アイドリング不良の原因を突き止め、解決するまでのアプローチをレポート。
実際に試してみて、デメリットや注意点も紹介します。
2つのアイドリング不良
スズキ・アドレスV125G(CF46A/CF4EA)の
「アイドリング不調(エンストする、回転が安定しない)」
は、この車種における持病とも言える定番のトラブルです。
ことの発端はアイドリング不良、2つ症状がありました。

アドレスV125G(CF46A)
1つ目の症状:エンジンが完全に暖まった状態で、FIランプが点きっぱなし(点滅なし)になりました。
同時に停車時、アイドリングが上がったり、下がったりを繰り返し。
正常時を1600rpmとした場合、エンストしかけてはスロットルを開けた時のように回転数が上がる。またエンストしかけて、回転数が上がる。
FIランプが点くと、ずっとこの調子。
エンジンをOFFにして、しばらくしてエンジンをかけるとランプは消え、この症状はおさまります。
しかし、乗っているとまた同じ症状が起きます。
2つ目の症状:エンジンが完全に暖まっている状態で停車時、エンジン回転数が高くなる(真夏の昼間でも)
だいたい3000rpmぐらいでしょうか。
真冬のコールドスタートなら話は別ですが、これも明らかに異常です。
このように、2つの症状のうち、どちらかが発生していました。
なぜアイドリングが不安定になるのか?
1. スロットルボディおよびISCバルブの汚れ(最重要)
V125Gのアイドリング不調において、約7〜8割の原因がこれに該当するといわれています。
- 現象: 信号待ちでエンストする、始動直後のアイドリングが極端に低い、またはハンチング(回転が上下する)する。
- 原因: 走行距離が増えると、ブローバイガスなどに含まれるカーボン(すす)がスロットルボディ内部に堆積します。特に、アイドリング時の空気量を調整しているISC(アイドル・スピード・コントロール)バルブの通路がカーボンで詰まると、必要な空気が供給されずエンストを起こします。
- 対策: スロットルボディの洗浄が必要です。特にISCバルブを取り外し、先端のカーボンを入念に除去する必要があります。
洗浄後、空気の通りが良くなることで一時的にアイドリングが高くなりすぎることがあります。その場合、ECU(コンピューター)のリセットや、バッテリー端子を外しての学習値リセットが必要になる場合があります。
【補足】ISCバルブ? ソレノイドバルブ?
基本的に同じものだと考えて良いです。
それぞれの違いを解説すると・・
・ISC(アイドル・スピード・コントロール):
「機能(働き)」の名前です。「アイドリングの回転数を制御するシステム全体」や「その役割」を指します。
・ソレノイドバルブ(ソレノイド):
「部品(構造)」の名前です。電気を流すと磁石の力で弁(バルブ)を動かす機械的な部品そのものを指します。
ようするに、アドレスV125Gには、アイドリング調整(ISCという仕事)をするために、スロットルボディ横に「ソレノイドバルブ」という部品がくっついている、ということです。
2. 点火系統の劣化(スパークプラグ・イグニッションコイル)
基本的なメンテナンス項目ですが、単気筒エンジンゆえに影響がダイレクトに出ます。
- 原因:
- スパークプラグの摩耗: 電極が減ると火花が弱くなり、低回転時の燃焼が不安定になります。
- プラグキャップの緩み・リーク: アドレスV125は、最終型が2017年8月です。年数が経過するとプラグコードや、キャップが劣化し、雨天時にリークして不調になるケースがあります。
- スパークプラグの摩耗: 電極が減ると火花が弱くなり、低回転時の燃焼が不安定になります。
- 対策: 新品プラグ(標準:CR6HSA / CR7HSAなど)への交換。プラグキャップの導通確認。
3. 吸気系統の詰まり・二次エア
- エアクリーナーエレメントの汚れ: 汚れが酷いと吸入空気量が減り、燃調が濃くなってアイドリングが低下します。湿式フィルターの場合、ボロボロに崩れて吸い込まれていることもあります。
- インシュレーターの亀裂(二次エア): スロットルボディとエンジンを繋ぐゴム部品(インシュレーター)に亀裂が入ると、余計な空気を吸ってしまい、回転数が異常に上がったり下がったりします。
4. バルブクリアランスの狂い
走行距離が3万キロ〜5万キロを超えている場合、クリアランスの狂いも可能性としてあります。
- 原因: 長期間の走行により、吸・排気バルブの隙間(クリアランス)が狭くなってしまう(あるいは広がる)ことがあります。とくにクリアランスが詰まる(狭くなる)と、バルブが完全に閉じきらず圧縮漏れを起こし、アイドリングでエンストしやすくなります。
- 診断: 冷間時は調子が悪いが、温まるとマシになる(またはその逆)などの症状が出ることがあります。
- 対策: シックネスゲージを用いたタペット調整が必要です。

解説用に筆者が製作したイメージ図。
カムシャフトとタペットの間(黄色の線)がタペットクリアランス(バルブクリアランス)
バルブクリアランスが広すぎる:
・カチカチ音が大きくなる
・カチカチ音がうるさいだけで、エンジンはとりあえず動く
バルブクリアランスが狭すぎる:
・音が静かすぎる、音がしない
・エンジンが温まって金属が膨張すると、隙間がゼロになり、バルブが常に少し押された状態になって、完全に閉じなくなる(圧縮漏れ)
・圧縮が抜けるため、アイドリングでエンストする、再始動困難になる、パワーが出ない
5. ソレノイドバルブ(ISC)自体の故障
汚れではなく、部品としての寿命です。
対策: 部品の交換が必要です。
原因: アイドリングを調整するISCバルブ(ソレノイド)が電気的に故障し、動かなくなると、アイドリング制御ができなくなります。
ISCバルブ洗浄の落とし穴
アドレスV125は比較的、販売台数の多い車両のため、ネット情報も豊富にあります。
「アイドリング不良はスロットルボディや、ソレノイドバルブ洗浄で改善される」
という主旨の情報が大多数でした。
ただし、「アイドリング不良」が、具体的にどのような状態なのか書かれておらず、筆者のアドレスと同じ症状なのか、違うのか、分かりませんでした。
まぁ、とにかく、ダメ元で試すことにしたのですが・・・。

シートとメットインを外せば、ソレノイドバルブにアクセスできます。

スロットルボディはエアクリーナーボックスと繋がっているため、エアクリーナーボックスを取り外す必要があります。
スロットルバルブ右上の穴は、ソレノイドバルブと繋がっていて、この経路が詰まると、アイドリング不良になるそうです。しかしまぁ、汚れていますね。

ソレノイドバルブを取り外した状態。黒いものは不純物です。
パーツクリーナー(ブレーキクリーナー)では容易に落ちないため、ヤマハのインジェクションクリーナーを使いました。プロショップが使用している製品です。

取り外したソレノイドバルブ。
矢印の箇所にスプリングが入っていて、「バネが破損したり、バネが縮んで正常に作動しなくなる」というケースもあるようです。
(取り外して、じっくり見たところ分解不可のようですが)
ソレノイドバルブはプラスチック製。シールを傷める懸念があるので、パーツクリーナーで清掃しました。
洗浄後に起きた事件
元どおりに組み直して、いざ始動。
エンジンがかかると同時に、すさまじい白煙と刺激臭がたちこめます。

燃焼室に入ったクリーナーが燃えているからです。
おおげさではなく、SS500やGT750など、2スト車レベルの白煙がマフラーから出てきます。
しかも、刺激臭がします。
5分程度では白煙も臭いも収まらないため、住宅地などでやる場合、注意が必要です。
私の場合、アイドリング状態だと、近所迷惑になるのでそのまま試走。白煙が出なくなるまで走行しました。
翌朝、エンジンを始動しようと思ったら、セルは回るものの、エンジンがかかりません。
バッテリーは充電して、まだ1ヶ月経ってない。(念のため、あらためて充電しました)
もしやと思ったら案の定、スパークプラグでした。洗浄液がどこかに残っていたのでしょうか、電極が完全に濡れて、火が飛ばなかったようです。
洗浄した直後にプラグが濡れているのは、よくある事ですが、さんざん走行した翌日にこんな事が起きるとは。
プラグを洗浄すると、難なく始動。
ふたたび、テストラン。
「ますます、アイドリング不良の症状が悪化」
残念な結果となりました。
以前よりも、症状の発生頻度が格段にUP。
エンジンが冷えた状態から始動して、300メートルも走行しないうちにFIランプが点灯。かと思ったら全然、点灯しなかったり。と、思ったら点灯したり。
もはやエンジンや、外気温・湿度に関係なく、ランダムに発生するようになりました。
こうした事も想定していたので、仕方なく、ソレノイドバルブを交換することに。
ISC(ソレノイド)バルブ交換後

ソレノイドアツシ 部品コード:13420-33G02
※写真のとおりシールも付属しています
適合モデル:
アドレスV125
車体番号:UZ125K5:フレームナンバー CF46A-100001~
車体番号:UZ125K6:フレームナンバー CF46A-500001~
車体番号:UZ125K7:フレームナンバー CF46A-530065~
アドレスV125G
車体番号:UZ125GK5:フレームナンバー CF46A-100001~
車体番号:UZ125GK6:フレームナンバー CF46A-500001~
車体番号:UZ125GK7:フレームナンバー CF46A-530175~
アドレスV125Gリミテッド
車体番号:UZ125ZK7:フレームナンバー CF46A-562365~
以下のフレームナンバーは、上記と部品番号が異なるため、注意が必要です。
車体番号:UZ125K9:フレームナンバー CF4EA-124837~
車体番号:UZ125GK9:フレームナンバー CF4EA-101607~
車体番号:UZ125ZK9:フレームナンバー CF4EA-100047~
ソレノイドアツシ 部品コード:13420-16HA1(旧品番 13420-16HA0)
筆者のアドレスは車体番号:UZ125GK7:フレームナンバー CF46A-530175~なので、部品代は約1万円。
年式の新しい「K9」「GK9」「ZK9」は若干、それより安いようです。
取り外したソレノイドバルブと、新品を比較しました。
ネット上で「バネが破損したり、バネが縮むと正常に作動しなくなる」という箇所は、新品とほぼ、変わらずでした。
バイクショップオーナーいわく、「古いバイクだし、何らかの理由で抵抗値が変わったのでは」とのこと。
とにかくソレノイドバルブを交換して、「今度こそは」と思ってテストラン。
またもや、症状再発!
嘘でしょ、さすがにガックリきました。
しかし「インジェクション車でエラーが発生したら、ECUのリセットが必要」と知って、バッテリー端子を外し、(忙しさもあって)2日後にバッテリー装着。
(アドレスv125は、バッテリー端子を外すとECUがリセットされるそうです)

3度目の正直
200kmほど走りましたがその後、(今のところ)交換前の症状は2つとも発生しなくなりました。
もう一つ付け加えて、
エンジンが暖まっている状態でも、不意にエンジンがかかりにくい(セルは正常に回る)ことがありましたが、それも解消されました。
症状が出ないことを確認後、elf インジェクター クリーナーを投入しました。
用法:ガソリン30~50Lに対して1本
用途:ガソリンエンジン専用
容量:250ml(cc)
ガソリン1Lに対して、5ml 〜 8.3ml 使用します。
その後、さらにアイドリング・アクセレーションが安定しました。
スロットルボディや、ソレノイドバルブだけでなく、フューエルライン(燃料経路)自体が詰まっていたのでしょうか。
分解しやすさで言うと、やっぱりキャブ車のほうがいいような気も。何にせよ、直ってよかったです。
アドレスV125は、ほかの車種と比較して、細々したトラブルが起きやすいそうです。
無理そうならあきらめてスクーターを得意とするショップさんに依頼するか、もし買い換えるなら台湾シグナスを選ぶのも手です。
スロットルボディ洗浄の注意点
最後に補足しておきます。
「スロットルバルブを開いて(アクセル全開の状態)、クリーナーで洗浄する」
といった主旨のネット情報が散見されます。
この場合の注意点として、(筆者が経験したように)燃焼室にクリーナーが入り、プラグの電極が濡れて始動不良になることがあります。
もうひとつ、
プラグを取り外して、プラグホールからエンジン内にクリーナーを入れる場合(意図せず、クリーナーが燃焼室に入った場合も同じ)、エンジン始動前にプラグを外した状態でセルを回す(またキックする)ようにしましょう。
燃焼室内に入ったクリーナーをプラグホールから外に出すためです。
(勢いよくプラグホールからクリーナーが飛び出てくるので注意)
それからプラグを装着して、エンジンを始動します。
燃焼室に大量のクリーナーが残ったまま、プラグを装着してエンジンを始動すると、プラグが濡れるだけではなく、クランクシャフトを損傷する恐れがあります。
(クリーナーが入った分、燃焼室の容積がせまくなる=圧縮比が高くなる)
付け加えると、
経験上、燃焼室に直接クリーナーを入れるエンジン洗浄はお勧めしませんが、どうしても試したい場合は上記に注意したほうがいいでしょう。








