MICHELIN CITY PRO(シティプロ)の後継モデル CITY EXTRA(シティー エクストラ)をレポートします。
おそらく、ほとんどの読者さんはカブシリーズに乗られている方だと思います。
今回、CITY EXTRAを装着したマシンは、カブの車体に2ストロークエンジンを載せたバイクです。
車両重量は(オイルや燃料を含むと)スーパーカブ110とおなじぐらいか、少し重め。
エンジンは22.5馬力とパワーがあるぶん、タイヤにも負担がかかります。
さらに(偶然にも)豪雨の峠道を2時間、小雨のなかを1時間、という劣悪な環境でテスト走行しました。
それも通常、誰もやらないようなハイペースでの走行です。
「のんびり走ったところで、大して参考にならないでしょう?」
とても写真を撮影している余裕はないので、イメージ画像ですが、本当にこんな感じでした。
峠道はほとんど川みたいな状態だし、平地は水の中を走行している状態。全身ずぶ濡れになるし、寒いし、靴の中は水がたまって重い(笑)
・・・過酷な環境でしたが、良いテストになったと思います。
テスト条件
本題に入る前に、前提条件によって評価が変わるため、バイクの状態や、走行方法など、テスト条件をお伝えします。
バイクについて
フロントタイヤをDUNLOP TT900GPからCITY EXTRAに交換。
TT900GPはレース用(レース用ハイグリップタイヤ。公道走行可)なので、いわゆる「美味しいところ」は8,000kmぐらいまでの印象。
それ以降は、グリップ感があまり感じられなくなってきます。
と言いつつ、20,151km使用しました。
チューブも古くなっていたので、タイヤと同時に交換しました。
見た目の印象は「ちょっとヒゲ、多くない?」という感じ。
リアタイヤは、2万km超えのミシュラン パイロットストリート。写真より摩耗が進んだ状態。
ハイグリップのTT900GPと比較すると、耐久性を重視した実用タイヤなので若干、余裕があります。
そのほか、リアサスは1年前に交換、今回のタイヤ交換と同時にフロントフォークのオーバーホールをおこなっています。
整備不良の状態だと、テストになりませんからね。
で、「いよいよテスト走行だ」と遠方の山奥へ行ったら、豪雨の中を走る羽目になったわけです。
走行について
あっという間にずぶ濡れになって、妙なスイッチが入ってしまい、結構なペースで走りました。
「気力体力の残っているうちに距離を稼いでおこう(家に近づいておこう)」
という思惑もありました。
雨の中はペースダウンして走るのがセオリーですが、どうせなら徹底的にCITY EXTRAを試すことにしました。
(いつもですが、峠道はすべてフロントブレーキのみで走行)
雨の中をゆっくり走行しても、大したテストになりませんが、「豪雨」「ハイペース」での走行となると、タイヤにとっては悪条件もいいところ。
ライダーとして走るぶんには勘弁してほしいところですが、テスト走行には好条件です。
豪雨のブレーキングテスト
土砂や木が散乱している豪雨の峠では、落下物を避けつつ、川状態の中を強めにブレーキング。
バイクが立った状態だと、思ったより、しっかりタイヤがグリップしてくれました。通常、タイヤ交換直後は、表面に残っているシリコンがあるため、滑りやすくなっています。
次に、水たまり(というかほぼ、池)の中でもブレーキングを試しましたが、想像以上に止まりました。
2023年3月に発売されたCITY EXTRA。発売が新しいという事は「最新技術で設計されている」という事です。
ご存じかもしれませんが、CITY EXTRAの特徴に「ウエットコンディションによる高いグリップ性能、ハンドリング性能」が謳(うた)われています。
前モデルCITY PROと比較して、ウェットグリップ性能が24%向上しているそうです。
CITY PROは履いたことがないのでわからないですが、CITY EXTRAは雨(というかほとんど水の中)の走行で、けっこうなペースで走っても、グリップしてくれるのは事実でした。
凹凸の激しい路面も走りましたが、とくに気になる挙動もないですし、たとえ豪雨の中でも、常識的なペースで走るぶんには、まったく問題のないタイヤだと思います。
もちろん、橋の継ぎ目など、鉄板の上を通過する場合は滑ります。(おそらくどのタイヤでも)
鉄板やマンホールを通過する場合は、車体を起こした状態(バイクが立った状態)で通過するなど、タイヤ性能を過信しすぎないことが大事だと思います。
「どんな豪雨でも、ダート(未舗装路)を走行するよりはマシ」
なんて事を考えながら、雨の中を走っていました。
ドライ走行
ファーストインプレッション
まずタイヤ交換直後は、ブレーキの効きが良くなりました。
これはCITY EXTRAの性能というより、TT900GPが寿命だったからと言えます。どんなハイグリップタイヤでも、摩耗したり、古くなればグリップ性能は低下します。
タイヤのグリップ性能が低下すると、ブレーキの制動力も長くなる。直進安定性も落ちるし、悪路でハンドルもとられやすくなります。
その状態でタイヤ交換すれば、あらゆる面で良くなります。
・ブレーキがよく利いて制動力が短くなる
・直進安定性が向上する
・タイヤのグリップ感が良くなる
・悪路でハンドルがとられにくくなる
この点は、銘柄に関係なく、どのタイヤでも基本は同じだと思います。
例外:オンロード用からオフロードタイヤなど、極端にカテゴリーが異なるタイヤへの交換
タイヤ性能がどうのとか、インプレッションはそれ以外の要素についての話ですね。
劣化したタイヤと、新しく履いたタイヤの比較じゃなくて、ほかの新しいタイヤと比較した場合、CITY EXTRAはどうなのか?
筆者が最初に感じたのは「ふつうに走れるタイヤ」という印象です。
もともと、CITY EXTRAはサーキットを走ったり、峠を攻めたりするスポーツ用途ではなく、実用タイヤとして設計されています。
本製品は、MICHELIN CITY PROをさらに進化させ、より高い安全性と快適性を発揮し、経済性に優れたアーバンモビリティ用オンロードタイヤの新製品です。
斬新、かつ、機能的なトレッドデザインは、高い耐摩耗性、雨天時における高いグリップ性能、優れたハンドリング性能の実現を可能にしています。
また、タイヤの内部構造を改良することで、パンク等に対する耐久性の向上も図っています。これにより、日々のビジネスシーンから、ファンライディングまで、幅広い使用環境で、高い安心感と信頼を提供するユーティリティータイヤとなっています。
日本ミシュランタイヤ
グリップ性能の比較
たとえば、TT900GP(レース用 ハイグリップタイヤ)を履いた直後は、「路面に吸いつくような走り」を体感することができます。
逆にいうと、レース用なわけですから、そうじゃないと怖くて走れないですね。
峠道を走ると、少なからずハイグリップタイヤならではのフィーリングが楽しめます。
(ただしグリップ性能が高い反面、タイヤ寿命は短くなりますが)
CITY EXTRAはそこまで限界の走りを追求したタイヤではないので、特段、グリップ性能が高いという印象はありませんでした。
「じゃあ、グリップが悪いのか?」というと、そんな事はなくて、ドライでもごくふつうに走れます。
真夏の炎天下で、2時間、3時間とぶっ通しで走っていても、タイヤが滑る、ということはなかったです。
ブレーキング、倒し込み、旋回時のマシンの挙動はもちろん、直進しているときのタイヤの騒音も特別、気になりませんでした。
炎天下を4時間走ってみた
本格的にドライコンディションで走ってみました。
峠道では、ブレーキングからスッと寝かし込めて、切り返しの多いタイトコーナーも問題なし。
フロントが切れ込みやすいとか、変な癖がない印象でした。
バイク乗りにとっては「天敵」であるグルービングの上も走りました。
直線とコーナーの両方です。
グルービングが施されていない路面と比較すると少々、ハンドルに手応え(わずかに震える)がありますが、特別、路面のギャップを拾うわけではないと思います。
グルービングが施された中速コーナーでは、ややペースを上げてみましたが、難なく旋回。
じっくり走った感想は、筆者がCB125T(142cc)のフロントに履いていたスポーツ ツーリングタイヤ「パイロット アクティブ」(バイアスタイヤ)と同等のグリップ感。
パイロット アクティブは3万kmを超えても、アクセル全開でコーナーを旋回できるほどの耐久性と、持続性のあるグリップ感が両立されたタイヤでした。
※注 現在は廃番。後継モデルは「クラシックスポーツ」
CITY EXTRAは、パイロット アクティブに近いグリップ感がありました。
あくまで筆者の推測ですが、「最新設計のCITY EXTRAは、一世代前のスポーツ ツーリングタイヤに匹敵するグリップ性能があるのでは?」と感じました。
ちなみに道路のグルービングは、以下の目的があるそうです。
なだらかな坂道、横風を受ける所、緩やかなカーブに有効で、次の特長があります。
http://www.tosei-kensetsu.jp/doro.html
- 溝にくいこんだタイヤの持つ機械的作用により、コーナリング時の操縦性を安定させます。
- タイヤと路面の間の水膜の除去し、ハイドロプレーニング現象を防止します。
- 溝にくいこんだタイヤの持つ機械的作用により操縦性を確保し、横風による影響を防御します。
- 溝にくいこんだタイヤの持つ機械的作用で急ブレーキ時の直進性を向上させます。
- 凍結路面の氷膜を分断し、路面上の氷雪をすみやかに排除します。
- 排水を促進し、早く路面を乾かします。
タイヤのヒゲは何のためにある?
CITY EXTRAで一つだけ、気になった事があります。
ドライ・ウエット走行ともに、ブレーキングからの倒し込みの際、一瞬、グニュッとするタイヤのフィーリングです。
タイヤが滑るとか、そういう大げさなものではないのですが、これまで経験したことがない挙動でした。
(通常の、タイヤがグリップする感覚とは別物)
「タイヤの表面に残っているシリコンのせい?」
調べてみると、4輪のプロレースドライバーが、やはり私と同じように違和感を感じて、メカニックにタイヤのヒゲを全部、取り除いてもらってるとの情報がありました。
この話を元オフロード国際A級ライダーの方にしたら
「俺も、タイヤの側面以外、全部取ってたよ」
とおっしゃっていました。
あながち、筆者の気のせいではなかったようです。
ちなみにタイヤを製造する際、空気を抜く穴があって、それがヒゲになるそうです。もとは長さ30cmほどあるヒゲを、タイヤ性能に支障がない程度まで短くして整えるようです。
よほど無茶な乗り方をしないかぎり、転倒することはないと思いますが、もし乗ってみて気になるようなら、ヒゲをカットするのもありだと思います。
冬場での走行
ドライ走行/ウエット走行ともに、路面温度が低いからといって特別、不都合はありません。
ストリートで、通常走行するぶんには問題なしです。(ストリートユース用なので当然ですが)
リアタイヤ交換後のレビュー
前出のとおり、リアのパイロットストリートがそろそろ寿命だったので、シティエクストラに交換。
フロント(同じくシティエクストラ)交換後、3000km走行
冬場
ドライ走行
走り出して、すぐ明らかに体感したのは、コーナーでの、旋回性能の高さ。
なにしろ、パイロットストリートは(感覚的に)ずっと滑っている印象でした。わかりやすくいうと、ドライを走っていても、ウエットを走ってるようなイメージ。
だから走り出してすぐ、コーナー手前で減速、アクセルオンからの加速時に、ちゃんとリアタイヤが路面にグリップして、車体が前に進んでいる実感がありました。
比較的、コーナーリング速度を上げても、アウト側にふくらむことなく、スパッと曲がれますからね。
また夏場、路面温度が高くなってからテストしたいところですが、タイヤの慣らしを終えるまでもなく、好感触でした。
耐久性
CITY EXTRAの耐久性は今後、モニタリングしていきます。
【製品特徴】
・経済性に優れた高い耐摩耗性能
・雨天時でも安心なウェットハンドリング性能
・安心感をもたらす高い耐久性日本ミシュランタイヤ
【採用技術】
「ミシュラン・アダプティブ・デザイン」
最適化された新設計トレッドパターンが、優れた耐摩耗性を発揮します。MICHELIN CITY PROと比較して、マイレージが10%向上しています。
タイヤ寿命の平均
どの状態を「タイヤ寿命」と判断するかによって変わると思いますが、個人的には125ccクラスのオンロードタイヤ寿命は、およそ1万km〜2万kmぐらいだと実感しています。
もちろん、走行する路面状態や、ライダーの重量(貨物を含む)によっても変わりますし、ハイグリップタイヤなど特殊用途のタイヤは、もっとライフが短くなる可能性があります。
あと、初心者・ベテランライダーを問わず多いのが、タイヤの空気圧不足。
ほぼ0なんてことも、めずらしくありません。
規定値よりも空気圧が低いと、タイヤの発熱が多くなり、早く摩耗します。つまり、タイヤの寿命が短くなるわけです。
できれば週に一回、少なくとも1ヶ月に1回は、空気圧チェックをしたほうがいいです。
「このタイヤは寿命が〜」「ロードノイズが〜」
言ってる人に限って、それ以前に空気圧、全然、足りてませんけど? って事もありますからね。
筆者はふだんから、最低、月2回以上はチェックしています。
CITY EXTRAがお勧めな人、不向きな人
まず、雨の日でも乗らなければいけない方にお勧めです。
筆者は以前、通勤と仕事でカブ70に乗っていましたが、雨だろうと台風だろうと否応なく、乗らなければなりませんでした。
その点、CITY EXTRAのウエット性能は申しぶんありませんから、通学や通勤でも、初心者ライダーでも、安心して乗れるのではないかと思います。
あとは、ツーリングで使用される方。
長距離になればなるほど、急な雨に降られたときに困ります。雨の走行は、疲労のスピードも早くなりますからね。
(図らずも、筆者が身をもって体験することなったわけですが)
不向きな方は、タイヤのデザインが気に入らない、という人でしょうか。
おそらく、カブ主で「俺はハイグリップタイヤで峠を攻めるぜ!」という人は少ないと思います。どちらかといえば、そんなに飛ばさないというか、無茶な走りをしない人がほとんどだと思います。
であれば、ふだん使いの実用タイヤとして、CITY EXTRAは十分な性能があると断言できます。
個人的には、1回は試してもいいんじゃないかなーと思います。
車種別 CITY EXTRA適合サイズ
スーパーカブ50
旧カブを除いて、前後とも「60/100-17M/C 33P」が適合タイヤです。
シティエクストラの場合、以下のタイヤを2本購入して使用します。
スーパーカブ110
フロント「70/90-17M/C 38P」、リア「80/90-17M/C 50P」が適合タイヤです。
フロント
リア
クロスカブ110・CT125 ハンターカブ
前後とも「80/90-17M/C 44P」が適合タイヤです。
シティ エクストラ タイヤの向き
タイヤの側面に表示があります。バイクの進行方向に矢印が向くようにします。
写真はフロントタイヤ。リヤに使用する場合、「REAR」の矢印が進行方向(フロントと逆)になるようにします。