CB125T(JC06 最終モデル)で6年間、63,000km超の走行テストをおこないました。
春夏秋冬、晴天や豪雨での走行など、様々なシチュエーションをテストした上での結果をシェアします。
あくまで参考データとしてご活用下さい。実際は年式による仕様の違いや、マシンの状態による個体差によってセッティングは微妙に変わります。
あくまで参考データとしてご活用下さい。実際は年式による仕様の違いや、マシンの状態による個体差によってセッティングは変わります。セッティングをおこなうに当たっては安全に配慮しつつ、自己責任でおこなってください。
アイドリングが不安定といったキャブの不調についてはこちらの記事を参照ください。

CB125Tのキャブレター3種類と違い
年式によって3種類のキャブレターが存在します。(教習車・海外モデルは資料が無いため不明)
年式はこちらで確認ください。

型式
F型 ノーマルメインジェット#98
J・M・P・W型 ノーマルメインジェット#88
1(最終型) ノーマルメインジェット#95
F型のみ強制開閉式キャブレター(2サイクルのバイクは全てこの方式)が採用されている。
CB125Tキャブレター セッティングパーツ
JC06モデルについては、(筆者の知るかぎり)専用セッティングパーツは販売されていない。
京浜(ケイヒン)製のジェット類を購入し、自分でセッティングすることになる。
ちなみにメインジェットは、京浜製キャブレターなので、京浜製のメインジェットを使用する。(ミクニ製を使用することはできない)
メインジェットはネットショップの他、大きめのバイクパーツショップで購入することができる。
何番が最適かは判断がむずかしいところ。バイクショップでは、いくつものメインジェットをそろえていて、試しながらセッティングを詰めていく。
少なくとも2、3種類は用意しておいた方がいいだろう。
メインジェットはポッシュや、キタコなどが販売している。さまざまな形状があるため、適合するパーツを選ぶようにしよう。CB125Tの場合、「丸型の大」が適合する。
強制開閉式キャブレターのメリット・デメリット
スロットル操作によってダイレクトにエンジンの回転数が上がる特性が楽しくもある反面、慣れないうちはスロットルコントロールが難しかったり、スロットルOFF状態から加速する際、一時的に息継ぎしたり、負圧式キャブと比較して、燃費が悪くなるといったデメリットがある。
なお、一時的な息継ぎ状態を解消すべく誕生したのがFCRキャブ。

スロットルOFFの状態から、スロットルONと同時にドンッ!と加速する楽しさがある。
しかしレース用に設計されたキャブレターなので、とても高価。また構造上の理由からキャブ本体が摩耗する(場合によっては寿命が短くなる)といったデメリットもある。
(レースなど、メリハリのあるスロットルワークを前提とした構造のため、街乗りで一定の回転数で走行する場合、その部分だけが偏摩耗する)
以上の理由から中古のFCRキャブには手を出さない方がいい。
CB125Tは、J以降のモデルからCVキャブ(負圧式)に変更されている。
純正キャブレターも使用するうちに摩耗します。ただ、ファンネルやパワーフィルターを装着したFCRキャブの場合、ホコリやゴミなどがキャブの内部パーツを傷つけることもあって、摩耗が早いと言われています。
負圧式キャブレターのメリット・デメリット
負圧式キャブは、強制開閉式キャブのようなスロットル操作に機敏に反応するダイレクト感はないものの、マイルドな特製によりスロットルが開けやすく扱いやすい事、比較的、燃費が良いという特徴がある。
CB125Tのジェットニードルは、J〜Wと比較して最終型の1は太くなっている(混合気が薄くなる)

ジェットニードル形状のちがい
左:J〜W純正
真ん中:最終型用 ケンソー社 バクダンキット特注品
右:最終型1純正
ジェットニードルの形状が型式によって違うため、ジェット類のセッティングが異なる点に注意してください。形状が異なる年式のニードルを安易に使うと、セッティング沼にハマります。
最終型は他のモデルと大きく異なる
最終型は2001年排ガス規制対応のためブローバイガス還元装置が付いている。
そのためキャブセッティングがかなり薄めに設定されている。
実際、筆者の最終型CB125Tは真夏にもかかわらず、中古で購入した時のままの状態で走行すると、8,000rpmほどで頭打ちしていた。
CB125Tに限らず、この時期のほかのバイクは走行フィーリングを犠牲にして排ガス規制をクリアしているため、基本的に薄めにセッティングされている。
※CB125T海外モデルにもブローバイガス還元装置が付いている。国内向けとの違いは詳しい資料がないため不明
事例:教習車仕様のキャブ換装
型式:CB125T W(教習車仕様)
車体番号:JC06-1500001~
・パイロットジェット(スロージェット) ノーマル#35
・メインジェット ノーマル#88
CB125T 1のキャブレターに換装する場合、Wのジェットニードルを使用し、メインジェットを#88を使用する。(メインジェットを変更する場合は#88を基準にする)スロージェットはWも1も同じ番手のため、変更しなくていい。
筆者の知人のCBTだが、計算どおりうまくいった。
キャブセッティングの前に大事なこと
不調なマシンで正確なセッティングは出ない。
エンジンの圧縮不良、キャブレターやエアクリーナーの目詰まり、マフラーの交換や加工、ガソリンの劣化、点火系統に異常が無い(プラグに強い火花が飛んでいる)、エンジンに大きなダメージがないこと。
もし不調があったり、上記に該当する可能性があれば先にチェックしておく。
セッティングが困難になります。

ちなみにセッティング中はイリジウムではなく、標準プラグを使用した方が焼け具合が判断しやすいです。
データサンプル

CB125T 1(2001年〜2003年最終型)
・ジェットニードル ノーマル
・パイロットジェット(スロージェット) ノーマル#35
・使用プラグ:秋冬8番/春夏7番
セッティングの目的
低中速域のかぶりをどうにかしたい(加速時、アクセル開度3/4)
以下#はメインジェットの番数
ノーマル時(最終型)
MJ #95 真夏でも薄すぎる。
症状:
排ガス規制に対応させているため8000rpmほどで頭打ちする
MJ #102〜まで濃くすると走りが激変する。
注:筆者は特注品のJNに、MJが#102だったので、それより濃くする必要があると思われます
この後142ccにボアアップしたため、ノーマル時のセッティングデータは以上です。
142cc中華ボアアップ後
ボアアップする際、ノーマルの燃料コックではガソリン流入量が不足したため、燃料コックを加工しました。
MJ #118 若干薄め
備考:
神奈川県 春・夏・秋・冬オールシーズン
晴れ、雨、曇り
142cc中華ボアアップ+K&Nパワーフィルター装着
低中速域がかぶるため2018年、NGKパワーケーブルに交換。
※筆者のCBTは右シリンダーが若干、濃い傾向にあります
右シリンダー MJ #122
※20℃〜23℃
ノーマルプラグ8番だとわずかに濃い
ノーマルプラグ7番だとわずかに薄い
※27℃前後 湿度67%
ノーマルプラグ7番で濃い
左シリンダー MJ #125
※20℃〜23℃
イリジウムプラグ8番
※27℃前後 湿度67%
イリジウムプラグ7番
同8番だと濃い
備考:
2018年1月〜6月3日現在
気温10℃以下〜27℃
市街地、ツーリング、雨天走行
走行距離5,000km以上
装着したパワーフィルター
今回、使用しているのはK&N製ですが、メーカーによって様々なタイプのパワーフィルターがあります。
形状によって取り付けの可否や、空気の流入量が異なります。
CB125Tはパワーフィルター装着時にフレームが干渉しやすいため、寸法に注意してください。
セッティングもそれぞれ異なります。(プラス10番以上、濃くしなければならないパワーフィルターも存在すれば、ノーマルより空気抵抗が増え、薄くしないといけないフィルターも存在します)
一般的にパワーフィルターを装着した場合、純正フィルターより多くの空気を吸うと思われがちですが、実際は空気抵抗が増えるパワーフィルターや、純正とほとんど変わらないパワーフィルターも存在します。
点火系統の不良による落とし穴
2019年6月、パワーフィルターを新調しました。
パワーフィルター 短筒タイプB3
KN企画 商品番号:PF1000-B3
右シリンダー MJ#122→120交換
左シリンダ MJ#128→125交換
左右とも標準プラグ7番
K&N社のパワーフィルターとの違いは、あまり変わらないです。
上記のセッティング変更は、製品の差というより、マシンの状態が変わった影響が大きいでしょう。筆者のCBTはプラグの火花があきらかに弱くなってきているので、点火系統に問題があるのだと思います。
プラグコード交換により一時的に良くなりましたが6ヶ月後、また元通りに。。。

以前使用していたK&N社のパワーフィルター(右シリンダー側)は、赤丸の部分がきちんとつながらず、しばらくの間、ほぼ直キャブ状態で走行していました。
直キャブ状態にもかかわらず、プラグの焼け具合を確認すると、低中速域は相変わらず真っ黒。プラグを新品に交換しても、状況は変わらず。

棒線の部分が低中速、○の部分が高速域です。スロージェットは最薄の#35。
逆に高速域(スロットル全開領域)は、薄すぎて頭打ちになります。高速を改善しようとすると、低中速が濃くなりすぎてしまうのです。
調べてみると、ここまで落差が激しいのはキャブセッティングではなく、点火系統のトラブルが濃厚。RZなど、ほかの旧車でも似たような現象があるらしく、ハーネスを引き直すと、以前より良くなったという事例がありました。
ガレージ湘南に入庫してくるバイクも、20年から40年近くたった車両は点火系(イグニッションコイルなど)の劣化によりプラグの火が弱いケースが多々あります。
4気筒ならそのままでも乗れますが、小排気量の2気筒で、超がつくほどキャブセッティングがシビアなCB125Tでは、その影響が顕著にあらわれるようです。
点火系の不具合に起因するトラブルの場合、ASウオタニSPを装着すると、始動性やくすぶりの問題が解消されます。(1980年代の旧車、複数台でテスト済み)
CB125T最終型以前のセッティング方法
F
ノーマルメインジェット#98
J・M・P・W
ノーマルメインジェット#88
例:
J〜WのCBTを142ccにボアアップ(ノーマルエアクリーナー)した場合ノーマルメインジェットからプラス16〜23番手ぐらい。
#111はラインナップ無し
おおよそ、この範囲で調整する事になると思われます。
F型と、J・M・P・W型それぞれの標準キャブセッティングが薄い・濃いどの程度か不明ですが
薄い場合・・・濃くする(上限か、上限寄りにする)
濃い場合・・・薄くする(下限寄り、または下限にする)
という流れになります。
ボアアップしないでパワーフィルターを装着する場合、ノーマルメインジェットから2~4番手ぐらい上げると良いでしょう。(K&Nパワーフィルターの場合)
最初は、必ず濃すぎるぐらいからはじめて、だんだんメインジェットを下げるようにしてください。(薄すぎるとエンジンが焼き付きます)
本記事を踏まえてセッティングすれば、キャブセッティング沼にハマることは少ないと思います。
目安として参考にしてください。
キャブセッティングの基本
「セッティングに正解はない」
最終的に自分が走りやすければ良いセッティングと言えます。
薄め、濃いめ・・・
人によって好みが異なるため、最後は自分次第になります。マシンの個体差もありますし、住んでいる地域、走行するシーン、乗り方が人によって違うからです。
あるレベルまでは経験者のアドバイスが頼りになりますが、大事なのは自分にとって乗りやすいかどうか。スロットルの開け閉めがしやすいか? スロットル全閉から全開までスムーズに加速するか?
自分の走り方にマッチしているかどうかが、判断のポイントになると思います。
細部を詰めようと思ったら、自分で走行しながら丁度いいところを探っていくしかありません。
これがキャブレター車のおもしろいところであり、むずかしいところでもあります。
プロは何を基準にしてるのか?
エンデューロレーサー 石井正美氏のメカニックを担当していた方いわく、「(アクセルを早く開けたり、トルクを稼ぐ目的で)濃い目を好む人もいるし、薄めがいいという人もいる。結局は乗り手の好みに合わせる」のだとか。
「コンディションは常に変化する」
季節や気候によって、キャブのセッティングは常に変化します。
たとえ完璧にセッティングしたとしても365日、24時間ずっと同じ状態で走る事はできません。
ノーマルなら、季節ごとにキャブセッティングが必要、とはいかないまでも、アクセルを開けた時のフィーリングはその時々で変わるという事です。
「ずっと同じ状態で走りたい!」
そういう方は最新モデルのインジェクション車しか選択肢が無くなります。
気温によって変化がある、変化を楽しめるのがキャブレター車の魅力ですね。
キャブレターの性質を把握する
冬場:混合気は薄くなる→濃くする
夏場:混合気は濃くなる→薄くする
標高が高い:混合気は濃くなる→薄くする
標高が低い:混合気は薄くなる→濃くする
雨天(湿度が高い):混合気は濃くなる→薄くする
季節や天候による変化を考慮した上でセッティングする必要があります。
例:
真冬にやや濃いめのセッティング→夏場、濃すぎる
・・・上記以外にも、
アクセル開度によってさまざまな症状があったり、調整する箇所があったりします。
燃料の違いによる変化
ちなみにハイオクとレギュラー、ガソリンによっても変わります。
ハイオクにすると濃くなる(かぶる)傾向にあります。ハイオクを使用してセッティングを合わせた場合、レギュラーで走行すると、薄くなることがあります。
ガソリン添加剤のフューエルワンを入れた場合も、濃くなる傾向がありました。
キャブセッティング5つのステップ
ステップ1:問題点、不満な点を洗い出す
例:
どういうシチュエーションで、どんな風に走っている時、何速、何回転でどういう症状が起きているか?
その時、スロットル開度はどのくらいか?
※キャブセッティングは回転数ではなく、スロットル開度で判断します
ステップ2:目的を決める
問題点がわかった上で、それをどうしたいのか、どういう状態になれば満足なのか?を決めましょう。
ここが曖昧だと沼にハマります。
ステップ3:キャブ以外の要因をチェックする
最初にもお伝えしましたが、
「キャブの問題と思っていたら全然、ちがう場所に真の問題が隠れていた」
よくある話です。
キャブレターをいじる前に、ほかに原因が無いかどうかチェックしましょう。
とくに生産から10年から15年以上経過している車両はエンジンの圧縮が低かったり、プラグコードを筆頭に点火系統が劣化している事が多々あります。
火花が弱ければ当然、濃くなります。
わざわざキャブレターでセッティングするより、プラグコードを交換したほうがてっとり早いです。
しばらく動かしてないバイクの場合、キャブ(とくにジェット類の詰まり)清掃を最初におこないましょう。
とくにスロージェットは穴が小さいため、クリーナーで洗浄しただけでは詰まったままの状態になっている事がよくあります。
この作業を怠ってしまうと、再度キャブレターを取り外して、分解しないといけなくなります。
また、劣化したガソリンを使わず、新しいガソリンを使用することも大事です。
修理や整備に持ち込まれるバイクを数十台みていると、キャブクリーナーを吹いただけで「キャブ清掃した」と思っているライダーがあまりにも多い。
実際、キャブレターを分解してみると、高確率でジェット類が詰まっていたりする。
ステップ4:キャブセッティング
キャブ以外に考えられなければ調整します。
CB125Tの場合、スロージェットやジェットニードルを変える事はほぼ、無いと思います。
(なにしろパーツが無い)
メインジェットを変えるだけなのである意味、セッティングは容易です。逆にTMRやFCRなど、セッティング範囲が広くなるほど、むずかしくなります。
ちなみに、左右のシリンダーを同じメインジェットの番数にする必要はありません。
肝心なのは、シリンダーが必要とする混合気を送ってやることです。
「2気筒だから2つとも同じ、4気筒だから4つ同じにしなければならない」というわけではないです。現に筆者のCBTも左右でメインジェットの番数が異なっています。
とくに四気筒エンジンの場合、中心にある2・3のシリンダーと、外側にある1・4のシリンダーでは、セッティングが異なるのは当然です。
メインジェットを交換したら、
1、実走行
2、プラグの焼け具合をチェックする(イリジウムではなく標準プラグがお勧め)
これを繰り返しながら判断します。
マスキングテープなどを使うと判断しやすいです。


一番上の目盛から順にアクセル開度全閉、1/4、2/4、3/4、4/4(全開)です。
メインジェットが影響するのは2/4~4/4の範囲になります。
ステップ5:いざ試走!
できれば、車や歩行者などが少ない場所を選びましょう。
もし、近くにそういった場所がない場合、見通しが良く、知っている場所を選びましょう。(見知らぬ峠に行って、テスト走行するのは非常にリスキーです)
周囲の交通状況に注意しながら、いつもどおりに走行してみましょう。
すると、どういう時にどれだけアクセルを開けて走っているか理解できるはずです。
調子の悪いアクセル開度に合わせて適切な個所を、薄くしたり濃くしたりします。
(負圧式キャブの場合、タイムラグを考慮してください)
セッティングは気温や天候によって変化します。日記みたいにデータをメモしておくといいです。
正解を探すというより、変化を楽しみながら自分好みのセッティングポイントを探る事がキャブレターの面白みだと思います。
大事なのは、いつも走行する道をいつも通りに走って、心地よく走れるかどうか。アクセルを開けた時のエンジンのレスポンスで判断します。
フィーリングだけだと、濃いか薄いか判断しにくいので、プラグを目安にするという程度です。実務上、プラグの焼けだけを見て、セッティングを詰めようとすると沼にハマるのでご注意を。


