日本の自動車メーカー純正オイルのOEMを手がける三和化成工業。
- メーカーの方に直接、うかがった話や、バイクショップでの使用実績
- 5年間、ベリティオイルを使用したエンジンのピストン
- 製品ごとに相性が良い車種、えらぶポイントを掲載
- 空冷ビッグバイクオーナーの悩みに対応
ただの感想記事ではなく、バイク初心者の方でも、読んですぐ役に立つ記事にしました。
ベリティオイル(Verity)とは
三和化成工業株式会社の自動車・バイク用 潤滑油ブランドが Verity。
自動車用エンジンオイル、バイク用エンジンオイルのほか、ケミカル用品を販売しています。

鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、長年にわたってロードレーサー加賀山 就臣(かがやま ゆきお)選手率いる「Team KAGAYAMA」のスポンサーを務め、入賞実績があります。
写真の黒いマシンは、加賀山さんが2015-2018年まで、ARRC(アジアロードレース選手権)「スズキ アジアンチャレンジ」で若手育成をしていた頃に使っていたマシン。
(2025年現在もARRC UB150クラスで、同型のマシンが走っています)
レンタルバイクレース RB150シリーズ
三和化成工業が協賛しているミニバイク耐久レース「RB150」シリーズ。

スズキ FU150
エンジン:油冷4ストローク単気筒 DOHC4バルブ
排気量:147.3cc
ミッション:6速
クラッチ:湿式多板
製造国:マレーシア
オートバイレーサー 武田 雄一氏が主催、 サーキット秋ヶ瀬(埼玉県さいたま市)で開催されています。
じつは、三和化成工業の社員さんも密かに参戦されています。
筆者の知る範囲では、ほかに奈良県でミニバイクレースを主催している「はっぴいえんどプロジェクト」さんのいくつかのレースや、オフロードレースにも協賛しているそうです。
もちろん4輪レースも。


三和化成工業株式会社とは
1947年10月設立、神奈川県 横浜市を本拠とする潤滑油会社。
日本国内のバイクや、国内自動車メーカーの純正オイル生産に深く、深く関わっている老舗。
前出のとおり、2輪・4輪レースのスポンサーをおこなっています。
モータースポーツ以外では、工業用潤滑油ブランド「SAMIC」(サミック)があります。
ほとんどのオイルブランドは、自社に工場を持たない「ファブレス・ブランド」だが、三和化成はエンジンオイルを調合する工場(横浜・静岡)や、分析試験センターを持ち、開発・生産までを一貫して、自社でおこなうブレンダー。
2025年7月13日時点で、社員数は約100名とのこと。
社員さんの中には現役ライダーや、元レーサー、レース参戦している方がいます。

関東大学院 理工学部 先端機械コース 機素材料力学(堀田)研究室との共同研究
オープンキャンパスにて

エンジンオイル業界の仕組み
オイル解説の前に、「業界の仕組み」を理解しておくと、Verityオイルと、その他オイルメーカーの立ち位置がよく分かります。
順番に解説します。
ベースオイル
日本国内で原油を精製し、「ベースオイル(基油)」そのものを製造・販売している石油元売り会社は、業界再編が進んだ結果、現在は実質的に「3大グループ」に集約されています。
1,エネオス(旧 日本石油)
2,出光興産(旧 昭和シェル)
3,コスモ石油
あなたが普段目にする「ホンダ純正」や「ヤマハ純正」、そして「ワコーズ」や「ベリティ」などのオイルも、元をたどれば、中身のベースオイル(鉱物油や、VHVI(Very High Viscosity Index))は、ほぼこの3社のいずれかから供給されています。
オイル性能を左右するベースオイルを販売しているのが、石油元売り会社です。
では、実際にエンジンオイルを製造しているのは誰なのでしょうか?
エンジンオイルの中身
「エンジンオイル(製品)」=ベースオイルに様々な添加剤を加えたもの。
比率は、一般的にエンジンオイルの約75%がベースオイル、約25%が添加剤と。オイル缶に書かれている「鉱物油」「半化学合成油」「100%化学合成油」などは、ベースオイルのことを指します。
OEM・ODM・PB製品のちがい
ここから重要なポイントです。
このカラクリを知っていると今後、オイルを見る目が変わってきます。
OEM (Original Equipment Manufacturing)
=「製造」だけを委託する
ブランド側(依頼主)が、配合レシピや、仕様書を完全に決めて、工場(ブレンダー)は言われた通りに作るスタイルです。
デメリット:ブランド側に高度な知識と開発力が必要です。
主導権:ブランド側(依頼主) にあります。
オイル業界での例:NUTEC(ニューテック)や、A.S.H.(アッシュ)のようなこだわり系
「ベースオイルはエステル100%で、粘度はこうして、添加剤はこの成分を使ってくれ」と指定して、三和化成などの工場(ブレンダー)で作ってもらうケース。
チューニングショップの特注オイル:
「油温が130度になってもタレないオイルを作りたい」とレシピを持ち込むケース。
メリット: ブランド独自の「尖った性能」や「他社にはない味付け」が出せます。
ブランド側(依頼主)は、オイルはもちろんのこと、エンジンに関しても熟知している必要があります。ホンダや、ヤマハ純正オイルは、ここで言う「ブランド側」の立場です。
ODM (Original Design Manufacturing)
=「開発(設計)」と「製造」を委託する
ブランド側(依頼主)は、「こういう商品を作りたい(安くしたい、燃費を良くしたい等)」という要望だけを伝えます。
工場(ブレンダー)側が、自社の持っている技術や既存のレシピを使って、「では、こんなオイルはどうですか?」と提案し、製造まで行います。
デメリット:「どこにでもある普通のオイル」になりやすく、他社との差別化が難しくなります。
主導権:工場側(ブレンダー) の技術力に依存します。
オイル業界での例:
・量販店のプライベートブランド(PB)
「1缶1,280円で売れる、そこそこ性能の良い5W-30を作って」と依頼し、ブレンダーが手持ちのレシピ(カタログ品)から最適なものを提案してラベルを貼るケース。
・純正オイルの一部
自動車メーカーが「当社の新しいエンジンの燃費基準をクリアするオイルを提案してくれ」とブレンダーに依頼し、開発してもらうケース(共同開発に近いですが、設計はオイル屋が行うためODMの性質が強いです)。
メリット:ブランド側に知識がなくても、ブレンダーの技術力ですぐに製品化できます。開発コストも安いです。
ここがポイント
A. 石油の元売り会社(ブレンダーも兼ねている)
B. ブレンダー(工場を持ち、実際にオイルを調合する会社)
Verity(三和化成工業)/Hiroko(広島高潤)/SUNOCO(日本サン石油)
WAKO’S(和光ケミカル)※厳密にはフォーミュレーター
C. ファブレス・ブランド
製造設備を持たず、企画・マーケティングに特化した企業。製造は外部企業(Bのブレンダーなど)に委託する。
市場に流通する「ショップブランド」(PB商品)、純正オイルや輸入品を除く、アフターマーケット製品がこれに該当する。独自のレシピ(フォミュラー)を指定する、こだわりが強い企業もいれば、丸投げ、様々なスタイルがあるため、ひとくくりにできない。
ベリティ、SUNOCO、ワコーズを比較
ブレンダー(調合工場)として比較した場合をまとめました。
| 比較項目 | 日本サン石油 (Sunoco) | 和光ケミカル (WAKO’S) | 三和化成工業 (Verity) |
| 開発の原点 | 冷凍機油技術からの応用 | 整備現場・レースからのフィードバック | 顧客要求に基づくODM設計 |
| コア技術 | ドライエア・ブレンディング ES-TECH(エステル) | Synergy FM 3D + LCT(セラミックス) | Bi-Synthetic 多品種最適化配合 |
| 処方思想 | ベースオイル(エステル)の純度と安定性を重視。ノンポリマーで物理的強さを追求。 | 添加剤の化学的機能を重視。高濃度配合で摩擦係数を能動的に制御。 | バランスと適応性を重視。コストと性能の最適解を導き出す柔軟性。 |
| 製造拠点 | 市川工場(千葉) ドライエア設備完備 | 小田原工場(神奈川) エアゾール・高濃度調合対応 | 新東京工場・他(関東圏) 多数のタンクによる多品種対応 |
| 主なターゲット | レーシングチーム、チューニングショップ、旧車ファン | プロメカニック、整備工場、エンスージアスト | OEM供給先、二輪ライダー、一般ユーザー |
三和化成は「自社ブランドオイルを売りまくるぞ!」というスタンスではなく、受託製造(OEM)、受託開発(ODM)がメイン事業です。
(2輪・4輪のレーシングチームへのスポンサード、オートバイショップへの供給もおこなっています)
長年、さまざまなブランド製品を数多く手がけているだけに、蓄積された独自のノウハウがあります。
その技術を(比較的、コストなど制約条件の少ない)自社製品にフィードバックしていることは、容易に想像できます。
国内バイクメーカーの純正オイル製造元
純正オイルはなぜか、製造元を気にされる方が多いようです。
しかし重要なのは、「製造元」ではなく「依頼のスタイル」であり、もっと言えば、オイルとマシンの適合です。
| メーカー | 主なブランド | 主な製造元(SDSに基づく) |
| HONDA | ウルトラ G1, G2, etc. | 出光興産、ENEOS |
| YAMAHA | YAMALUBE | シェル ルブリカンツ ジャパン、ENEOS |
| SUZUKI | ECSTAR | 出光興産、シェル ルブリカンツ ジャパン、ENEOS |
| Kawasaki | Vert 冴速 | トタル(Elf)、シェル ルブリカンツ ジャパン等 |
純正オイルは基本的に、「圧倒的な数の製品を、安定供給させる」ため、必然的に石油元売り会社が製造することになる。
メーカー各社でスタンスは異なるが、たんなる「発注者」と「製造者」ではなく共同開発と言っていい関係性。
有名ブランドに上乗せされるコスト
一般的に広告宣伝費は、製品価格に上乗せされます。
有名 = 知名度を上げるために営業コスト、広告宣伝費がかかっている
といえます。
人間の購買心理として、
「知っているブランドと、知らないブランドでは、知っているブランド製品を選択する」
という科学的事実があります。
すでに有名なブランドや、有名企業が繰り返し、莫大な費用をかけて広告を出したり、CMを流すのはこのためです。
三和化成工業の偉い方に聞いた話では、有名ブランドとは逆のことをされています。
事業としてOEM・ODMがメインなので、ベリティオイルを広告宣伝していないそうです。
広告宣伝にお金をかけないため、原価をおさえて、製品にコストをかけられる
といえます。
言い換えると、同じ価格帯の製品と比較して、クオリティの高い製品をつくることができるわけです。
実際、各有名ブランドのハイグレードオイルと、ベリティ HR(ハイグレードオイル)を比較した場合、ベリティのほうが、リーズナブルな価格です。
国内製造だから輸入コストがかからない
海外生産したオイルを日本に輸入する場合、さまざまなコストが発生します。
- 国際輸送費
- 損害保険
- 関税
- 通関費用
- 内輸送費(港から倉庫までの配送費)
- 各種手数料や、税金
製品価格にこれらの費用が上乗せされます。
ベリティは日本で生産しているため、これらのコストが発生しません。
ベリティオイル4つの特徴
- 長年のレーシングサポートや、OEM・ODMで蓄積したノウハウをフィードバック
- フォーミュラ(レシピ設計)から製造まで一貫して国内でおこなうため輸入コストを抑えられる
- 有名ブランドのように広告宣伝費にお金をかけていない
- 同価格帯の他社オイルと比較した場合、ワンランク上のスペック(例 BIKE FS HR VER3)
なぜ、そんなに良いオイルが知られていないのか?
通常、エンジンオイルは自社でオンライン販売しているものですが、三和化成工業は社の方針として、
「自社でオンライン販売するのはNG」
その上、広告もしませんから、ベリティを知らない人が商品を手に取る機会は、バイク用品店でたまたま目にするか、友人や、知人に紹介してもらった時ぐらい。
「最強、隠れキャラ」みたいな存在です。
その結果、ベリティオイルはレース関係者や、使ったことがある人など、一部の玄人(くろうと)にしか良さが知られていない印象があります。
さきほどお伝えしたように、
知名度の高い、売れているオイルの多くが、広告宣伝(ブランドイメージづくり)にお金をかけています。
それが悪いとはいいませんが、「誇張しすぎじゃないの?」というオイルがあるのは事実です。
実際、筆者が複数回テストで使った結果「派手な宣伝のわりに全然、大したことなかった」という事が、何度もあります。
一般的な考えかた
「良い製品が売れる」
現実
「良さそうな製品が売れる」
マーケティング業界の普遍的な常識。「事実よりイメージ」の世界です。
25年以上、さまざまな業界を見てきましたが、世の常と言えます。
ちなみに「旧車用エンジンオイル」みたいなコンセプト商品が流行りだしたころ、筆者が三和化成工業の偉い方に「売れ筋の製品だから作ってみては?」と何度か申し上げたことがあります。
しかし、潤滑油のプロからすると、本質的な製品ではないことは明らか。
いまだに作る気配がありません。
ある意味、こうした職人気質な姿勢こそ、信頼できるのではないでしょうか。
エンジンのプロショップが使用
バイクのエンジンオーバーホール専門店「有限会社ガレージ湘南」では、
1,100基以上のエンジンを手がけていて、絶版車・旧車のほか、スーパースポーツ、外車にベリティオイルを使用されています。
水冷・空冷を問わず、レース・公道での使用歴は20年ほどになるそうです。
代表の日向社長は、創業期のワコーズ(WAKO’S)オイルの開発ライダーを務めていました。




日向社長は、鈴鹿8時間耐久ロードレースに15年連続で参戦。
公道レース マカオGPなど、海外や国内の耐久レースに出場。その間、国内外のさまざまなエンジンオイルを使用されたそうです。
多くの方が知っているメーカーから、マイナーなブランドまで、いろんなオイルを試した上で現在、使用しているエンジンオイルが、ベリティ「BIKE FS HR Ver3 10W-40」です。

CB750F/CB750/CB900F/CB1100R/CB1100/CBX400F/CBR400F/FTR223/CBR1000RR/CBR400R NC23/CBR250RR MC22/VTR250/VT250 SPADA/CB125T/CB1300SF/CBR650F/XR250
Z1/Z2/KZ1300/GPz1100/GPz750/GPZ900R/ゼファー750/ゼファー550/ゼファー400/Z750FX/Z550FX/Z550GP/Z1000MKⅡ/ZZ-R1100/ZX-10R/ZX-10/ZXR1200/ZXR1100/ZXR400
GSX-R1000/GSX1300R隼/GSX1100Sカタナ/GSX400Sカタナ/GSX400F/GSX400E/XJ750E/XJ400/XJR400R/WR250/FZR750/GS750E
上記のほかハーレー・ドゥカティ・トライアンフ・BMWなど(いずれも空冷を含む)
筆者が把握しているだけで、これだけの使用実績があります。
そのうちいくつかは、分解したエンジンの中を見て、状態も確認しています。
ベリティオイルを1年間テストした感想
もともと筆者は独自にオイルをテストしていて、他社オイルを使用していました。
日向社長にベリティの存在を教わったので、CB150Tでオイルを1年間テストしてみることに。

HONDA CB125T改 2001年式(142cc化・軽二輪登録済み)
空冷SOHC 2バルブ2気筒 高回転型エンジン(オイルクーラー、オイルフィルター無し)
高速を走ると、9000rpm以上の連続走行になります。
テスト方法
デイトナ製デジタル油温メーターを装着して通年、油温のモニタリング。
エンジン内に残ったオイル(他銘柄)が完全に抜けるよう複数回、オイル交換をおこなってから、テストを実施。
計測方法:コールドスタート後、油温が80℃を超えた状態から計測して、上限と下限、走行時の変化をモニタリング。
走行シーン:ストリート、峠、ツーリング、有料道路のすべて。
BIKE FS HR VER3 10W-40 MA 100%化学合成油

BIKE FS HR VER3は、ベリティ ブランドの中で最上グレードオイル。
市販オイルでありながら、実際に鈴鹿8耐で使用されているオイルです。(もちろん公道走行OK)
オイルのスペックを知らないまま、使用した感想として、エンジンのレスポンスが良く、ニューテックのZZシリーズや、NC50シリーズと甲乙付けがたい印象です。
油温を比較しても、大差ありませんでした。
以下、残っている記録を掲載します。
1月3日
横浜市
夜 晴れ
外気温 5℃
30分走行で油温 81℃
1月4日
秦野市
昼 晴れ
外気温 15℃〜13℃
停車時最高油温 90℃
走行中油温 75℃〜80℃未満
1月6日
厚木市
昼 晴れ
外気温 8℃
停車時最高油温 92℃
走行中油温 81℃
1月7日
横須賀
昼〜夜 晴れ
外気温 9℃〜4℃
瞬間最高油温 96℃
走行中油温 83℃
1月30日
厚木市
昼 晴れ
外気温 20℃
走行中油温 92〜6℃
2月3日
厚木市
昼 晴れ
外気温計 10℃
走行中油温 81~92℃
停車時最高 97℃
2月4日
熱海
昼 晴れ
外気温 10℃〜13℃
走行中油温 市街地 92℃/バイパス 83℃
2月6日
湘南
昼 晴れ
外気温 14℃
走行中油温 87℃
停車時最高 96℃
3月4日
厚木市・山梨県
15時 曇り
外気温 8℃
停車時最高油温 97℃
走行中油温 80℃台
6月30日
夜 湿度高い
外気温 25℃〜23℃
油温 80℃〜90℃前後で推移
7月7日
交換後、走行距離3500kmを超える。
夜 湿度高い
外気温 22℃〜23℃
油温 82℃〜95℃以下で推移
ベリティオイルを5年間使用したエンジン
5年間で約3万km走行したエンジンを分解しました。

筆者とおなじCB125T。オーナーさんとは知り合いです。
納車時(メーター走行距離 約2万km)からベリティ BIKE FS HR VER3を使っていて、オイル交換は3000kmごと。毎日、通勤で市街地を走行されています。

メーター走行距離52,152kmのピストンクラウン。
ほかのCB125T数台と比較しても、あるいは他の車種のエンジンと比較しても、走行距離のわりに状態の良いエンジンでした。
もちろんピストンだけでなく、シリンダーやカムなど、ほかのパーツも含めての話です。
ちなみに、筆者のようにガソリン添加剤を使用したり、カーボンクリーンはおこなわず、オイル交換のみです。
(燃調が極端に薄い、という事もありません)
ハイオクを使うとかガソリンを使うとか、燃料にフォーカスしたり、添加剤を使うより、良質なエンジンオイルを使用して、定期交換したほうが良い
少なからず、この仮説を裏付ける結果となりました。
BIKE FS HR VER3の耐久性
CB125Tボアアップ車に使用した場合
ニューテックZZ-01/02(エステル系合成油)と比較すると、BIKE FS HR VER3に軍配が上がると思います。
BIKE FS HR VER3は、ニューテック Ester Racing NC-50/NC-51と同等以上、といったところでしょうか。
BIKE FS HR VER3は4,000km走行しても、ほとんど性能低下が体感できませんでした。
5,000kmほど走行したVT250 SPADAでテスト走行
後日、BIKE FS HR VER3に交換して、夏・秋・冬・春で5,000kmほど走行したVT250 SPADA(水冷V型二気筒)に試乗しました。
完全にエンジン(油温)が暖まった状態でも、シフトフィーリングは新車のようにスムーズそのもの。
あらためて劣化しにくいオイルだと感じました。

データで解析
三和化成工業では、使用済みのエンジンオイルを回収して、解析をおこなっています。
オイルの状態を数値で見て、新油の状態からどのように変化したか、客観的に分かります。鈴鹿8耐や、全日本ロードレース出場車両のオイル解析依頼もあるそうです。
純正オイル VS ベリティ
筆者がCB150TにベリティBIKE FS HR VER3を使用し、5,000kmほど走行した後のこと。
某バイクメーカーの超有名 純正オイル(部分化学合成油)に交換しました。
※メーカー名は伏せておきます
オイル交換後、あきらかな性能低下を感じました。あまりの劣化ぶりに驚愕したほどです。
信じられますか?
通常、オイル交換したら少しは調子が良くなりますよね。まったく逆の現象が起きたわけです。
まず油温が60℃ぐらいなのに、明らかにミッションが入りにくい。すごく固いんですね、ギアチェンジでイライラするほど。エンジンのレスポンスも、もっさり感がすごい。
CB150Tでは初めての経験です。
「もしかして、エンジン終わった?」
本当に驚きました。
オイルが冷えているからではなく、油温90℃以上(適正油温の範囲)になっても同じでした。
もともと、空冷エンジンのCB150Tは、納車された夏場にオーバーヒート気味だったため、純正オイルは使用せず、さまざまなメーカーのオイルをテストしていました。
その中でニューテックや、ベリティといったオイルに出会ったわけですが、純正オイルと高性能オイルでは、ここまで圧倒的な差があるとは・・・
当たりのオイルに出会ってからずいぶんと時間が経過してたので、それまで気がつきませんでした。
いつの間にか良いオイルに慣れすぎていたのでしょうか。
BIKE FS HR VER3の高耐久性と、高性能を実感したエピソードでもありました。
その後、純正オイルから高性能オイル(100%化学合成油)に交換したのですが、あきらかに調子が良くなりました。以来、高性能オイルしか使っていないせいか、同じ症状は起こりませんでした。
「鉱物油を頻繁に交換するほうがコスパが良い」説の真実
「安い鉱物油を頻繁に(例1,000km毎)交換すればいい」
よくいわれる話ですが、事実を工学的に検証しました。
メリット:常に新しい添加剤と、せん断されていない適正粘度を維持できる点で理にかなっている。スラッジが溜まる前に排出できる。
デメリット:鉱物油は高温酸化安定性が低いため、空冷エンジンなどの高熱環境では、距離が短くても熱による劣化(酸化、蒸発)が進みやすい。また、毎回交換する手間と廃棄油の環境負荷が高い。
工学的にベストな方法:「せん断安定性(Shear Stability)の高い化学合成油を、適正サイクル(3,000km〜5,000km程度)で交換する」。これにより、高温保護と粘度維持の両立が可能となる。
いずれにせよ、オイル交換時期はバイクメーカー推奨サイクルを守ることが原則。
鉱物油を使用する場合、オイル量1L〜2Lに満たない小排気量車(とくに空冷)は、遅くても1500〜3000kmで交換したほうが無難です。「10W-30で6000km毎に交換」は、お勧めしません。
オイルへの水分混入(エンジンオイル乳化)を考えると、走行距離に関係なく、春先・夏の終わりの年2回は交換したほうがいいでしょう。

ベリティ バイク用オイル プロ目線でスペック解説
ラインナップは大きく分けて4種類あります。
※以下、エンジンオイルの「ベースオイル」で分類
- 100%化学合成油
BIKE FS HR VER3(10W-40/15W-50) - 高度水素化分解基油(エステル配合 鉱物油)
BIKE PROTECH(10W-40/10W-50) - 鉱物油
BIKE(10W-30/10W-40/15W-50) - スクーター用(高度水素化分解基油)
水冷エンジンはもちろん、空冷(油冷)エンジンや、中〜小排気量車、通勤・通学で使用するスクーターまで、用途や目的に応じて、自在に選べるようになっています。
BIKE FS HR VER3 10W-40 MA
ベリティ バイク用オイルの最上級グレード。
HR Ver3は「レーシングスペックの油膜強度を持ちながら、ツーリングユースの交換サイクルまで性能を維持できる」という点が最大の武器。
エンジンにとって世界一、過酷な鈴鹿8時間耐久ロードレースで入賞実績のあるエンジンオイル。
耐熱性、耐摩耗性、エンジン保護性能にすぐれた100%化学合成油(PAO+エステル)です。
(HRの由来はHeat Resistance 耐熱性)
さきほどご紹介したエンジンオーバーホール専門店「有限会社ガレージ湘南」では、メインオイルとして20年ほど使用実績があります。

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):85.11
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):13.47
- 粘度指数:161
- 流動点:-45以下
レスポンス重視になっています。
お勧めのマシン:歴代CBRシリーズや、水冷CBシリーズ、V4エンジン、GSX-R、ZXR、FZR、YZF、NINJA、その他、水冷ネイキッド車で問題なく使えます。
油圧タペットのCB750 RC42や、REVのCBR400F、比較的、新しい空冷のCB1100、高回転型エンジンのCB125T、CBX400F/CBX550Fなどにもお勧め。
スペックから読み解くHRの特徴
10W-40 / 15W-50に共通する話。
PAO(ポリアルファオレフィン)の役割
酸化安定性と熱安定性に優れ、長時間の高温運転でも劣化しにくい。また、動粘度(40℃ mm2/s (cSt))をほかと比較すれば分かるとおり、低温始動性にも優れる。
しかし、PAO単体での使用は「シールを収縮させる」ネガティブな要素がある。
エステルの役割
エステル分子は電気的な極性(プラスとマイナスの偏り)を持っていて、金属表面(マイナス帯電)に磁石のように吸着する性質がある。
エンジンを切ってしばらくすると、エンジンオイルはオイルパンに流れ落ちる。しかし、エステルの「吸着する」という性質によって金属吸着膜を形成し、たとえば、シリンダー壁面にオイルが残ることで、ドライスタート時(冷間時スタート)の摩耗を防いでいる。
結論
ベリティは「エステル」と「PAO」2つをブレンドすることで、PAOのシール収縮作用とエステルの膨潤作用を相殺し、シール材に対して「ニュートラル(中立)」または「微膨潤(コンディショニング)」な状態をつくっている。
1980年代〜90年代の旧車(スズキ 油冷GSX-Rシリーズやカタナ、ホンダCB-F系など)のNBR(ニトリルゴム)や、フッ素ゴムシールに対しても、安心して使用できる化学合成油となっている。
・特に耐熱性に優れ、スラッジの発生が少なくエンジン内が汚れ難い
・バイクレースの高回転高負荷による過酷なせん断力を受けて粘度低下する事を防ぐ為、敢えてエステル+PAOの設計で5Wではなく10W-40 とし、シャープなレスポンスを実現
・耐久レース等、各種レースに使用可能
・殆どの一般4サイクルバイクに使用可(MB適合車を除く)
ベリティ公式
BIKE FS HR Ver3 15W-50 MA
「化学合成油(エステル)を使いたいが、油圧が下がるのは嫌だ」
という空冷ビッグバイク乗りの矛盾した悩みを解決するオイルです。
ここが凄い:
オイルシールへ懸念は対策済み(前出「スペックから読み解くHRの特徴」で解説したとおり)
通常、化学合成油はサラサラしていますが、HRはエステルとPAOの配合により、「鉱物油のシングルグレード60番(ドロドロのオイル)」に匹敵する極圧性(油膜の厚み)を持たせています。
真夏の渋滞で油温が120℃を超えても、油圧を落とさず、熱ダレさせない設計です。
90年代以降のマシンのシール材質は対策済みですが、以下の車種に関しては「とにかく熱を持つ」ため、ポリマーを使用した、(一般的な)鉱物油では熱ダレしがちです。
BIKE FS HR Ver3 15W-50がお勧めなマシン
CB1100R(カウルで熱がこもる、伝説のレーサー)
CB750F / 900F / 1100F(※高回転まで回すならこちら)
Z1 / Z2 / ZFX / GPZ / ZGP / Z1-R / Z1000Mk.II(※フルOH済み、またはカスタム車)
ゼファーシリーズ(400 / 750 / 1100)
XJR1300 / 1200
油冷GSX-Rシリーズ / GS / カタナ
どうしても100%化学合成油に抵抗がある人、オイル漏れを気にする人は、後ほど紹介する半化学合成油(BIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-50 MA)がお勧めです。

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):118.70
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):17.25
- 粘度指数:160
- 流動点:-45以下
・特に耐熱性に優れ、スラッジの発生が少なくエンジン内が汚れ難い
・エステル+PAOが15W-50のレンジで ありながら鉱物油の#60相当の優れた 極圧性を発揮
・高粘度なので旧車の大排気量車や 4サイクルバイクにも最適
・夏場の渋滞時に厚い油膜保持がエンジンを保護
・10W-40指定車でも圧縮漏れによるパワーダウン時の改善が期待される
ベリティ公式
BIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-40 MA
高度水素化分解基油(鉱物油)にエステルを配合した合成油。
一般的に「半化学合成油」や、「半合成油」と呼ばれているグループです。
- 100%化学合成油の使用に懸念がある空冷旧車オーナーさん
- 毎日ではなく、週末にしか乗らない方
- 熱的に厳しい空冷スクーター(アドレスV125など)
- 価格をおさえつつ、高性能オイルを試してみたい!
という方にお勧めです。

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):92.97
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):14.90
- 粘度指数:170
- 流動点:-40以下
・ESTER(エステル)を配合し油性を強化
・混合潤滑環境にて金属表面に皮膜を形成し、良好な潤滑環境を保持
・GⅢ系合成油の優れた酸化安定性,熱安定性を発揮しロングライフに使用可
・せん断安定性に優れエンジンの高回転による粘度低下を防ぐ
・原付から大型まで幅広い車種に使用可能
・レスポンスの良さはオフロード車にも対応(MB車除く)
ベリティ公式
BIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-50 MA
基本性能はBIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-40 MAと同じ。
極圧性能(耐摩擦性能)を高めたグレードです。

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):105.30
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):16.99
- 粘度指数:176
- 流動点:-40以下
・ESTER(エステル)を配合し油性を強化
・混合潤滑環境にて金属表面に皮膜を形成し、良好な潤滑環境を保持
・夏場の渋滞でも高粘度油膜が優れた極圧性,摩耗防止性を発揮しエンジン内を保護
・GⅢ系合成油の優れた酸化安定性,熱安定性を発揮しロングライフに使用可
・せん断安定性に優れエンジンの高回転による粘度低下を防ぐ
・中型から大型、輸入車、旧車の高粘度指定車に使用可能
・レスポンスの良さはオフロード車にも対応(MB車除く)
ベリティ公式
BIKE 10W-30 MA
ベリティ「BIKE」シリーズは、国産メーカーの純正指定オイル相当の品質を、より安価に提供するコスパに優れたオイルです。
鉱物油(API規格 グループⅡ)
余談ですが、パッケージに「スクーター対応」とあるため、よくスクーター用と勘違いされるそうです。
低粘度の省燃費性マルチタイプオイル。

・冬場でも始動性が良く通年使用可能
・低粘度なので省燃費性に優れ、新型4サイクルバイクの殆どに使用出来ます (MB適合車を除く)
ベリティ公式
BIKE 10W-40 MA
スーパーカブなどの実用車や、水冷の中型車向け。
エンジン寿命を重視する場合、上級グレード「BIKE PROTECH SYN+ESTER 10W-40」(高度水素化分解基油+エステル)か、「BIKE FS HR VER3」(100%化学合成油)を推奨します。
BIKE 10W-40 MAがお勧めな人
・通勤または移動距離が短く(片道5km未満)、油温が上がりきる前に目的地に着く人
・オイル交換を頻繁に(1,000km〜1,500kmごと)できる人
・コストを最優先したい人
鉱物油オイル自体の特徴
注意点として、長距離走行や夏場の連続走行では熱ダレを感じる可能性が高いです。また、ポリマーのせん断劣化により、オイル交換直前にはメカノイズが増大する可能性があります。

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):83.10
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):13.30
- 粘度指数:162
- 流動点:-27以下
・優れた低温始動性
・標準的な粘度は殆どの4サイクルバイクに使用出来ます(MB適合車を除く)
ベリティ公式
BIKE 15W-50 MA
新たにリリースされた新商品。
オーバーホールしていない空冷エンジンで、オイルシールの攻撃性が気になるバイクに対して、「化学合成油は怖い」というユーザーのためのオイルです。
粘度低下(熱だれ)を防ぐだけではなく、厚い油膜でピストンクリアランスを埋め、「圧縮漏れ」や「メカノイズ」を物理的に封じ込めることに特化しています。
コルクや紙パッキンのガスケット使用車に対し、鉱物油は攻撃性が低く、漏れにくいです。
消音効果:Z系やCB系の「ガチャガチャ音(タペット音、プライマリーチェーン音)」を、鉱物油特有の粘り気で静かにします。
BIKE 15W-50 MAがお勧めなマシン
CB750FOUR (K0~K7/F1/F2)
CB400FOUR/CB350FOUR
Z1 / Z2 / ZFX / GPZ / ZGP / Z1-R / Z1000Mk.II(※当時物エンジンの場合)
スズキ GS系エンジン(GS400, GS750等)
XJ750E(※シールの経年劣化を考慮)

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):122.40
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):17.15
- 粘度指数:153
- 流動点:-27以下
4T SCOOTER SYN 5W-40 MA
高度水素化分解基油(鉱物油)をベースとし、通年使用可能なスクーター(MA規格)専用オイル。
スピードを出す人や、エンジンを長持ちさせたい方はこちらがお勧めです。

- 動粘度(40℃ mm2/s (cSt)):79.92
- 動粘度(100℃ mm2/s (cSt)):13.61
- 粘度指数:175
- 流動点:-45以下
・4Tスクーター専用 FM剤(摩擦調整剤)を厳選した専用油
・特に優れた低温始動性 5Wなので寒冷地でもエンジン始動が簡単
・GⅢ系合成油なので優れた酸化安定性,熱安定性を発揮しロングライフ使用可(MB指定車除く)
ベリティ公式
オイル交換の便利グッズ
廃油処理の注意点
本記事の読者さんの中にはいないと思いますが、もし、廃油を下水や、自宅の排水溝に流すと、不法投棄になります。(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)
廃油はお住まいの地域で定められた方法で処分するようにしてください。
樹脂製のメスシリンダー。フタが付いているので便利です。
オイルフィルターの交換も忘れずに。
ほかにも、修理の現場でよくある失敗事例や、バイクを長持ちさせる記事を書いています。










