キャブ車の空冷バイクに、油温計を装着して6万kmほど走行した体験レポートです。
本記事で得られること
・油温計を装着するメリットとデメリット
・油温計の種類とえらび方
・筆者が使用した油温計
・隠れた活用方法
なぜ、油温計を装着するのか?
筆者の場合、油温計をつけて感じた最大のメリットは、エンジンオイルの油温管理です。
油温を把握し、適切に乗ることがエンジンを長持ちさせることにつながります。もともと筆者のバイク、CB125Tはオーバーヒート気味で苦慮していました。
■空冷4サイクルOHC2バルブ2気筒 124cc 最高出力15PS/11,000rpm 最大トルク1.0kg-m/8,000rpm 変速機5段リターン ■燃料タンク14L ■ブレーキF:ディスク R:ドラム式 ■車両重量139kg ■シート高770mm
走り方を工夫したり、さまざまなエンジンオイルをテストして、ひとまずオーバーヒート問題は解消。
その後、142ccにボアアップして軽二輪登録。
高速道路が走れるようになり、長距離ツーリング(高速では常時8000rpm〜で走行)するようになりました。
そこで万一のことを考えて、装着することにしました。
まぁ、9割以上は一般道を走るのですが、その場合にも
どんな時に油温は上昇しているのか?
どのように走れば油温が下がるのか?
オイル粘度はどれぐらいにすればいいのか?
通常なら目に見えないことが、メーターのおかげで可視化できるようになりした。
すると、渋滞で油温が危険ゾーンに入る前に停車するなど、オーバーヒートを回避する事ができるわけです。
なかには「油温計を付けると、油温上昇が気になって仕方がなくなる」という意見もありましたが、実際のところ、「大丈夫かなぁ」と、不安な状態で走っているほうが、よっぽど運転を楽しめないと思います。
それに全く気にしなかったらしなかったで、エンジンをオーバーヒートさせてしまったり、エンジンが終わったりすることは、よくある話です。
ちなみにオーバーヒートすると、熱によってエンジンに歪み(ひずみ)が発生する事があります。
ごらんのとおり、エンジンはいくつもの部品が連結されています。
エンジンが歪んだ場合、たとえばシリンダーヘッドとシリンダーのすき間からオイルが漏れてきたりします。
かならずしも、「オーバーヒート→エンジンが歪む→オイルが漏れる→即修理」というわけではありませんが、そのままほったらかしにして乗り続けていると、修理に莫大な費用が必要になることがあります。
エンジンのオーバーホールですね。
ただし、そもそも部品が手に入らないとオーバーホールできないため事実上、修理不可能という事になります。
昨今の部品事情は、こちらのコラムを読んでいただくと、状況が理解できるかと思います。
いずれにしても、油温に合わせたエンジンの適切な扱い方をマスターしたほうが、エンジンを長持ちさせることにつながるのは間違いないと実感しています。
そう考えると、距離を走る方や、ツーリングをされる方、エンジンを改造している場合、油温計は必須アイテムといえるかもしれません。
オイル粘度を変えたり、銘柄を変える際にも指標になりますからね。
逆に、油温計を装着するデメリットを考えると
・お金がかかる
・バッテリーの電力を消費しやすくなる
・車種によっては取り付け位置が困難
強いて言うなら、こんなところでしょうか。
とくに、後付けでETCやUSB電源などを装着しているバイクだともともとの設計よりも、バッテリーを消費するようになります。
たまにしか乗らない人だと、いざ乗ろうと思ったらエンジンがかからないとか、セルモーターの動きが弱くなる、という事がよくあります。
バッテリーの電圧をチェックするなど、ふだんから気をつけておくことです。
油温をモニタリングすることで、必要に応じてエンジンオイルの銘柄を変えたり、適切な粘度に調整することができる。
油温計の種類とえらび方
大きく分けると、デジタルとアナログがあります。
空冷のカワサキ車でよく見るアナログタイプ。
アナログタイプの良いところは、オイルキャップと取り替えるだけで使用できることだと思います。デメリットは、「走行中に油温を確認することができない」という点です。
それもあって、私はデジタルメーターを選びました。
よく見かけるのはヨシムラのデジタルテンプメーターですが、デイトナAQUAPROVA(アクアプローバ)HGを選択。
いくつか種類があって、「油温計」「電圧計」「時計」が見られるモデルにしました。
スマホホルダーを使わない筆者にとって、3つあるのはとても便利でした。とくに電圧計は、常時バッテリーの状態を確認する事ができるため、充電や交換のタイミングが把握できます。
デイトナ AQUAPROVAを使用する場合、下記の部品と合わせて取り付けます。
(ドレンボルトの部分です)
CB125Tの適合サイズはM12×P1.5です。
ほかのデジタル油温計はどうかわかりませんが、本製品は、ドレンボルト(オイルパン)で油温を計測しています。
そのため、シリンダーなど高温になる部分の油温よりも、低く表示されます。ですのでメーター表示の油温に+5℃ぐらい足したものが、実際の油温だと考えればいいと思います。
ちなみにメーターは防水です。
中型・大型バイクは、ヨシムラの装着率が高い気がします。ヨシムラ製も、オイルセンサーは別売りです。
デジタルメーター取り付け
おおまかに以下のとおり。
1,エンジンオイルを抜く
2,ガソリンタンクを取り外す
3,ヘッドライト内部、バッテリーに配線をつなぐ
4,新しいエンジンオイルを入れる
装着後のテスト走行 ウソ?本当?
率直な感想としては、筆者の想像と、実際の油温にはかなり差がありました。
同時に、よくある都市伝説についても検証する事ができました。
渋滞で油温が高くなったら、低回転で走ればいい
結果はウソ。
真夏に「40km/hぐらいの速度で、低回転で走れば油温が下がる」というネット情報を試しましたが、まったく下がりませんでした。
油温が100℃を超えると、大事なのは「走行風」です。
いくらエンジンの回転数をおさえても、ノロノロ運転で、エンジンに走行風が当たらなければ油温は下がりません。
逆にいうと、真夏の高速道路を数十キロ以上、10,000rpm以上(100km/h)で連続走行しても、油温は90-95℃ぐらいで安定していました。十分な走行風が当たっているからです。
ところが高速を降りて、市街地の渋滞にハマると、一気に油温が上昇します。
またあるときは信号待ちで、風が強くて冷たい場合、停車中に3℃下がったことがありました。
このように気候や気温、自分自身の乗り方、交通状態や、走行シーンによって油温は変化しているんですね。
意識しながら走っていると、だんだん「どのように走るべきなのか」、自然とエンジンをいたわる乗り方が、身につくと筆者は実感しています。
一度身につくと、頭の中でエンジンの状態がイメージできるようになるため、(程度の差はあっても)空冷・水冷、2スト・4ストを問わず、工夫して走れるようになると思います。
筆者がよかったなと思うのは、空冷2ストに乗っているとき。水温計・油温計が存在しないため、とくに夏場は焼き付きが心配になる。
しかし、走り方とエンジンの温度変化がイメージできるようになると、「長い信号待ちのあとのスタート時は、急激に回さないほうがいいな」とか「ちょっと冷却重視で走ろう」とか、自分でコントロールできるようになったことは大きい。
油温計の隠れた活用法
最後に旧車(キャブ車)あるあるですが、なんらかの理由でエンジンに不調が発生した場合、油温がわかったほうが、原因が突き止めやすくなります。
たとえば「へんな音がする」とか、「アイドリングが不安定になる」といった症状があったとしても、エンジンが冷えている時なのか? エンジンが完全に暖まった状態なのか?
(あるいはその中間なのか?)
ずっとなのか、たまに発生するのか、特定の条件で発生しているのか・・・
状況によって、判断結果の精度が変わってきます。
ようするにボンヤリとした情報だと、バイクショップに尋ねても、ボンヤリした答えが返ってきます。
当然の話ですね。ショップさんはエスパーじゃないので。
たとえばですが、
・車種
・型式
・走行距離
・改造の有無
・いつ・どういうシチュエーションで
・油温(あるいは水温)がどのくらいで
・アクセル開度がどれくらいで
・どういう症状が出るのか
くわしい情報があると、より的確に判断しやすくなります。
トラブルシューティングや、キャブレターのセッティングにおいても、油温計はかなり役に立ってくれます。