「メーカーの広告に掲載されているビフォー・アフターの写真みたいにエンジンが綺麗になるのか?」
私自身が疑問を感じて2年11ヶ月間、バイクで3万km以上の実走行テストをおこなって検証しました。
そこからさらに4年かけてテストした結果をシェアします。
(プロ立ち会いの下、エンジンを開けて中身を自分の目で確認しました)
テスト条件
テストした車両

HONDA CB125T(のちに142cc化)
空冷OHC2バルブ並列二気筒
キャブセッティングが狂っているとか、検証に影響する大きな不具合がない状態でテスト。
使用したガソリン添加剤5種
・タービュランス GA-01、GA-02
・ワコーズ フューエル1
・ニューテック NC-220
・SUPER ZOIL フュエルチューナー
・PEAエンジンコンディショナー
他社のガソリン添加剤が混ざらないように配慮してテストをおこなっています。
ガソリン添加剤 比較テスト
「メーカーが広告宣伝しているほどの効果は?」
ないと思います。これが証拠です。
1回目 中古で購入したCB125Tに使用

ガソリン添加剤をテストしたり、カーボンクリーンを施工した後のピストン、バルブ。

カーボンがカチコチに固まっています。
エンジンオーバーホールまでの経緯
メーター走行距離
購入時:19,500km
28,300km:ガソリン添加剤を使用開始
30,411km:A社のカーボンクリーンを施工
34,916km:B社のカーボンクリーンを施工
37,526km:エンジンオーバーホール
カーボンクリーンとは、「エンジン内部に直接、専用の洗浄液を注入して、エンジン内部を清浄する」と言われる手法です。
一般的に費用と手間がかかる分、ガソリン添加剤よりもカーボンクリーンの方が効果は大きいとされています。
にもかかわず、ご覧のとおりカーボンは固着したまま。
ワイヤーブラシで磨いても取れないぐらいにしっかり固まっていました。
エンジンをオーバーホールした経験がある方ならわかると思いますが、カーボンって本当に、ちょっとやそっとじゃ取れません。
油汚れみたいなイメージがあるかもしれませんが、セメントとか、海のフジツボみたいに固いです。
念のために申し上げると、今回テストを行ったバイクに不調はなく、カーボンクリーンの施工中・施工直後はガソリン添加剤を使用していません。
走行距離とエンジン内部の汚れ
以下、分解したエンジンの様子です。
いちがいに「走行距離が伸びているから、エンジンも汚れている」とは言い切れないのですが、資料の一つとして掲載します。
※ガソリン添加剤を使用したことがあるかどうかは不明

CB750Fは平均的なカーボンの付着ぐあい、CBR1000RRはカーボン多めです。


走行距離、排気量のわりにカーボンが溜まっていたMC22。

バルブとバルブシートの間に、カーボンが噛んでいました。

このようにほかの車種を見ると、エンジン内のカーボンがどのくらい付着しているかが、お分かりいただけるかと思います。いずれもカーボンが固着していて、ちょっとやそっとで取り除けない状態です。
(パーツクリーナーや灯油などを使って、金ブラシでこすっても簡単には落ちない)

インジェクション車 22,500km
CBR250R MC41最終モデルのピストンと、シリンダーヘッド。


走行距離と、インジェクション車であることを考慮すると、カーボン多めです。

4スト ジャイロのバルブ。
上下とも、別々のエンジンです。走行距離や、使用環境が異なるため単純比較はできませんが、上のインテークバルブには大量のカーボンが付着していました。
新品のエンジンにガソリン添加剤を使用したら?
CBTを125ccから142cc化して、シリンダーやピストンが新品になったのを機に
新品のエンジン(腰上)にガソリン添加剤を使用し続けたら一体、どうなる?
検証することにしました。
「エンジン内部の汚れを抑制する」
広告宣伝のとおりなら、前回ほどカーボンが固着しないはずです。
テスト条件は1回目と同じ。ただしカーボンクリーンは行っていません。
2回目の検証結果
ガソリン添加剤を継続的に使用して、30,000km走行したCB125Tエンジンをオーバーホールしました。
メーター走行距離 66,724km
分解したエンジン

ピストンクラウンは、最初に取り外した純正ピストンと比較して、カーボン蓄積は少なめ。
ただ、これがガソリン添加剤の効果なのか、良質なエンジンオイルの恩恵か、乗り方なのかは、なんとも言えません。

エンジンが焼き付いたCB125T(筆者のCBTとは別)の純正ピストン。ガソリン添加剤の使用歴は不明ですが、1.9万kmでこれだけのカーボンが付くという例です。
話を戻して、筆者CB125Tのシリンダーヘッドを見てみましょう。



燃焼室やピストンはともかく、シリンダーヘッド(カムシャフト側)の汚れが顕著です。
1,080基以上のエンジンオーバーホールを手がけてきたバイクショップのオーナーにも
「ここまで汚れているのは見たことがない」
と言われてしまいました。
私自身、ほかのバイクのエンジンを70基以上(執筆時点)見ていますが、今のところ自分のエンジンがトップクラスで汚いです。
定期的なオイル交換を怠っていたり、使用しているオイルが粗悪であれば、このようにエンジン内部が汚れているケースはめずらしくありません。
ですが、1回目の検証と同じく、良質なオイルを3000km毎に交換しています。
エンジンオイルが原因とはちょっと考えにくいです。
あまりエンジンを回さずに乗っているとカーボンが溜まりますが、筆者は低回転で走るどころか、渋滞以外は最低6000rpm以上で走っています。
極端にキャブセッティングが濃い、ということもないです。
汚れが少ないエンジンの共通点
定期的にオイル交換をしているエンジンです。
新車で購入して8万km、10万km以上、エンジンオーバーホール無しのバイクに乗っている方に話を聞くと、
「定期的なオイル交換と、無茶な乗り方をしない」
ごく当たり前のことを実践しているとおっしゃっていました。
そういった意味で、ガソリン添加剤を使用したり、カーボンクリーンを行うより、きちんとエンジンオイルを交換しているほうが結果的として、エンジンには良いと言えます。
オーバーホールしているエンジンをいくつも観察して、そう思うようになりました。
その後、その仮説を裏付けるような論文を発見しました。
燃料 VS エンジンオイル
~カーボンがたまる決定要因~
ある日本の科学者の方々が2ストエンジンで実験したところ、燃料(レギュラー or ハイオク=オクタン値)の差よりも、使用するエンジンオイルによって顕著な差があったそうです。(研究結果)
つまり、
ハイオクを使うとかガソリンを使うとか、燃料にフォーカスするより、良質なエンジンオイルを使用して、定期交換したほうが良い
という事だと思います。
エンジンオイル交換のみをおこなった場合
3回目
「ガソリン添加剤を使わず、エンジンオイル交換のみをおこなった場合、どうなるのか?」を検証。
・・・皮肉な結果になりました。
ガソリン添加剤を使用した時より、エンジン内部がきれいでした。
(上記の論文を見つける前に検証をおこないました)
カーボン除去だけでエンジンオーバーホールの効果ある?
少し本題から外れますが、シェアします。
CB125T2回目のエンジンオーバーホールは、クランクシール交換が目的。
そのためガスケット以外の部品交換はせず、カーボン除去もそこそこで組みました。


この頃は、エンジン洗浄の効果的なやり方を確立する前。自分のエンジンなので、かなり大ざっぱにカーボンを落とした程度で終わらせています。(写真は洗浄後)


ごらんのとおり、エンジン内のカーボンをざっと取り除いて、組んだだけの状態です。
果たして、カーボン除去の効果はあるのでしょうか?
これは意外なほど、はっきりと効果が体感できました。
たとえるなら、マフラーのカーボンを除去した時と、同じようなフィーリング。
マフラー内にカーボンがたまってくるとエンジンは回るものの、トルク感が乏しくなります。
マフラーのカーボンを除去するとアクセルを開けた時、エンジンの回転とともに、力強い加速(トルク感)が感じられるようになります。
グイグイ加速していくのが、はっきりと体感できます。
で、カーボンを除去しただけのエンジンオーバーホールも、マフラーのカーボン除去とフィーリングはほぼ、同じ。思わぬ発見でした。
小排気量バイクだと、パワーがないぶん、なおさら体感しやすいと思います。
追記:250cc単気筒で同じく、エンジンを分解してカーボン除去を体験された方がいますが、「まるで別のエンジンみたいだ」と仰っていました。
検証結果まとめ
「ガソリン添加剤は、メーカーが宣伝するほど劇的な効果は期待できない」」
という印象です。
運転して、フィーリング的な違いは一部の添加剤でありましたが、「これはすごいカーボンが落ちた!」という製品はないからです。
(夢のない記事で申し訳ないですが)
メーカーさんには、どんな条件下で使用すれば広告みたいに劇的にキレイになるのか、詳しいテスト条件を公表して頂きたいです。
各社、「洗浄力」や「こんなに綺麗になりました」といったPRをしますが
・物理的にどういう作用でそうなるのか?
・落ちた汚れはどこに行くのか? オイルに吸収されるのか、マフラーから排出されるのか?
・汚れがマフラー内に蓄積しないのか? しないならその理由は?
・・・etc.
科学的な説明はほぼ、出てこないです。
実際に試してみて正直、サーキットでも走らないと無理じゃないかと思うぐらい、現実離れしているように思います。
もし、ガチガチに固まったカーボンが剥がれ落ちてしまうほど強力な溶剤であれば、「カーボンは取れたけど、潤滑不良でエンジンにダメージが!」という事になりかねないですからね。
ガソリン添加剤は効果なし?
フォローするわけではありませんが、ガソリン添加剤の効果がゼロとは言いません。
ただ、広告宣伝が言い過ぎなんじゃないかと思うだけです。
「カーボン付着を抑制する」とか、「取り除く」ではなく、「カーボンの付着を抑止するかもしれない」と表現した方が的確でしょう。
ちなみに「添加剤を入れてすぐ変化を感じた」というレビューをよく目にします。
あれは、エンジン内部がキレイになったからではなく、燃焼の変化だと思います。
インジェクションの場合は知りませんが、キャブ車の場合、レギュラーガソリン車にハイオクを入れると、濃くなる傾向があります。
そういった意味で、キャブ車のレギュラーガソリン車にハイオクを入れて走れば「いつもと違う」のは当たり前。
ただ、一時的な乗り味の変化と、エンジンの中が綺麗になっているかどうかは別ということです。
筆者のようにガソリン添加剤を使用後、エンジンを分解して効果を検証した人って、どれぐらいいるのでしょう?
エンジン洗浄目的外での使用
「エンジン内部をキレイにする」ことに執着しなければ、ガソリン添加剤を使うのもありだと思います。
燃費向上や、ドライビングフィーリングを楽しむとかですね。
たとえば、タービュランスのGA-02は摩擦低減剤が入っているので、4ストバイクなのにエンジンブレーキの効きが弱くなって、走りがとても楽しかったです。
正確には覚えていないけど、燃費も+5km/Lぐらい良くなりました。

もし、たまにしかバイクや車に乗らないのであれば、定番のワコーズのフューエルワンがお勧めです。
ガソリンの劣化を防いだり、ガソリンタンク内のサビ防止効果があります。

燃料は劣化する
レギュラーガソリンは約3ヶ月、ハイオクは約6ヶ月が使用の目安。それ以上経過すると、だんだんガソリンが腐った状態に変質するのでご注意を。
不動車のレストアや、キャブレターのオーバーホール現場をいくつも見ていますが、ガソリンが入ったままバイクを放置していると後々、かなりの整備(というか修理)費用がかかります。
インジェクション車の場合、最悪ガソリンタンク内の電磁ポンプ交換になります。
ガソリン添加剤を入れすぎたらどうなる?
気になっている人が多いみたいなので、書いておきます。
筆者は、うっかり規定量の10倍のガソリン添加剤を入れてしまった事があります。
どうなったか?
しばらく気がつかずに走りましたが、どうもなりませんでした。
「ちょっと濃い(空気とガソリンの混合気に対して、ガソリンが多い症状)かな?」
とは思いましたが、すぐ走行不能になるとか、そういう事はありませんでした。
インジェクションだと、ECUがどのように反応するのかわからないですが、キャブ車の場合、入れすぎの状態のまま、長距離を走行しなければ大丈夫だと思います。
(少なくとも私はそうでした)
万が一、ガソリン添加剤を入れすぎたら、ガソリンを足せば薄まります。
規定量の10倍は多すぎますが、ほんの少し規定量を超えたからといって、すぐ故障するものではないのでそんなに心配しなくていいと思います。
ただ「ちょっと規定量より多めに入れてみよう」というのは止めた方がいいですね。たくさん入れれば、効果がUPするわけじゃないですから。
メーカーの説明書にある規定量を守りましょう。
ガソリン添加剤を使うべきか否か?
おすすめしませんが、経験という意味では、一度くらい試すのはいいかもしれません。
ただ、リスク(不確実性)があるという事を理解した上で、判断したほうがいいでしょうね。
筆者がリスキーだと感じるのは、バルブシートにカーボンが噛むことです。

4ストエンジンの生命線といえるバルブと、バルブシートの密着。
人間でたとえると呼吸器官です。
オレンジ色の塗料は光明丹(こうみょうたん)といい、バルブとバルブシートの当たり(密着度合い)をチェックするのに使用します。
写真はオレンジ色の線がところどころ途切れていたり、ムラがあります(黄色の矢印)
その部分がきちんと密着していないということです。
もし、ガソリン添加剤によって剥がれたカーボンがバルブシートに挟まると、密閉できなくなります。
つまり、エンジン不調を招くことになりかねません。
カーボンクリーンほどではないにせよ、ガソリン添加剤の使用はリスクゼロではないという事を理解しておく必要があります。
現在、筆者が「ガソリン添加剤を使用するか?」と聞かれたら、ほとんどの場合、NOと答えます。
ガソリン添加剤に使う予算をエンジンオイルに回したほうが、得られるリターンが大きいからです。
例外
リッターバイクなど、あまり高回転までエンジンを回せないバイク、小排気量でも高回転までエンジンを回さない乗り方をする場合、エンジンやマフラー内にカーボンが溜まりやすくなります。
そういった場合、一時的(短期的)に使用するのはアリだと思います。
ただ、混合気のガソリンと空気に対して、ガソリンが多い場合や、点火系統の不良により、濃くなっている場合(いわゆるプラグが被っている状態)で使用すると、より濃くなるため、症状が悪化する可能性があります。
たとえばアクセルを開けた際に加速しなかったり、エンジンやマフラーにカーボンがたまりやすくなります。
燃費は良くなる?
燃費目的でガソリン添加剤を使っていないので、なんともむずかしい質問です。
GA-02みたいに、向上する製品もあるかもしれませんが、気候や周囲の環境、運転操作の影響が大きいですからね。
燃費に関していえば
・燃調が合っているかどうか(空気とガソリンの比率)
・タイヤの溝があるか、空気圧がきちんと入っているか(多くの人が見落としがち)
・ブレーキの引きずり(ベテランライダーでも気づかない人が多い)
ほかには乗り方、アクセルワークに気を使うほうが優先度が高く、効果的だと思います。
あとは検証結果のとおり、使用するエンジンオイルですね。
もし、ガソリン添加剤の使用目的が「燃費向上」であれば、定期的なエンジンオイル交換や、オイル自体を変えてみるとか、エンジンオイル添加剤の使用をお勧めします。
下記の記事でくわしく解説しています。