「愛車のエンジンをできるだけ良好に保ちたい」
そう思うのは筆者も同じ。
フラッシングオイル、オイル添加剤にとどまらず、ガソリン添加剤、カーボンクリーン、エンジンオーバーホールなど、さまざまなテスト結果と検証をおこなってきた筆者の経験談をシェアします。
賛否両論のフラッシングオイル
「フラッシングオイル」とは、エンジンの汚れを取るための洗油です。
果たして、その効果はあるのか? ただの都市伝説なのか?実際にテストしました。
否定的な意見として、
「フラッシングオイルに含まれる有機溶剤がエンジン内のシールを痛めるのでよくない」
「フラッシングといっても、水でゴシゴシ洗うのとちがって、大して汚れは落ちないので無意味」
といった意見が散見されます。
従来のフラッシングオイルの中には、塩素系の成分が含まれていたり、固形モリブデンが含まれている製品があります。これらの成分が金属やシールなどのゴム製部品にダメージを与る、と言われています。
そのため、フラッシングオイルに対して否定的な意見が多いようです。
テストしたフラッシングオイル
私が使っているスーパーゾイルの「フラッシングゾイル」は、従来型フラッシングオイルの問題点をクリアした、フラッシングゾイルです。
以下、メーカーの商品説明です。
フラッシングの革命。
フラッシングゾイルは、2輪車、4輪車のエンジン内部洗浄のために開発した、まったく新しいフラッシング専用オイルです。
従来のフラッシングオイルは、有機溶剤系成分および洗浄成分により、スラッジ、汚れ等を、溶かしたり剥がしたりして落とす物でした。
これでは有効な成分までも落としてしまう可能性があり、エンジンの調子を逆に悪くしてしまうことがあるのです。
また相溶性がないため、落とした汚れがエンジン下部に残ってオイルフィルターを詰まらせることもあり、
その結果、2度洗いをしなければならないものまであるのが現状です。
フラッシングゾイルは、これらの問題を全て解決した、まさに「フラッシングの革命」ともいうべき商品です。
高度に精製されたナフテン系およびパラフィン系ベースオイルを巧みに組み合わせ、さらにスーパーゾイル成分などを配合したこのフラッシングゾイルは、エンジン内の有効な成分を損なうことなく、余分なスラッジだけを包み込んで排出します。株式会社パパコーポレーション公式サイトより引用
また、エンジン内に残っても安心な成分のみで構成されており、もちろん2度洗いする必要もありません。
まとめると、
フラッシングゾイルの特徴
・有機溶剤、塩素系、固形モリブデン等、エンジンにダメージを与える成分が入っておらず、残留してもエンジン内部に悪影響がない
(スーパーゾイル成分が入ってるため、抜けきれないフラッシングオイルがエンジン内に残っても問題なし)
・クラッチが滑る成分が入っていないので、バイクにも安心して使用できる
・2度洗いする必要がない
という事です。
(私も何十回と使用しています)
最初にフラッシングゾイルを使ったのは、CB125Tを購入した2013年7月。2回目は、2017年1月28日、ボアアップしたCB150Tに使用しました。
従来のフラッシングオイルと、「フラッシングゾイル」の違い
従来のフラッシングオイルの場合、スラッジだけでなく有効な成分も一緒に落とすことがありました。また、金属表面自体の変化はありません。株式会社パパコーポレーション公式サイトより引用
フラッシングゾイルが余分なスラッジだけを包み込んで排出します。さらに、スーパーゾイル成分の働きで、金属表面を改質し滑らかな状態につくりかえます。
フラッシングゾイルの効果
中古で買ったCB125Tはフラッシングゾイル使用後、明らかにシフトフィーリングが良くなりました。
それまでに何度もエンジンオイルを交換したからわかるのですが、オイル交換だけでは通常、ここまで改善しません。
やはりオイルフィルターが無い車両という事も影響して、エンジン内にスラッジがたまっていたのか、ギアチェンジがスムーズになりました。
多くの場合、「これがフラッシングオイルの効果だ」と感じ取ることはむずかしいと思います。
フラッシングオイルを使うときは当然、エンジンオイルを交換するわけですからね。
変化のちがいが「エンジンオイルの交換によるもの」なのか、「フラッシングオイルの効果」なのかを、明確に切り分けることは困難です。
筆者の場合、ギアの入り具合が悪い時(エンジンオイルの交換だけでは改善が見られない場合)とか、エンジンオイルのテストをする際、残留しているエンジンオイルを抜く目的でフラッシングゾイルを使っています。
過剰な期待はせずに使う、という感じです。
エンジン内部とオイルの動作
おおまかな仕組みと、エンジンオイル潤滑不良でよくある事例を紹介します。
一番下のオイルパンにエンジンオイルが溜まっていて、オイルポンプ(人間で例えると心臓)で、エンジンオイルを吸い上げて、潤滑させています。
人間の血液は、じぶんで意識せずともきれいにしてくれますが、エンジンオイルは徐々に劣化する一方なので、交換が必要なわけです。
オイルフィルターを取り外した状態
オイルフィルターがあるバイクは、フィルターがオイル内の異物を取り除いてくれます。そのおかげで、エンジンオイルの経路が、傷つかないようにしています。
(筆者CB125Tや、カブなどフィルターが存在しないバイクもあります)
定期的に交換しないと、フィルターが目詰まりし、正常にオイルが潤滑できなくなります。
オイルパン内部のフィルター
オイルフィルターがあっても、エンジン内のガスケットや、エンジン内部の異物が付着していることがあります。オイルパンのフィルターが目詰まりしても、やはり潤滑不良=エンジン破損につながります。
取り外したオイルパンと、オイルパン内部のフィルター
定期的にエンジンオイルを交換していない車両の場合、固形化したエンジンオイルのカスがたまっていることがあります。
オイルパンに金属片が紛れ込んでいることも、エンジンオーバーホールの現場ではよくあります。
相性の悪いオイル添加剤を使用したのか、ゲル化したオイルで、オイルパンが完全に目詰まりしていためずらしいケースもあります。
(クランクシャフト焼き付きでエンジン修理となりました)
フラッシングゾイルの使い方
エンジンオイル全容量の3分の2以上を使用します。
CB125Tの場合、エンジンオイルの全容量1600ml(オイル交換時1400ml)ですから、540ml以上を使用すれば十分という事になります。
必ず使用されるバイクのエンジンオイル全容量を確認してください
フラッシングゾイルは、灯油代わりに、ドライブチェーンの清掃やフロントフォークの洗油としても活用できます。
くわしい使用手順は以下の通りです。
ステップ1:古いオイルを抜く
軽く暖機運転した後、ドレンボルトを外してエンジンオイルを抜きます。
ステップ2:フラッシングゾイルを入れる
ドレンボルトを締め、フラッシングゾイルをエンジンオイル全容量の3分の2以上入れます。
この時、入れるのはフラッシングゾイルだけ。エンジンオイルはまだ入れません。
ステップ3:15分〜20分間待つ
フラッシングゾイルを入れたら、すぐにエンジンを始動してアイドリングしたまま15分〜20分待ちます。
※メーカー公式サイトや商品の説明書きには「5分〜15分」と書いてありますが、バイクは15分から20分がいいそうです(メーカーさんに直接、教えて頂きました)
待っている間、ギアチェンジをすると隅々までフラッシングゾイルが行き届きます。
(私は1速から5速までずっとギアチェンジしていました)
もっと良いのは、負荷をかけずに数km〜10km程度、走行すること。これが最も効果的なようです。ただ、場所を選びますね。小排気量バイクだと、ほぼ平坦な立地じゃないとむずかしいです。
ステップ4:フラッシングゾイルを抜く
アイドリング(または走行)が終わったら、エンジン内のフラッシングゾイルを抜きます。
メーカーによると、フラッシングゾイルは多少、エンジン内に残っても悪影響はないとの話なので、その点は安心ですね。
フラッシングゾイルをエンジン内に入れっぱなしで放置しない事。フラッシング後は、すみやかにオイルを抜きましょう。(あせって火傷しないように)
左が抜いたエンジンオイルで、右側がフラッシング後のフラッシングゾイル(もとは無色透明)
「抜いたフラッシングゾイルが汚れているのは、フラッシングの効果だ」
と考えるのは早計です。
エンジンの中に残っている古いオイルと、フラッシングゾイルが混ざれば、無色透明なフラッシングゾイルに色が付くのは当然だからです。
エンジンオイルが使用とともに汚れていくのは、エンジン内の汚れをオイルに取り込んでいるため。
オイルが黒っぽくなるのは、燃焼で発生したカーボンを取り込むから。ですので、「オイルの色が黒くなるほど劣化している」というのは誤解です。
https://inuiyasutaka.net/bikeblog/engineoil/
ステップ5:新しいエンジンオイルを入れる
エンジンオイルを入れる前に、オイルフィルターのあるバイクは、フィルター交換しましょう。
オイルフィルターが目詰まりすると、最悪の場合エンジンオイルがうまく循環できず、潤滑不良となり、エンジン焼き付きなど、トラブルを誘発することになります。
使用したエンジンオイル
ベリティ「FS HR Ver.3 10W-40 MA」
FS HR Ver.3 10W-40は鈴鹿8耐でも使用され、とくに耐熱性能に優れるエンジンオイルです。
今回はオイル添加剤スーパーゾイルを入れます。
フラッシングオイルのデメリット
「フラッシングゾイル」ではなく、フラッシングオイルそのものの話。
知人の方が、車に某社のフラッシングオイルを使ったところ、エンジン内部の汚れがあまりに酷かったのか、オイルフィルターが目詰まりしてしまい、エンジンが壊れてしまったそうです。
使用したフラッシングオイルは「フラッシングゾイル」ではなかったようですが、こうしたリスクもあるという事です。
できればエンジンを開けてオーバーホールするのが間違いないですが、そこまで手が出せない場合、こうしたリスクがあることを承知した上で、フラッシングオイルを使うかどうか判断したほうが良さそうです。
エンジンオイルにも「清浄分散」という機能があります。
ふだんバイクに乗っていて、とくに大きな不具合がなかったり、良いエンジンオイルを使っていて、定期交換しているのでしたら、フラッシングオイルを使わなくてもいいと思います。
中古車や、しばらく動いていない不動車を動かす場合、オイルパンが汚れている場合があるため、使ってみるのも手ですね。
エンジンオイルを交換していなかったため、汚れていたCBR1000RRのオイルパン。
フラッシングゾイルはこんな方にお勧め
スーパーゾイル フラッシング専用オイル
・しばらく乗っていないバイク
・中古で買ったバイク
・オイルフィルターが無いバイク
・ギアの入りが悪いバイク(機械的なトラブルが原因の場合を除く)
・オイルの銘柄を換える時(※注)
エンジン内部以外にも、ドライブチェーンの洗浄や、分解したエンジンパーツの洗浄に使えます。
※注意
いわゆるエステル系オイルの「エステル」という成分は不安定で変質しやすいと言われています。
ひとくちにエステルといっても、様々な種類が存在するため、基本的に異なる銘柄のエンジンオイルを混ぜないほうが無難です。
筆者は異なるメーカーのエンジンオイルをテストする際、フラッシングゾイルを使っています。
私はこうした廃油パックを使用しています。
ダンボールや新聞紙がある場合、それらを活用してもいいと思います。とにかく、自宅の排水溝や、外の側溝などにオイルを捨てるのだけは止めましょう。