よくレビューで見かけますよね。
実際のところ、どうなのか?
結論からいうと、そう変わりません。(分離給油の)2ストロークエンジンは、エンジンの回転数やスロットル開度によって、オイルポンプの供給量が制御されているからです。

2ストのインジェクション車(KTMやハスクバーナなど現行車)は、エンジン回転数とスロットル開度を、ECUが読み取って、オイルの吐出量を調整してくれます。
ECUとは
エンジンの運転制御を電気的に制御するマイクロコントローラー(マイコン)。
ほかにも、エンジンコンピューター/エンジン・コントロール・ユニット/エレクトロニックコントロールユニットとも呼ばれる。
ただし、ECUも使っているオイルの粘度までは検知できないと思います。
そう考えると、20年以上前の古いキャブ車のオイルポンプが、エンジンオイルの粘度を検知して、自動的にオイル吐出量を補正してくれるかというと・・・
そこまで高度な機能を備えた2スト市販車は、おそらくないと思われます。
ですので、もし「オイルで消費量が変わった」という場合、
・オイル特性のちがいによるスロットル開度のちがい
・常用するエンジン回転数の変化
が大きな要因と言えるのではないでしょうか。
(もちろん走るシチュエーションや、気温など環境面のちがいも影響してきます)
わかりやすくいうと
ホームセンターオイルの場合:「あまり回すと心配だから、抑えめで走ろう」→エンジン回転数は低め、アクセルもそれほど開けない→オイル消費が遅い
いいオイルの場合:ガンガン回す→エンジン回転数高め、アクセル開け気味→オイル消費が早い
こんなイメージです。(実際の筆者の例)
ちなみに使用するオイル粘度が異なる場合、オイルポンプで送られるオイル量が変わった結果、消費量が変わることはあるかもしれません。
ただ、分離給油用のオイル同士を比較した場合、粘度による差はごくわずかだと考えられるため、粘度がどの程度オイル消費に影響するかは不明です。
2ストエンジンの寿命
排気量とエンジン寿命の関係
一般的には小排気量ほど、高い回転数で走るため、エンジンへの負担は大きいです。
50cc→125cc→250cc→500cc→750cc
排気量が大きくなるにつれて、エンジン寿命は長くなる傾向にあります。同じ120km/hで走った場合、125ccと750ccでは、エンジンの負担がぜんぜん違います。
走行距離
1,080基以上のエンジンをオーバーホールしている「エンジンオーバーホール専門店 有限会社ガレージ湘南」の代表 日向社長いわく、(統計的に見て)2スト250ccのエンジン寿命は20,000kmほどだそうです。
実際、走行距離20,000kmに満たない2ストのエンジン修理現場を、筆者はいくつも目撃しています。
もちろん「20,000kmを超えたらすぐ壊れる」というわけではありません。
筆者が乗っているLEO120は、オーバーホールなしで35,000kmを超えていますからね。
(壊さないよう、工夫して乗っています)
ですが、一般的に「もともと2ストエンジンはオーバーホールなしで5万キロ、10万キロ持つように作られていない」という話です。
扱い方によっては20,000km未満でも焼き付くことがありますし、仮に40,000km、50,000kmで走れているからといって「エンジン快調」とは限らないです。
素人から見て快調に思えても(気がついていないだけで)、プロから見ると「ヤバいでしょ」というケースがよくあります。
Q.2ストロークエンジンの寿命はどれくらいですか?
A.公道走行の場合、走行距離20,000kmごとが目安です。
たとえばNSR250Rだと、(エンジンオーバーホールなしで)20,000km以上走っているバイクで、完調なエンジンを見たことがないです。
NSR250Rにかぎらず、使用環境によって差はありますし、20,000kmを超えたからといって、すぐ走行不能になるわけではありません。
たとえば人間で言うと、病気じゃないから、生きてるから「健康的で元気」とはかぎらないですね。
それと同じで「動いている」「壊れていない」ことと、エンジンの状態が良いという事はまったく別の話です。「動けばいい」というレベルなら、20,000kmを超えても走ることは可能です。
ただ、エンジン以外にキャブレターや、オイルポンプなども劣化が進みます。
エンジン焼き付きのリスクを考えると、20,000kmごとが目安というわけです。
https://garage-shonan.wixsite.com/info/2stengineoverhaul
TZ250、RS250など2ストロークレーサー全盛の時代は、走行ごとにエンジンを分解したり、ピストンリング交換が当たり前の時代でした。
(混合仕様で植物油を使っていたためエンジン内を清掃しなければならないという理由もあります)
公道マシンの場合、そこまでシビアにしなくても走れますが、過信は禁物です。
ガソリンタンクにオイルは逆効果
分離給油にもかかわらず、「万一の時の保険のため」などと、ガソリンタンク内にエンジンオイルを入れると逆効果。
トラブルを誘発することになります。
必要以上のオイルが燃焼することで、ピストンにカーボンが蓄積しやすくなるからです。
「素人にありがちで、余計な事をしてエンジンを壊してしまう」
2ストのエキスパートがおっしゃってました。

カーボンが溜まった2ストのシリンダー
走行距離14,800km

分離給油のまま、混合ガソリンが使用されていたGT750のエンジン。
チャンバーの中にもエンジンオイルが溜まっていて、始動すると、おびただしい量の白煙を吹いていた。
(まともに走行できない状態)
煙の量は、火事とまちがえられて通報されそうなレベル。
オイルポンプでよくあるトラブル
4スト同様、2ストもオイルポンプにまつわるエンジントラブルがあります。
1つはオイルポンプの故障。これは経年劣化のため、仕方ない部分もあります。
もう一つは、自分でオイルポンプを調整して、壊してしまうケース。
オイル吐出量はなんらかの意図があってメーカーが設定しているため、やみくもに触らないほうがいいです。
即、エンジン焼き付き(故障)につながります。
よかれと思ってオイルポンプを自分で交換し、取り付けやエア抜きをミスして、焼き付くこともあります。
オイルポンプトラブル事例1
カワサキ KH400
空冷2ストローク ピストンバルブ並列3気筒。生産:1975年-1982年

前の所有者がオイルポンプを分解して、壊れたのを隠したまま、販売した痕跡があった。
オイルポンプが入手困難なためエンジンオーバーホールして、混合仕様に変更。

オイルポンプトラブル事例2
スズキ GT750
水冷2ストローク ピストンバルブ並列3気筒。生産:1971年-1977年

エンジンオイルの潤滑不良で、2番シリンダーが焼き付いたGT750。ピストンが割れていた。
過去にエンジンを開けた形跡があり、正しくオイルポンプが取り付けられていなかったようだ。
2ストに最適な添加剤は?
私自身がテストして良いと感じているのは、昔から定評のある金属表面改質剤スーパーゾイルです。
クランクシャフトの振動が大きいLEOに使用すると、かなり静粛になりました。
こちらの記事でくわしく解説しています。
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